Yehoy

30代 関西在住 男 読書会記録など、Twitterで書くには少し長めの記事を載せてい…

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30代 関西在住 男 読書会記録など、Twitterで書くには少し長めの記事を載せていこうと思います。 世界史、社会保障、労働規範、データ利用、ディストピアSFなどに関心があります。

最近の記事

【映画鑑賞感想】劇場版 名探偵コナン 100万ドルの五稜郭(みちしるべ)

平和、伊織の答え合わせまず振り返っておきたいのは、我々が昨年作品の次回予告(つまり今作予告)において、平和と怪盗キッドがフィーチャーされる要因を以下のように分析していたことです。 上記の分析をおさらいしつつ答え合わせをすると、まず「平和のカップリング安定」については、福城聖(CV:松岡禎丞)という当て馬として手頃なゲストキャラが配置されることで、平次の焦燥が加速し告白に至る展開が企図されるようにも見えましたが、一方で紅葉+伊織はヘリにより北海道各地を駆け巡り(という程でもな

    • 【レビュー】シナぷしゅマンスリーソング

      妻の友人から勧められた「シナぷしゅ」は、テレ東が制作する「民放初の幼児向け番組」であり、「もいもい」や「ヒカリの森シリーズ」を始め、「ビリビリ」「パン工場」「踏切カンカン」「がっしゃん」「もっとみたーい」など知育系のコンテンツを取りそろえているが、わけても人気があるのは当然ながら歌であり、とりわけ毎月変わる「つきうた」(マンスリーソング)は制作陣も気合いを入れているのが伝わり、我が家も楽しみにしている。 2020年度1. あいうえーお!のうた(2020年4月) 創造神(松

      • 年末エントリ 23-24

        左耳で紅白歌合戦、右耳で明日の弁当が作られる包丁のリズムを聞きながらここ1~2年を振り返ることとする。改めて自分のnoteのタイトルを見返してみると「啓蟄」(長子出生)以来、現代思想の通読感想を書いたり、ハヤカワのアンソロジーをレビューしたりとそれなりに細々と書いていたのが、今年になって圧倒的に減速している。育児に可処分時間を消費しているというのは言い訳で、読書・執筆以外のコンテンツに傾斜していたというのが実態だったろう。 麻雀(22年1月)いきなり雀魂から説き起こすことに

        • AIとSF

          準備がいつまで経っても終わらない件 長谷敏司2025年大阪万博のために用意した”最先端”の技術が、開催前の時点で既に陳腐化し家電製品に実装されてしまった経産官僚とアドバイザーの学識経験者のドタバタを描く。官僚の業務や動きや考え方に対する解像度が気になるが発表タイミングに適ったタイムリーな話題ではあった。 没友 高山羽根子お留守番BOTが進化を続け、友人とのLINEを勝手に行って関係性をメンテナンスしてくれる時代、制約の多い旅をふたりで行う。旅をリードしてくれるその友だちは謎

        【映画鑑賞感想】劇場版 名探偵コナン 100万ドルの五稜郭(みちしるべ)

        マガジン

        • 読書感想文置き場
          17本
        • 【完結】健康的で清潔で道徳的な秩序ある社会の不自由さについて
          22本
        • 【完結】ブルシット・ジョブ読書会
          33本
        • 【完結】市民のためのスカイウォーク(CSW)
          12本

        記事

          【映画鑑賞感想】劇場版 名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)

          パシフィック・ブイ・世界中の監視カメラの接続という「夢のある」話からスタートします。民間カメラではなく警察カメラだけが対象なので、一定の抑制は働くとはいえ、EU議会が導入に積極的という設定からは思わず「おまえGDPR知ってんのか?」という気持ちになります。アメリカ発のテック企業のデータ独占による専横に、ヨーロッパが法制整備により対抗しているという構図をあえて逆転させて、なぜかヨーロッパが監視国家に積極的になっている。アルジェント議員、どんなけG社にカネ積まれたんだ? ・という

          【映画鑑賞感想】劇場版 名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)

          【読書感想】リベラルファンタジーは神話学へと進化する。『百島王国物語』2

          気候が春めいてきて、旅情がわき上がってきます。最近はあまり遠出ができないので、物語の力を借りて遠い地への憧れを満たしてみようとファンタジーを読むことにしました。 『百島王国物語 竜騎手の反逆』 佐藤二葉前作『滅びの王と魔術歌使い』について前作を読んだときの興奮を思わず長文noteにしたためたものの、読んでから1年半経過していることもあり、細かい設定はすっかり忘れていました。前作を座右に起きながら、本作を読むために必要な設定を振り返ってみると、 ①本作の主人公ラヴァンドルは、

          【読書感想】リベラルファンタジーは神話学へと進化する。『百島王国物語』2

          【読書感想】恋を知らない僕たちは

          しろくまさんからそんなメールを受け取ったのは、妻と息子が散歩に出て、ココアでも淹れようかと一息ついた晩秋の昼下がりのことだった。 もちろん、『思い、思われ、ふり、ふられ』は大好きである。私はいずれ『咲坂伊緒という天才漫画家』というタイトルで大枚の記事を書きたいと思っているのだが、日々の忙しさにかまけ、あふれ出る思いに向き合うだけの時間が取れないことを言い訳にして先送りにしている。 咲坂作品の魅力を数えればキリがないが、その最大のものは「丁寧な心理描写」にあると言えるだろう。

          【読書感想】恋を知らない僕たちは

          【読書感想】ウクライナから問う(現代思想2022.6臨時増刊号)

          【声】1.ブチャの後で / ユーリィ・アンドルホヴィチ/加藤有子訳 現代ウクライナを代表する作家による「声」ということで、訳者解題では「強い」言葉が使われているとしているが、別にそうは思わず、故国に虐殺という不条理がもたらされていること、それはブチャというただ一つの都市ではなく、国のあらゆる場所で起こっていることだと怒りをあげるために必要充分な筆致が尽くされていると感じる。 【ドキュメント】2.困難な戦争避難も次には慣れていく――あるウクライナ在住者の記録 / アベル・ポ

          【読書感想】ウクライナから問う(現代思想2022.6臨時増刊号)

          ノート:田村美由紀先生の著作に対する感想

          これまで題材とされた作品の感想と、論考に対する所感を並べておきます。ラインナップ等は以下のHPより。今後、適宜更新していきます。(業績欄がアップデートされるたびに通知されるシステムがほしい。) 外部資金獲得欄に記述があるので、来年か再来年あたりには単著を読めるのではないかと楽しみにしておきます。 汚染された身体と抵抗のディスコース―吉村萬壱『ボラード病』を読む坪井秀人、シュテフィ・リヒター、マルティン・ロート編『世界のなかのポスト3.11―ヨーロッパと日本の対話』, 新曜社

          ノート:田村美由紀先生の著作に対する感想

          【読書感想】大学は誰のものか――国際卓越研究大学・教職員労働問題・就活のリアル…(現代思想2022.10)

          【討議】研究と教育のゆくえを問う / 石原俊+隠岐さや香 国際卓越研究大学支援法の成立による10兆円規模の大学ファンド設置を切り口に、独裁政権が横行する大学ガバナンスに更に外部の横槍が入る予測が示される。また大学政策全体を見ても、帝国大学への傾斜配分や理系偏重、あるいは地方大学の地域貢献分野への特化によって格差の拡大が進むことを懸念する。 経済安全保障の観点からデュアルユース(軍民両用)技術の開発のために大学と手を結ぶことが急がれていることと、大学ランキングを上げることで海

          【読書感想】大学は誰のものか――国際卓越研究大学・教職員労働問題・就活のリアル…(現代思想2022.10)

          パスピエ 浮遊層 PASSEPIED - Floating People 混ざり合う光と影について

          水曜日にアップロードされた新曲を早速聴きました。 全般的にパスピエの曲は押韻・言葉遊びが多いため歌詞そのものは無意味にも思えますが、そこに無理矢理意味を見出すのが儲(信者)の仕草ということで、歌詞の世界観をイメージしてみることにしました。 解釈のポイントとなるのは、サビに入る直前の疾走する"古今東西遠ざかって家"をどのように捉えるか。すなわち、「古今東西のしがらみを象徴する”家”という呪縛から遠ざかる」のか、あるいは「古今東西の外界のしがらみから遠ざかって”家”というシェル

          パスピエ 浮遊層 PASSEPIED - Floating People 混ざり合う光と影について

          【読書感想】ファミリーランド

          近未来SFと家族に関わる問題を掛け合わせたこの連作短編集を知ったのは、『SFプロトタイピング』において、その事例の一つとして紹介されていたのが気になっていたからだった。そこでは本作は、以下のように紹介されている。 端的な短評だが、実際に読了してみると、「ホラー」というよりも「イヤミス」に近いように感じた。また、「価値観は大きく変化していない」というのも少し纏めすぎのきらいはあって、デザイナーズチャイルドの短編は価値観が大きく変容していることで、差別対象となっている「私たち」

          【読書感想】ファミリーランド

          【読書感想】肉食主義を考える(現代思想2022.6)

          受動喫煙にまつわる法改正が燃えさかっていた5年前に、以下のような謎のPPT資料を作成したことがあります。 作成した趣旨は、自分はタバコを吸わないからむしろ積極的に健康増進法の改正を進めて欲しいと思っているけれど、これまで社会的に認められていたタバコがいかにして社会的な差別的取り扱いのカテゴリに含められていくのかのプロセスを見ておかないと、いつか自分の好きなモノがそうしたカテゴリに含められていくのを指をくわえて見ているしか出来なくなりそうだと感じたからです。 具体的に、この

          【読書感想】肉食主義を考える(現代思想2022.6)

          【読書感想】2084年のSF

          『ポストコロナのSF』を読んでハヤカワのインナーサークルに入った気になった読者たちは、訓練されたかのように書店で見かけた第2弾アンソロジーを衝動買いします。超話題作家の逢坂冬馬先生も名を連ねていて興奮は最高潮。早速逢坂先生の作品から読み始めます。おおー、キレイにまとまった。でもちょっと物足りないな。次は『百合SF特集』で存在感を示した斜線堂有紀先生の作品を。おおー、面白い設定。でもちょっと踏み込みが浅いな。 なんかその繰り返しでした。①『1984年』の原典を参照した作品、②

          【読書感想】2084年のSF

          【読書感想】十二国記ひとまとめ

          大学入ったとき、周りの友だちがみんな十二国記読んでたのは嬉しいカルチャーショックだったと懐かしく思い出した。歌舞伎と同じで語り口を楽しむ物語なので、ネタバレとか心配せずに語り合いましょう。私は『魔性の子』以外は一通り読みました。ファンタジーとして淡々と読んだ作品もあれば、国際政治、地方行政や民俗学のテキストとして関心深く読んだ作品もあり。一覧にしてまとめておきます。 月の影 影の海十二国記始まりの物語、少女マンガテイストの強い成長物語。 楽俊ありがとうという感想。 あと身体

          【読書感想】十二国記ひとまとめ

          【読書感想】ポストコロナのSF

          2021年に日本SF作家クラブ・編で刊行された『ポストコロナのSF』を読んだ。末尾に「SF大賞の夜」というコロナ状況で授賞式を中止するかどうするかみたいな20年春のバタバタが楽屋オチで振り返られておりそこまで読めばすっかりSFクラブのインサイダーになったつもりになれます。 ▷黄金の図書/小川哲 『ゲームの王国』『ユートロニカのこちら側』いずれも骨太のテーマながら軽妙な語り口で好きな作家です。 海外渡航が出来なくなって、古書密輸商人が干上がる話。アンソロジーの冒頭に載せられて

          【読書感想】ポストコロナのSF