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エピソード② 出会いを通じて『飢えや渇きを満たしてくれそうだから決めた』B君の場合

熱く語る人事担当者の言葉が心に刺さった!


ある企業の会社説明会での話だ。それまでいろいろな会社説明会に参加していたが、ここでも育成方針を話してくれた。

「若い人は『怒ると辞める』と思っていたので、厳しい指導は避けていました。今にして思えば、失礼な話ですが、普段から腫れ物に触るような接し方をしていたのです」

(どうして失礼な話なのだろう??)

多くの学生が自分と同じ疑問を感じたに違いない。そんな僕たちをよそに人事担当者は話を続けた。

「でも退職率は下がらず、毎年辞めていく新入社員が一定数いました。弊社は数年前まで、人を育てられない企業だったのです。これはブラック企業化への第一歩だと思いました」

(そりゃ、そうだ。悪気が無くても、結果的に労働者が使い捨ての駒になっているようなものだ)

「そこで5年前から思い切って方針転換しました。厳しいながらもやりがいを感じるような指導にしたのです。多少嫌がられても上司や先輩は部下と共有する時間を増やすようにしました。契約を取ってきたら少々わざとらしくても良いから、皆で拍手してお礼を言うようにしたのです」

(上司や先輩たちと長時間一緒にいるのは嫌だなぁ。しかも皆で喝采を贈るってウザくない?)

僕はいちいち揚げ足を取るように心の中でつぶやいていた。そしてそう思いながら僕は周囲をチラ見した。他の学生はどう思っているのか気になったためだ。でも皆の表情からは読み取れなかった。。。

「そしてサクセスストーリーを本人の口から報告させるようにしました」

(『サクセスストーリー』!なんか良い響きだな)

僕の心はちょっと肯定的な反応をした。

「実は育成方針を変えようした時、私は経営陣や幹部の『若い頃を思い出すこと』をテーマにした会議に参加させられたのです」

(二言目には、『今どきの若者は・・・』とか言うオッサン達にそのテーマは厳しいのでは??)

 僕の心を見透かしたように人事担当者は以下の話を続けた。

「皆さんのお父様よりも年配であろうオジさん達は言いました。『褒められたかった』、『見ていてほしかった』、『一緒に喜んでほしかった』と口々に似たようなことを言うのです!」

(あ、それは当たってる。テストでハイスコア出したら気持ちよく褒めてほしいモンな)

「いつの間にか自分の目線でしか人を計れなくなっていたことに気づいたオジさんたちは自分達の若い頃に視点を合わせて新入社員と向き合うよう努め始めたのです」

 この話を聞いて、僕は自分の両親や祖父母との確執を思い出して唇を噛んだ。

(僕の周りの大人はいつも子供を見下していたよなぁ。自分で自分の進路を決めたくても否定から入る大人ばかりで・・・。自分達の期待ばかり押し付けて、それに応えられない進路になると罵倒したり侮辱したり嘲笑ったり・・・、下品な大人ばっかりだった)

僕は高校受験の時も大学受験の時も両親や祖父母と大モメに揉めた。彼らの期待する学校に進学できなかったためだ。そして今もまた就職活動で同じように自分の考えている進路を否定されている。だから自分の未来を自分で決めるためには、僕は家族と縁を切ることから始めなくてはならないとさえ思っている。

そんな僕にとって、この企業の育成方針は徐々に心に響いてきた。

「契約締結した時の成功体験を話す若者の目には輝きがありました。その光には若者の未来がそのまま表れていると思いました。若者は熱くなりたがっていたのかもしれません。それを理解せず、勝手に根性なしと決めつけて、腫れ物に触るような接し方をしていたことを恥ずかしく思いました」

(いい会社じゃん!)

「そして賃金やボーナスで正当に評価するようにしました。すると、やがて退職者が出なくなったのです。その結果、毎年の採用人数を少なくできるようになりました」

だんだんと興奮気味になってきた人事担当者は、

「今、弊社の若者はみんな口をそろえて言います。『ここで働いていると渇きに潤いを与えられます!』と」

そう言った人事担当者は二列目に座っている僕の目を見て訊いてきた。

「あなたもサクセスストーリーを語りたくないですか?」

この問いに僕は思わず「語りたいです!」と大きな声を上げてしまった。迷いはなかった。

周囲の視線が僕に集まった。でも、不思議と気にならなかった。

家族との確執ゆえに、僕は人よりも承認欲求が強かったかもしれない。そんな僕にとって、全く興味のない業界だったのに、渇いた心を満たしてくれるのは「ここだ!」と即決させるものがこの会社にはあったんだ。

キャリアコンサルタントより


人が求める環境には必ず輝きと熱さ、そして潤いがある!

今回のエピソードは出会いを通じて、『飢えや渇きを満たしてくれそうだから決めた』ケースです。

若いうちにやりたいことを見つけるのは誰だって難しいものです。多くの人は社会人になってから見つけたり、または『これにしよう』と決めてしまいがちです。 そのため、実際には『やりたいことよりも先に満たしてくれる環境に身を置こう』と考える人も多くいます。

そして、その環境で『どんな活躍をしたいか?(Will/Wish)』を考えて、その実現のために『何をすべきか?(Must)』と考えていきます。その上で初めて、できること(Can)へと手を付けていくのではないでしょうか。

できることが増えていくにつれて、やりたいことも増えていき、やがてキャリアビジョンが明確になります。そのうえでさらにその環境で高みを目指すか、または環境を変えてキャリアアップを目指すかに分かれてきます。

 そのため、就活の最中にやりたいことを見つけられなくても、自分の胸に響くものを与えてくれた環境から選ぶこともアリだと思います。

<全体目次>


はじめに(語ります・・・)
【第1章】職業選択・出会いによって進路を決めたケース

◇就職活動は足を使うことが大切!

合同企業説明会等のイベントには欠かさず出席し、多くの人事の方や企業の方々の話を聞いた。1社でも多くの企業と『出会う』ことが大事。運命の出会いはきっとある!
エピソード① 会社の『教育方針』に感銘を受けて入社を決めたA君の場合
エピソード② 出会いを通じて『飢えや渇きを満たしてくれそうだから決めた』B君の場合

◇行き詰った時には視点を変えてみよう

今、見ているものより多くのものが見たいと思ったら、より高いところに上がらなくてはならない。もう一段上がれば視野を拡げ、選択肢を増やすことができる。それが成長である。

★エピソード③ 視点を変えることで居場所をみつけることができたCさんの場合

大切なのは早く決めることではなく、決めた何かを信じること

企業研究にも会社説明会へも気持ちは消極的だった。周囲に言われて仕方なく赴いた先に怠け者の自分を変える不思議な発見があった。

★エピソード④ 就職活動で仕事への考え方が全く変わったD君の場合

◇出会いの先に希望を見つけることがある

自分の中で何が重要かを考えれば、『早く決めよう』などという雑な気持ちにならない。『これからしっかり歩める道であるか?』、『頑張れる環境であるか?』を見定めること。

★エピソード⑤ 自分が何をしたいかを明確にしたおかげで、会社との出会いに希望をみつけたEさんの場合

◇『働くこととは何か?』と向き合った

社会人になると生活の大部分が仕事になる。そのため、収入を得るための手段として仕事を選ぶのか?または人生の目標となるような仕事を選ぶのか?自分は後者だった。

★エピソード⑥ アルバイトで出会った先輩の存在が就活のゴールを決めたFさんの場合