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【第3話】底辺クリエイターからディズニーのクリエイティブディレクターへの道

底辺クリエイター

私と同期の業務委託は10名いた。男性8名、女性4名だ。

業務委託チームはひとつにまとめられ、チーフディレクターとアシスタントディレクター率いる約30名の傭兵集団だった。

正社員と業務委託の勤務体制は明らかに違い、正社員は労働時間を管理され、我々業務委託は「納期に間に合わせる事」以外は決まりがなかった。

担当作品は「新作テレビアニメ」と「劇場作品」が同時に進行で、新人はアニメ用語で「バンク」という「過去に作ったシーンのアニメーションや演出を生かして、キャラや背景だけを差し替える仕事」がメインだった。

これが簡単そうで意外と難しい。

しかも学校で教わった3DCGソフトでなく「3ds MAX」というソフトだから手探りだ。

業務委託チームには「教える」という文化がなかった。

それどころか、チーフは非常に気分屋で、少しでも気に障ると男女関係なく「死ね発言」「下着で1日中土下座」「灰皿を投げつける」等、日常茶飯事。

正直、彼は狭い世界の「お山の大将」「井の中の蛙」だったと思う。

そんな中、私は運良くチーフと同じ「喫煙者」で「SEGAマニア」だったため非常に気に入られ、仕事も早かった事から「愛弟子」みたいな扱いになった(チーフも喫煙者でSEGAマニアだったのだ)。

私の話は意外に聞いてくれたので、チーフに「新人を平等に扱って欲しい」とお願いし「○○が言うなら」と約束してくれた。

チーフはスタジオのプロデューサーや監督(日本アニメ界の巨匠)などに私を紹介してくれ、仕事もバンクだけでなく「新規カット」「重要カット」を任されてくれる様になった。

いつの間にか「VFXリーダー」という謎の立場も得た。

そんな毎日の中で、とにかく不満だったのは「寝不足」と「自宅に帰れない事」だ。

私が4月に業務委託契約してから、初めて自宅に帰ったのが7月。

なんと「4ヶ月弱」会社に寝泊まりしていたのだ。※着替えは初日に1週間分用意する様に言われていた。

契約から半年すると、残った新人は2人だけに減っていた。

一方で、私の給与は「30万円」に増えていた。

この会社である程度「成功」したのだ。

しかし、このあと「アニメ業界の真の地獄」を体験する事になる。

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