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エピソード④ 就職活動で仕事への考え方が全く変わったD君の場合

大切なのは早く決めることではなく、決めた何かを信じること

ものぐさで努力とか根気とは無縁なボクの就活体験

ボクは子供の頃からものぐさなガキだった。何をするにも、とにかく面倒に感じる性分だった。当然ながら努力とか根気とは無縁だ。

『俺は少ない努力で多くを得る奴だ』などと言って、自分を高く見積もっていたが、平たく言うと横着者だった。

大学は自分の適性に合わせて理系の工学部を選んだ。『適性』とは不思議なものだ。『性格』とは似て非なるものらしい。横着者なので勉強では暗記が多く占める文系科目は不得手だ。時間をかけて何度も反復して覚えるのが嫌だったのだ。それよりも思考中心で、なおかつ答えを出せる理系科目の方が自分には楽だった。

思い返せば、ボクはいつも『楽』か『苦』で物事を決める傾向が強かった。

そんな流れでなんとなく大学に入学したのだが、相変わらず全然ヤル気が出ない。怠惰な学生生活を送りながら、早くも3年生になってしまっていた。就職活動が始まる。これもいつものように『楽』か『苦』で決めていった。

進路は初めから理系の仕事は除外。好きなことも見つからないし、研究とか面倒だし、そこまで仕事に没頭する気がない。そもそも根気がない!

人付き合いも億劫だったため、接客や営業もムリ。

消去法と仕事環境でで決めたデスクワーク

こんな調子で、まずは消去法で一つひとつ消していったら、最後にはデスクワークしか残らなかった。そう考えて、大学3年生になってから、自分にしては珍しく半年だけ勉強した時期があった。それが簿記だ。理系のくせに簿記である。これもデスクワークに就くためだ。とりあえず簿記2級まで合格しておいた。

消去法以外でもデスクワークを選んだ理由があった。空調の効いた室内で座って仕事ができるからだ。雨の日も猛暑の日も極寒の日も外に出るとか絶対嫌だ。特に嫌いな営業のためなんてありえない!

だから座りながら手の届く範囲で仕事の全てに対応できるのは事務しかないと思っていた。事務でも色々あるが、自分はどの企業でも存在意義がハッキリしている経理を選ぼうとした。だから簿記だったのである。

その他の会社選択の条件は、残業なし、年間休日は120日以上が絶対、有給取得率が高いことも優先度は高い。

そして面倒だったのだが、一応は事務職を経験しておいた方が良いと思い、仕方なくある会社のインターンシップに応募した。そこで実際に仕事をしてみると、デスクワークは思った以上に席を立つことが多く、さらに電話も多かった。思っていたのと違い、ハッキリ言って勤まる自信がなくなった。

ボクとしては、できればトイレかコーヒーを淹れる時くらいしか席を立ちたくないのだ。電話は手を伸ばせば済むためある程度許せるが、コピーとか印刷とか何とかならないモンかなぁ??

友人につれていかれた合同企業相談会で意外な発見が!

そんなこんなで、自分のデスクワーク一択という就活方針に一抹の不安を覚えていた頃、ボクは友達に無理矢理、合同企業説明会に付き合わされた。ここでも億劫だったが、会場では友達に引っ張られて行きがかり上、やむなくIT系企業の話を聞いた。一度は除外したものの、一応自分が理系だったから、というのが理由で他意はない。

ところが話を聞くと意外な発見があった!

プログラマーもシステムエンジニアも当然ながらデスクワークなのだ!すっかり盲点だった。今更、気づいた自分が恥ずかしくなった。

しかも企業の担当者の話では、プログラマーもシステムエンジニアもデスクワークで集中型の業務なので電話や会議も多くはないと言う。

集中力にはイマイチ自信はないが、座りっぱなしというのは良い。これはなんだか魅力的!

職場見学からアルバイトへ進む仕事理解

職場見学を勧められたので後日訪問したところ、なんとなく企業の雰囲気とは相性が良さそうに感じた。そこで試しに1ヶ月バイトしてみることにした。

バイトでの仕事はあまり面白いものではなかったが、プログラマーやシステムエンジニアの人たちの仕事は楽しそうに思えた。

『よその芝生は良く見える』だけかもしれないと考えて、定時以降に、残業しているプログラマーやシステムエンジニアに付き合って仕事を教えてもらった。面倒くさがりの自分にとっては意外な行動だ。

彼らは僕のことを邪魔にしたり邪険にすることがなく、むしろ気持ちよく色々な知識や技術を教えてくれた。「自分が愛している仕事に興味を持ってくれることが凄く嬉しい」と言って。

予想もしない展開だったが、僕にとって定時以降の時間がそのまま「自己理解」や「仕事理解」の時間になった。そして「これならイケる!」と思うまでにそう時間はかからなかった。

この会社に応募しようと決意、社長面談へ

そこで、ボクはこの会社へ応募しようと思い、人事担当者を捕まえて応募手順を教えてくれとお願いした。するとボクはそのまま別室に連れられて、人事担当者から業務内容と雇用条件の説明を受けた。

一通りの説明すると、人事担当者は、

「きみが応募するなら、このまま社長面談の日程を決めたい」と言った。

当然問題ないのですぐにお願いした。ここでの即決は持ち前のものぐさが良い意味で発揮されている。正規の応募手順を踏むのが面倒だったからだ。

社長のスケジュールを確認しに行き、戻ってきた人事担当者は候補日を3つ提示した。僕は一番すぐの候補日を希望した。言うまでもなく、さっさと済ませたいためだ。

楽観的かもしれないが、自分の面倒くさがりという性格も場面によっては悪いことばかりではないようだ。面倒くさいから即断即決できる、まさにこの時の自分だ。

そしてまだ5月だったが、あっさり内定の言質を得た。周囲の誰よりも早い内定獲得だった。やはり僕は出来る奴なのかもしれない(笑)!

自分で不思議だったのは「この仕事、アリかも」と思えたら、他のこともすっかり考えが変わってしまったことである。このことは就活を通して得た最も大きな収穫だった。

ハッキリ言って、ボクにとって内定獲得が早いかどうかなんて問題ではなかった。それよりも夢中になれる何かとの出会いがそれまでの価値観を丸ごと変えてしまうことの方が衝撃的だった。

実際、この頃にはボクは休みとか残業とか別に気にしなくなっていた。

むしろ、こう考えていた。

若いうちにしっかり経験を積んで、確かなスキルを身に付けよう!

ついでに社会人になったら初めて貯金というものにも挑戦してみよう!

夢中になれる仕事でお金も得られるなんてサイコーじゃん!!

就職活動を通じて面倒くさがりが前向きな考えに変わった。ボクにとって就職活動は人生を変える貴重なものだった。

キャリアコンサルタントより

 本エピソードは呆れるほど怠け者だった人物が夢中になれるものを見つけて変わった(成長した)ということ自体が衝撃的でした。

本人は「生き方を変える出会いとは人との出会いだけではない」と言ってましたが、やはり根幹の部分では生き方を変えるのは、人との出会いの積み重ねだったように思います。というのは、出会いによって選択肢から排除していた業界を見直し、バイト先でプログラマーやシステムエンジニアから仕事の面白さを教わったからです。

かなり面倒くさがっていましたが、自らの足を使って確認するという工程は省いていなかったのです。

本人が言いたいのは、人と仕事の両方に良縁があったということなのでしょう。
また、面白いことに簿記の勉強は活かす機会はなくなったようですが、価値観の変化とともに些末なことと割り切れたようです。

<全体目次>


はじめに(語ります・・・)
【第1章】職業選択・出会いによって進路を決めたケース

◇就職活動は足を使うことが大切!

合同企業説明会等のイベントには欠かさず出席し、多くの人事の方や企業の方々の話を聞いた。1社でも多くの企業と『出会う』ことが大事。運命の出会いはきっとある!
エピソード① 会社の『教育方針』に感銘を受けて入社を決めたA君の場合
エピソード② 出会いを通じて『飢えや渇きを満たしてくれそうだから決めた』B君の場合

◇行き詰った時には視点を変えてみよう

今、見ているものより多くのものが見たいと思ったら、より高いところに上がらなくてはならない。もう一段上がれば視野を拡げ、選択肢を増やすことができる。それが成長である。

★エピソード③ 視点を変えることで居場所をみつけることができたCさんの場合

大切なのは早く決めることではなく、決めた何かを信じること

企業研究にも会社説明会へも気持ちは消極的だった。周囲に言われて仕方なく赴いた先に怠け者の自分を変える不思議な発見があった。

★エピソード④ 就職活動で仕事への考え方が全く変わったD君の場合

◇出会いの先に希望を見つけることがある

自分の中で何が重要かを考えれば、『早く決めよう』などという雑な気持ちにならない。『これからしっかり歩める道であるか?』、『頑張れる環境であるか?』を見定めること。

★エピソード⑤ 自分が何をしたいかを明確にしたおかげで、会社との出会いに希望をみつけたEさんの場合

◇『働くこととは何か?』と向き合った

社会人になると生活の大部分が仕事になる。そのため、収入を得るための手段として仕事を選ぶのか?または人生の目標となるような仕事を選ぶのか?自分は後者だった。

★エピソード⑥ アルバイトで出会った先輩の存在が就活のゴールを決めたFさんの場合