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読書月報

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親の仇のように本を読む。その記録、報告書。実際敵討ちなのである。高校時代鬱で読めやんかった分を取り返すように。一冊の本は自殺の遅延である。
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#読書

2023年6月に読んだ本

2023年6月に読んだ本

1 セリーヌ『夜の果てへの旅(上)(下)』生田耕作訳★★★☆☆

言わずと知れた名作なので読まなければと思っていた。が、正直読むのはキツかった。まず最初の戦争の章でこの戦争の話が二巻も続くなら絶対に完読はできないと思った。戦争の話は続かなかったが、それでもなかなか大変だったのはなぜだろう。でも戦場のシーンもパリのシーンもアフリカの植民地のシーンもアメリカの工業地帯のシーンもフランスの田舎のシーンも

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2023年5月に読んだ本

2023年5月に読んだ本

1 ダンティール・W・モニーズ『ミルク・ブラッド・ヒート』押野素子訳★★★★★

巻頭の表題作、冒頭の一文から尖りすぎている。

「ピンクは女の子の色」。キーラはそう言うと、エイヴァと一緒に手のひらを切りつけ、ミルクがいっぱい入った浅いボウルに血を滴らせる。

最高。少女たちの残酷さ、複雑で面倒な関係、リアルな取引にゾクゾクする。女性は強さと弱さ、精神と身体、アンビバレントな欲望の極を振幅する。彼

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2021年12月に読んだ本

2021年12月に読んだ本

2021年12月に読んだ本
去年の12月に読んだ本です。

1 レイモンド・カーヴァ―『頼むから静かにしてくれⅡ』
新宿紀伊国屋で購入。
初期の短編集。たしかに以前読んだ『大聖堂』より全体的に話がそっけなく、終わり方もぶつ切れ感がある。私もレイモンド・カーヴァ―のように、大掛かりな話よりは日常のしょうもない話をおかしみを交えて語りたい。

2 鳥飼茜『サターンリターン6』
西荻今野書店で購入。

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2021年に読んだ本ベスト10

2021年に読んだ本ベスト10

今年は全165冊、去年は174冊なのでちょいと少ないが、多読をする者の責務として今年も報告を行う。昨年同様ジャンルは問わずのランキングなので小説が多くなった。もったいぶらず一位から。

2021年に読んだ本ランキングベスト10
1位 『最初の悪い男』ミランダ・ジュライ(岸本佐知子訳)

【長編小説】新潮社、2018年、原題 "THE FIRST BAD MAN"

あらすじ(引用)
43歳独身のシ

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2021年11月に読んだ本

2021年11月に読んだ本

2021年11月に読んだ本

1 岸本佐知子編訳『居心地の悪い部屋』
見つけたのはABC(青山ブックセンター)。買ったのもABCだったと思うけど、新宿の紀伊國屋だったかも。
ちょっとよく分からない話が多かった。それは英語と前提条件が分からないから分からないのか、それらが仮に分かっていたとしても分からないのか。いろいろな人の短編が収められている本というのはなかなか全体像が掴みにくいのが常だが、この本

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2021年10月に読んだ本

2021年10月に読んだ本

2021年10月に読んだ本

1 永井玲衣『水中の哲学者たち』
哲学対話のファシリテーターをやっている人のエッセイ集。荻窪・Titleで購入。
誰も傷つかないような、当たり障りのない文章。毒にも薬にもならない。文体や雰囲気などは小学校教師のように感じた。

ある哲学者は、哲学することの根源は「驚異と懐疑と喪失の意識」であると言った。ひとは、びっくりしたりつらいことがあったりすると、「なんで?」と自

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2021年9月に読んだ本

2021年9月に読んだ本

2021年9月に読んだ本
ちょっとバタバタしてて遅れに遅れた。割に少ない。

1 こだま『いまだ、おしまいの地』
こだまさんの3作目。大泉学園前のブックオフで購入。 
異常に読みやすく、面白く読めるのだが、いかんせんゾッとするような生活。おしまいの地でも面白さを見出して生活できるのがすごい。すごいけどやっぱりゾッとする。

2 G・ガルシア=マルケス『百年の孤独』(鼓直訳)
ずっと読んでみたいと思

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2021年8月に読んだ本

2021年8月に読んだ本

2021年8月に読んだ本

1 太宰治『晩年』
太宰、本当に有名どころしか読んだことないので、まず第一作品集から読んでいこうと。吉祥寺・古書防波堤で購入。
読めば読むほどわかる太宰。ただ続けて読むと飲みこまれそうなので、月1冊くらいのペースで読んでいきたい。

2 山田亮太『誕生祭』
明大前・七月堂で購入。

私の生と生殖を操ろうとするすべての人々よ。資源を節約しわれわれの種の可能な限りの引き延ば

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2021年7月に読んだ本

2021年7月に読んだ本

2021年7月に読んだ本
ちょっと今月は冊数多い。

1 パウリーナ・フローレス『恥さらし』
チリ人女性のデビュー短編集。新宿の紀伊國屋でタイトル買い。
チリの小説ははじめて読んだけど面白かった。どの話でも大体父親が失業している。それか離婚していないか、刑務所で服役中である。え、これどういうことなの?という終わり方をする話も結構あるのだが、それもまたよい。ほとんどの話がチリの首都サンティアゴを舞台

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2021年6月に読んだ本

2021年6月に読んだ本

2021年6月に読んだ本

1 ジャレド・ダイアモンド『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』
長い間読みたい本リストに入っていたのだが、角川武蔵野ミュージアム(紅白でYOASOBIが歌ってたデカい本棚があるところ)に行った際に見かけて今度こそ読もうと思いAmazonで購入。
人間の性がいかに他の動物と比べて変わっているかを解説した本。ユーモアのある書きっぷりがよかった。

ヒトの男性は一度に二億個の

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2021年5月に読んだ本

2021年5月に読んだ本

2021年5月に読んだ本

1 東浩紀『存在論的、郵便的 ジャック・デリダについて』
東浩紀の博論。よく引用や参考文献に出てくるので読んだが、難しかった。買ったのはたしか吉祥寺の古書百年。

2 ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』
岸本佐知子の訳書、帯の「ダメ人間たちの優しさや尊厳を笑いとともに描く傑作短編集」というコピーに魅かれて荻窪のTitleで購入。
面白かった。登場人物たちのダメさが切

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2021年4月に読んだ本

2021年4月に読んだ本

2021年4月に読んだ本

1 ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』
新品で買おうと思っていたところ吉祥寺の古書防波堤で見つけたので購入。
主人公は『ダロウェイ夫人』に似ているなという印象。私は正直ヴァ―ジニア・ウルフのよさがあんまり分かっていない。

2 ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』
西荻窪・今野書店で購入。
長編小説。ミランダ・ジュライ、クソ面白い。今年一番かもしれない。自分の箱庭的妄想の世界

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2021年3月に読んだ本

2021年3月に読んだ本

2021年3月に読んだ本

3月は気が触れたのと書いていたのとで少なめですが…。

1 イーユン・リー『黄金の少年、エメラルドの少女』
本作は『千年の祈り』のあとに出た短編集。Amazonで購入。

三人とも、孤独で悲しい人間だ。しかも、互いの悲しみを癒せはしないだろう。でも孤独を包みこむ世界を、丹精こめて作っていくことはできるのだ。

イーユン・リーはやはり短編が面白い。『千年の祈り』を読んだ後

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2021年2月に読んだ本

2021年2月に読んだ本

2021年2月に読んだ本

ちょっといろいろありまして遅くなりましたが、2月に読んだ本です。2月は小説との蜜月でした。ここまで読める月は後にも先にもそうないと思う。

1 キム・ヨチョプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』
SFの短編集。荻窪のTitleで購入。
表紙のイラストのようなかわいらしさのなかに、他者を巡る深く重い問いが横たわっている。デビュー作とは思えない完成度。

2 河野真太郎『

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