フィードバックの重要性

11月頃から読み始めていたトラウマに関する本を、ようやく読み終わりました。「身体はトラウマを記録する」。厚い本ではあったのですが、何より内容が濃く、自分の中に落とし込みながら読むのに時間を要しました。

トラウマに関する本なのですが、心と体のつながりや、それが癒えていく過程を丁寧に描いているような本でもありました。

トラウマは生命や生活に重大な影響を及ぼす出来事から、恐怖や、不安、恥といったような感情が適切に処理されず、神経系のレベルで学習され、反復されている状態だと、恐らく言えると思います。

しかし、この状態はトラウマに限らず強迫性障害や、例えば対人不安などにも見られます。あるいは軽微な心的外傷体験が背景にあるのだとも言えるのかもしれません。

しかしながら、この事はさらに突き詰めて考えると、トラウマケアに用いられる手法は、トラウマが主訴でない、また背景にトラウマティックな体験があるかわからない、そんなクライエントさんにも役立つのではないかと思うのです。

読んでいての印象としては、おそらく「フィードバック」が重要なのだと推測されます。本の中で紹介された技法としては、ニューロフィードバックや、ヨガ、EMDR、また演劇的手法などは挙げられていました。

これらに共通するものとしては、EMDRはちょっと独特ですが、身体感覚に焦点を当て、それをあるがままに感受し、振り回されないようになる、と言うことが推測されます。

例えば共感的応答。これは、感情や身体的な様子をフィードバックする作業ともいえます。また、転移感情といったものも、解消されていない感情体験を、他者に映しだし疑似体験することで、その体験を完了させることに意味があるように感じられます。

ゲシュタルト療法で用いられる、エンプティチェアーなどもそうです。自分の中の1部や、イメージで他者を椅子に座らせ、そこでのやりとりを行う中で、それとのやりとりやフィードバック対話を行う。

そうしたことを考えると、さらに言えば、カウンセラーが適切なフィードバックをクライエントに伝える作業、それがカウンセリングの要素として極めて重要なのではないかと想像することができます。少なくとも、様々な知見との矛盾は少ない。

もともと私自身、何か1つの理論を教義的に学ぶと言うことが苦手です。それよりも、本質的に何に意味があるのか、何がカウンセリングを効果たらしめているのか、そうしたことに関心があります。

それを考える上で、このトラウマに関する本は、とても刺激的で示唆に富んだ内容でした。


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