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エピソード⑤ 自分が何をしたいかを明確にしたおかげで、会社との出会いに希望をみつけたEさんの場合

頑張っていると、不思議と誰かが見ていてくれるもの

自分の人生なんだ!だから周囲が内定を獲得したと沸いていても焦ることはない!

『自分の人生なんだ!だから周囲が内定を獲得したと沸いていても焦ることはない。自分は自分なのだから!』とわたしは何度も自分に言い聞かせてきた。でも、やっぱり焦りと不安は無くならない。人間、誰しもそんなに強くはない。

この時期になると、なかなか内定を得られない焦りから方向転換する人が多い。それも良いと思う。よく考えずに進めていた方針なら見直しも必要だし、むしろ見直しの時期なのかもしれない。

でも、じっくり時間をかけて定めた自分自身の方針と意向の中には『希望』がある。未来の希望を簡単に捨てて良いのか?と悩んでしまう。

ふつう人は事が上手く進んでいるときは迷わない。自信があるから。そして、つまずいた時に初めて自分を疑い、そこで立ち止まって冷静に状況判断する。もし、自身のつまずきが気のせい、または取るに足らないことならそのまま進めば良い。勢いも大事。一方で、見直しが必要なら修正を加えて進めば良い。そういうもの。

では、今はどうだろう?

保育士になりたい一心で、大学の専攻はそれを中心に履修していた。ところが、このあいだ、保育士の実習を終えてきたのだが、どうもしっくりこない。

不思議なもので、一度疑問を感じ始めるとどんどん悪い方へと考えるようになってしまった。こうなるとテンションはダダ下がりで何をやっても上手くいかない。

いろいろ悩んで、自問自答もした。

Q、「自分の子供の頃からの夢はその程度だったの?」
A、「いや、子供の頃の夢なんて変わるのが普通だし」
Q、「『しっくりこない』ことなんてこれからもたくさんあるよ」
A、「そんなレベルじゃなくて、失望と幻滅が強すぎるんだよ!」
Q、「こんなことで気持ちを変えてしまう奴なんて、これから何をやっても物にならないよ」
A、「人には向き不向きがあるんだよっ!これから向いた何かを見つければ良いだけ!!」
Q、「もう6月だよ。これから方向転換てキツくない?」
A、「このまま保育士になった方がキツイよ!」
などなど・・・

では、実際のところはどうだったのだろう?

ずっと心に引っかかっていた実習先の保育士の言葉

周囲の状況に冷静さを欠き、自分自身の気持ちが揺れているだけかもしれない。
たまたま実習した先が失望する現場ということだけで、もちろん、あれが保育士の全てではない。ではわたしは何がそんなに気になっているのだろう?

実はわたしにはずっと心に引っかかっている言葉があった。それは実習先の私よりちょっと上の保育士の言葉だった。そしてその言葉が保育士に疑問を持った原因になった。

「お姉さん先生(私のこと)、ここに入社してよ。そうしたら私、辞められるから」

いろいろ意味がとれる言葉だった。わたしが入社したら辞める?わたし嫌われてるの?一瞬焦ったがもちろんわずかな実習期間にそんなはずはない。そうすると、本当に仕事を辞めたいと思っていることになる。自分が夢見ていた世界でこんな悲鳴が上がっているんだ。正直いってこの言葉はショックだった。

この先輩保育士も元々は憧れの保育士で活躍することを夢見ていたはずだ。でもそんな彼女が1年もしたらいろいろあったのだろう、今では仕事にたいする嫌悪感でいっぱいになってしまったみたいだ。

「ストレスの一つ一つは実は大したことじゃないのかもしれないね。でも、それが時間をかけてたくさん積み重なってしまうと、もう解体できないような大きな負の塊になってしまったの。もう、わたしには自分が何が嫌なのかわからなくなって、『全部ひっくるめて嫌!』になったの」

こう、彼女の口から心の声が発せられた時、私は立ち止まってよく検討する必要を感じた。

0には何を掛けても0だわ!

結局、私は方向転換することにした。保育士がダメというのではなく、私の理知の小さな視界がダメだと思ったからだ。何だかんだで今まで何も考えてこなかったことが問題だと気づいたから。

こう考えたのには訳があった。それはやはり周囲の友人たちが次々に内定を獲得している様を見て、みんな成長しているように思えた。わたしが実習中にみんなは頑張って目標を達成していた。なんだか自分が置いて行かれているように感じた。このまま保育士になって社会に出ても、その差は埋まっていないような気がした。

そう思うと焦り、そして嫉妬していた。嫉妬するのではなく努力することが大事なのに、こんな簡単な事さえ分からなくなっていた。

だから当初も自分に欠けているものが何なのかわからずにもがいていた。しかし欠けているというよりも将来設計と真剣に向き合ってこなかった自分の『空っぽ』さが浮き彫りになっただけだった。そりゃ、0には何を掛けても0だわ!。

思考だけで状況が変わるのなら誰も悩んだり苦しんだりしない。わたしは冷静になって考え、一度全てをリセットするつもりで就職活動を開始した。遅まきながら各企業ごとに行われる会社説明会や一度に多くの企業が集う合同企業説明会に積極的に参加した。

この頃のわたしは何も知らない焦りも手伝ってか、多くの色々な企業を知りたいと思うようになっていた。

一生懸命頑張っていたら評価してくれる企業が・・・

また、自己理解に取り組む時間はないと思い、職業理解を深めながら自分が魅かれる何かを見つけようと必死だった。イベントに行けば必ずメモを取り、必ず質問するようにした。必ず相手の目を見て話し、必ず最後に「ありがとうございました」と言った。

するとそんな一生懸命なわたしを評価してくれる企業があった。

合同企業説明会でのこと。ある企業での質疑応答を終えて、次にどの企業の話を聞こうかと考えていた時、隣の企業の担当者から声を掛けられた。

その人物は出版会社の取締役で、他社の人事担当者と向き合っている時の私に興味を持ったと言う。真剣な眼差しで質問し、メモを取って礼を言う。そんなわたしの姿に取材や営業で活躍してくれそうだと感じたらしい。

これも縁だと思い、話を聞いてその場で会社訪問の日時を決めた。会社訪問ではその取締役自らが職場内を案内してくれて、その流れで役員面接に移行した。

正直、この勢いには面を喰らったけど、悪い気がしていなかったわたしはダメ元で面接に臨んだ。昔から図太い性格だったため本番には強かった。また、ダメ元と思っていたことが功を奏し、伸び伸びと話ができた。さらに良かったのが、役員の方々のほとんどがおじいちゃんだったため、わたしのことを孫娘のように可愛がってくれるような接し方だった。

もの凄く気持ちの良い面接だった!(超笑顔でピース)

結局、ここに決めた。ただし、決めたのは決して焦りからではない。就活が面倒になったわけでもない。遠くから眺めながら、私の長所を評価してくれたことが嬉しかったのだ。こんな出会いがこの先何度もあるとは思えなかった。だからわたしは自分を評価してくれる人とのご縁を大事にしたいと思ったのである。

そういえば、いつか誰かが言っていた。

「頑張っていると、不思議と誰かが見ていてくれるもの」

結局、運や縁は努力する者に味方する!

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キャリアコンサルタントより

彼女はこの話を私にしながら、『焦燥感から行動力、そして好奇心が発揮された』と言いました。本来なら焦りは冷静さを欠き、やることなすこと裏目に出て、物事が好転することは少ない。

ところが、彼女は『自分が魅かれる何かを見つけること』とテーマを決めて、その1点にのみ集中しました。その結果、思わぬ副産物が生じて、それが良縁へと繋がったのでした。

現実的にはこうしたケースは決して珍しいわけではないので、今回のエピソードは一つの教示を与えてくれたと思います。

それは『何をするか』を明確にすれば逆転のチャンスが生じるということです。

ただ焦るだけでは何もかもが雑になり迷走が続きます。しかし、自分の行動に意味を持たせればチャンスを引き寄せることができるのです。そのことを彼女は証明し、自信をもって社会人になったのです。

<全体目次>


はじめに(語ります・・・)
【第1章】職業選択・出会いによって進路を決めたケース

◇就職活動は足を使うことが大切!

合同企業説明会等のイベントには欠かさず出席し、多くの人事の方や企業の方々の話を聞いた。1社でも多くの企業と『出会う』ことが大事。運命の出会いはきっとある!
エピソード① 会社の『教育方針』に感銘を受けて入社を決めたA君の場合
エピソード② 出会いを通じて『飢えや渇きを満たしてくれそうだから決めた』B君の場合

◇行き詰った時には視点を変えてみよう

今、見ているものより多くのものが見たいと思ったら、より高いところに上がらなくてはならない。もう一段上がれば視野を拡げ、選択肢を増やすことができる。それが成長である。

★エピソード③ 視点を変えることで居場所をみつけることができたCさんの場合

大切なのは早く決めることではなく、決めた何かを信じること

企業研究にも会社説明会へも気持ちは消極的だった。周囲に言われて仕方なく赴いた先に怠け者の自分を変える不思議な発見があった。

★エピソード④ 就職活動で仕事への考え方が全く変わったD君の場合

◇出会いの先に希望を見つけることがある

自分の中で何が重要かを考えれば、『早く決めよう』などという雑な気持ちにならない。『これからしっかり歩める道であるか?』、『頑張れる環境であるか?』を見定めること。

★エピソード⑤ 自分が何をしたいかを明確にしたおかげで、会社との出会いに希望をみつけたEさんの場合

◇『働くこととは何か?』と向き合った

社会人になると生活の大部分が仕事になる。そのため、収入を得るための手段として仕事を選ぶのか?または人生の目標となるような仕事を選ぶのか?自分は後者だった。

★エピソード⑥ アルバイトで出会った先輩の存在が就活のゴールを決めたFさんの場合