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エピソード⑥ アルバイトで出会った先輩の存在が就活のゴールを決めたFさんの場合

バイト先の先輩からの一言が自分がやりたいことを教えてくれた

パラリーガルの先輩との出会い

1日24時間のうち、3分の1を占める8時間が仕事。通勤時間や休憩時間、さらに残業時間を含めれば拘束時間は4~5時間は軽くプラスされる。さらに睡眠時間も考慮すると、1日で起きている時間の大部分を仕事が占めている。

別に『収入を得るための手段として仕事を選ぶ』ことが悪いわけではないし、間違っているわけでもない。ただ、1日の大部分の時間が仕事だというなら、やりがいを感じることを仕事に選ぶ方が人生レベルで考えれば有意義なように思う。

大学3年生の夏にバイト先の社員からそのように言われた言葉が忘れられなかった。

ゼミの教授の勧めもあり、夏休みの短期だが、法律事務所で働いたことがある。国内ではそこそこ大きな弁護士法人で、上記の話をしてくれたのはその事務所のパラリーガルである。

パラリーガルとは簡単に言うと弁護士のアシスタントである。秘書的な役割を果たす者もいるが、その多くは弁護士に代わって法律業務に付随する書類作成(主に契約書の作成)・翻訳・文献調査・資料収集・資料分析などに従事することが多い。

そのパラリーガルは大学時代から法学部に在籍し、弁護士を志していた。国際的な仕事に携わりたいと考えたとき、上昇志向の強い彼女は英語も勉強してTOEICも950点以上のハイスコアを叩きだし、2年間語学留学もしたらしい。

弁護士を目指す人は司法試験に合格しなくてはならないが、その前に司法試験の受験資格を得なくてはならない。その方法は二通りある。

一つはロースクール(法科大学院)を修了して受験資格を得る方法。この方が一般的である。もう一つは司法試験の予備試験を受験する方法。仕事と勉強の両立は思っている以上に厳しく、この方法で受験資格を獲得できるのは受験者の2~3%と言われている。

仕事をしながら司法試験の予備試験を受験する選択をした彼女

しかし彼女は後者を選んだ。理由は社会人として実務経験を積んで弁護士になりたいと考えたためだ。上昇志向の強い彼女らしいストイックで自分に厳しい考え方だった。

彼女の事務所での仕事は主に書類全般の作成とその和訳・英訳であった。他にもパラリーガルはいたが、事務所内で彼女の能力とヤル気は抜きん出ており、弁護士たちは大抵彼女に仕事を頼んでいた。そのため、仕事量は膨大で彼女一人にかかる負荷も群を抜いていた。彼女としては一人で抱える仕事量を減らし、十分な勉強時間を確保したかったに違いない。しかし彼女は文句一つ言わなかった。

一度、そのことについて訊いたことがあった。その時、彼女は笑ってこう答えた。

「『働くこととは何か?』って考えた時、私は『好きなことを特技として、やりがいをもって人の役に立つこと』と考えたの。私は法学も語学も好きなの。だから今の環境や状況を辛いと思わない。だって今の経験って絶対に私の将来にプラスになるもの」

 私は初めて人に対して『尊敬』と『憧憬』いう想いを抱いた。率直に「カッコイイ!」と思った。そして彼女が必ず弁護士になることを確信した。

 翌年、私は7月にこの弁護士法人からパラリーガルとして内定を貰った。

私は弁護士を目指す気はないが、彼女の受け売りではなく自分自身の経験から、いつか同じ答えに辿り着きたいと思う。そして彼女が司法修習を終えてこの法人に戻ってきたら言いたい。

「今、やりがいを感じることを仕事に選んで、とっても有意義な毎日です!」と。

これからの人生に満足を得られるための選択を!

キャリアコンサルタントより

 出会いによって進路を決めた典型的なエピソードと言えるでしょう。

 人への『尊敬』や『憧憬』というのは考えている以上に人を強くします。そしてその思いはそのまま『理想』や『志』に変化することが多いです。ただ出会うことを重ねるのではなく、出会いの中から何かを得ることが大切です。出会いもまた『量より質』ということなのでしょう。

 また、よく「失うものがないから強い」とか「守るものがあるから強い」という言葉を耳にします。もちろんそれらが間違っているとは思いません。しかし、筆者は「目指すものがある」というのが最も強さを発揮すると思っています。

そのため本エピソードの学生はきっと誰よりも早く自分の目指すところに手が届くと信じています。そしていつか彼女を目指す後輩が現れると思います。

そう思わずにいられないほど、目に輝きをもって上記エピソードを話してくれました。

<全体目次>


はじめに(語ります・・・)
【第1章】職業選択・出会いによって進路を決めたケース

◇就職活動は足を使うことが大切!

合同企業説明会等のイベントには欠かさず出席し、多くの人事の方や企業の方々の話を聞いた。1社でも多くの企業と『出会う』ことが大事。運命の出会いはきっとある!
エピソード① 会社の『教育方針』に感銘を受けて入社を決めたA君の場合
エピソード② 出会いを通じて『飢えや渇きを満たしてくれそうだから決めた』B君の場合

◇行き詰った時には視点を変えてみよう

今、見ているものより多くのものが見たいと思ったら、より高いところに上がらなくてはならない。もう一段上がれば視野を拡げ、選択肢を増やすことができる。それが成長である。

★エピソード③ 視点を変えることで居場所をみつけることができたCさんの場合

大切なのは早く決めることではなく、決めた何かを信じること

企業研究にも会社説明会へも気持ちは消極的だった。周囲に言われて仕方なく赴いた先に怠け者の自分を変える不思議な発見があった。

★エピソード④ 就職活動で仕事への考え方が全く変わったD君の場合

◇出会いの先に希望を見つけることがある

自分の中で何が重要かを考えれば、『早く決めよう』などという雑な気持ちにならない。『これからしっかり歩める道であるか?』、『頑張れる環境であるか?』を見定めること。

★エピソード⑤ 自分が何をしたいかを明確にしたおかげで、会社との出会いに希望をみつけたEさんの場合

◇『働くこととは何か?』と向き合った

社会人になると生活の大部分が仕事になる。そのため、収入を得るための手段として仕事を選ぶのか?または人生の目標となるような仕事を選ぶのか?自分は後者だった。

★エピソード⑥ アルバイトで出会った先輩の存在が就活のゴールを決めたFさんの場合