黒田夜雨

詩人。『もう死ねない朝が来る』(七月堂、2018年)、『光の吐瀉物、祈りに春を』(七月…

黒田夜雨

詩人。『もう死ねない朝が来る』(七月堂、2018年)、『光の吐瀉物、祈りに春を』(七月堂、2023年)

マガジン

  • 読書月報

    親の仇のように本を読む。その記録、報告書。実際敵討ちなのである。高校時代鬱で読めやんかった分を取り返すように。一冊の本は自殺の遅延である。

  • 中尊寺のほおずき、金剛三昧院の梨のコンポート

    世の中には美味しいものについて書かれた食エッセイがたくさんある。不味いものより美味しいものを食べたいのと同じように、不味いものを不味そうに書いたエッセイより、美味しいものを美味しそうに書いたエッセイを読みたい。それはそうだろう。しかしここでは不味いものを不味そうに書いていく。これは食べ物の悪口エッセイだ。

  • 秀作集

    割りかしよく書けている、読んでほしいnoteです。

最近の記事

2023年10月に読んだ本

あまりに溜めすぎて心の枷になっているので消化していく。 1 キム・チョヨプ『この世界からは出ていくけれど』カン・バンファ、ユン・ジヨン訳★★★★★ キム・チョヨプの第二短編集。第一短編集同様、とてもよかった。今の時代の小説だなと思う。他者と共同体の問題が扱われており、常に弱い立場にあるもの、マイノリティへの目線がある。特に印象的だったのは「ローラ」。自分の生まれ持った身体に違和感を感じている人たちの話で、たとえば彼らは腕が2本あることに違和を感じており、1本の方が自然、な

    • 歳下に歳を取ることをネガティブに思わせる人間はみな老害

      熱が出た。20代前半までほとんど風邪を引くことなんてなかったしあっても熱は出なかったのに、1年半前も熱を出した。コロナ禍に入ってから2回目、就職してから2回目、 たぶん20代で2回目。1日でおさまったけど歳なのかもしれない。 この程度のことで20代の人間に「歳かもしれない」などと言われたら腹が立たないか? 私はイライラする。最近「本当に」多いのだが、20代後半ないし30代になって衰えてきたという話、マジで大嫌いなので金輪際しないでほしい。わかる〜orわかるわ…って言ってほし

      • 無害な善人

        気に障ることを言われまくるときって大抵私も相手にとって気に障ることを言いまくっていて、こういう話をすると大体「分かってるなら何でやめないんだよ」と言われてしまい、私がしたかった話からどんどん逸れていってしまう。 言葉が不得手な人も人が傷つくときはやっぱり言葉を介して傷つくことが圧倒的に多く、そのほとんどが「〜〜って言われた」というこの型に当て込める。そして人が傷ついたときってちゃんと「心が傷ついた音」という効果音が鳴る。ほんとに聞こえる。私も人生で何度か私の言葉が他人の心を刺

        • 上澄み

          旅行、とりわけ東京在住者の国内旅行は、田舎の上澄みを掠め取る消費活動である。地方在住者が彼らの土地に行くだけで喜んでくれるからといって、旅行というものの後ろめたさから逃れられるとは思わない。自分は住みたくない場所、住めない場所に住んでいる人たちがいるからこそ、気まぐれにふらっと訪れ、その土地の美味いものを食べ散らかし、自然は癒されるなどと戯言を吐かして自分はさっさと東京に帰る、などということができるということ。後ろめたくないわけがない。少なくとも上澄みだけを舐めさせてもらって

        2023年10月に読んだ本

        マガジン

        • 読書月報
          36本
        • 中尊寺のほおずき、金剛三昧院の梨のコンポート
          4本
        • 秀作集
          6本

        記事

          恋愛マイノリティは見えない

          好きな歌人が「ヘテロセクシャルであることとフェミニストであることは最終的に両立しないのではないか」ということを言っていて、私も考えたのだけどやはり最終的には両立しないと私も思う。(文脈があったのと、もう少し丁寧に言われていたこと、サブアカウントの呟きであることを鑑みて歌人の名前は出さない。)その両立はもちろんある程度のところまでは行けると思うのだけど、ある程度のところまでしかいけない、そうどうしても感じてしまう。理論的には両立するが現実的に両立しないのか、現実的には両立するが

          恋愛マイノリティは見えない

          信用できない対話と、弱さを守るために必要な強さについて

          私が傷ついていることは一言で言い表すことができないし他人に時間をかけて話を聞いてもらってもおそらく私は上手く話せない、仮にかなり上手く話せたと私が思えたとしても相手は理解できないだろう、はっきり言って意味分かんないと思うと思う。私はもうそもそもこのことについて詳細に話すことを本気で望んでいない。そういう成功する確率の低い対話にもう私はリソースを割けないのだ。話すことで救われようなんて弱っているときにそんなリスクの高いことをしたら誤って死にかねない、私はそれくらい対話を信じてい

          信用できない対話と、弱さを守るために必要な強さについて

          男が本気で嫉妬するのは男だけ

          男が女に才能を認められるのは、女だったら正味本気で嫉妬しなくて済むから、男のそれより簡単に認めることができる。女はまあ男とは別の生き物だからね、尊敬している、嫉妬している、などと平気で口にできる。本気の本気で嫉妬していたら嫉妬しているとはそんなに容易には言えないだろう。 男は歳下の女、若い女、20代の女を褒めそやす。大体ちょっと下心もある。女は男によって持ち上げられる。その女と同世代の男はその女に嫉妬する。自分が認められたい男に自分より先に認められている彼女に嫉妬する。しか

          男が本気で嫉妬するのは男だけ

          本当は最悪ではないさいあくについて

          他人から見たら最悪かもしれないが、私にとっては別に全然最悪じゃないんだけどな。それはもっと最悪なこといっぱいあったとかそういうこともまああるかもしんないけどそういうんではなくて、普通に割と良い思い出なんだが。という思い出を他人に最悪にさせてはいけないなと改めて思う。別に全然最悪ではなかった、何なら一つの救いであると言える向きもあり、だからといってそんなに呪われている感じもなく、軽くさいあく!と笑える程度の話であって、そういう私の本当は油断しているとすぐ他人の言葉によって塗りつ

          本当は最悪ではないさいあくについて

          自己救済と物語

          私は私を救済しなければならないというどうしてもという要請があり、でも今の自分にはそんなの到底無理だから、未来の自分が今の自分を救ってくれるんだ、だからここを生き延びたなら、近い将来私は過去の自分を救いにいかなければならない、という"設定"を自ら自ずと考え出したのがおそらく16歳くらいの頃か。「私を救えるのは私だけ」という命題、というか「他者は誰も私を救ってはくれない」という絶望があり、そこからどうしても理屈では到達できなかった辛くても苦しくてもそれでも「生きる」という選択は必

          自己救済と物語

          alternative

          人生の目標とかって正直特にない。こうなりたいみたいな理想も特にない。賞取りたいとか商業デビューしたいとか売れたいとかそういう気持ちもそんなにない。少なくともそれだけが正解だとは思ってない。そりゃ賞は取れたらいいし、商業デビューもまあしたいっちゃしたいが…それは目的ではないという感じ。売れたくはあまりないかもしれない。 唯一あるとすればいい仕事がしたい、というくらい。いい仕事ってのは、ひとまずいい作品を作るってことかな。ほんとそれくらいで、私は人生に正解を作りたくないというか

          おまえの成長なんて知らない

          いま私がここにこういう形であるということは長年にわたる自己治癒の結果である面が多分にあるわけなのだけど、わかる、わかるよ、「おまえの成長なんて知らない」。昔どうだったとか、知らない。昔と比べたら格段によくなったとか、そうなのかもしれないけど知らない。ただ今ここにある事実として、他人より悪い。 もうこれ何度も書いているからほぼ恨み言だけど、まだ新たに現れてくるのでもう一度書く。定期的に「あなたはASDではない」と言ってくる非有識者がいるんだが、マジで一体何なんだ。今までもたく

          おまえの成長なんて知らない

          ミレーナについて

          ミレーナを挿れた。もう1年半ほど経つ。挿れてどうかという話などを一応書き残しておこうと思う。 そもそもミレーナとは、避妊リング、IUSなどとも呼ばれるもので、子宮内に挿れ込むと5年、生理が軽くなったり避妊効果が得られたりする。詳しいことは自分で調べてほしい。 メリット ・生理が軽くなる 約2割の人は挿れてから1年経つと生理が全く来なくなるらしい。私もほぼ来なくなった。おりものレベルの経血しか出ない。それも最近はほとんど出なくなってきた。最高。生理を気にしなくていい人生って

          ミレーナについて

          もう女の子ではない

          「結局男がいないと生きていけないんだろ」はよく聞くのに「結局女がいないと生きていけないんだろ」はまったく聞かない点から考える男女の非対称性。 「〇〇もやっぱり女の子なんだね」という発言には「結局男がいないと生きていけない女の子なんだな、ほっ」という含意がある。所詮女だ、男より劣った弱い存在だ、と安心したいのだ。そもそもアラサーにもなって「女の子」なんて名指される状況は大抵異常なので、断固拒否していかなければならない。私はもう女の子ではない。一生女の子でいたいなんて全然思って

          もう女の子ではない

          None of your buisiness

          いつもNOという人間にだけ理由が問われるのだよ。しかも奴らは純粋に理由を知りたがっているわけじゃない。 ーRobinson Churches Jr (1891-2005)(アメリカの架空の俳優、アクティビスト) ※半年以上前に書いていた下書きを供養します。かなり胸糞悪いので注意してください。 居酒屋で友人が事実婚不倫の賠償金の話をしていたとき店の店員が「一定期間以上住民票が同じ家にないと請求できません!」とか言って割り込んできたのがキモすぎた。客の話に割り込んで来んな。友

          None of your buisiness

          トルコ・エジプト旅行 エジプト(カイロ)篇

          ・フライト ◎エジプト航空最高!! イスタンブールからカイロへ。30000円強。2時間。ここで乗ったエジプト航空が最高だった。機内食、最高。添乗員さん朗らかで最高。乗客も朗らか。最高。また乗りたい。今度エジプトに行くときはエジプト航空で行きたい。エジプト航空で3食食べたい。 帰りはドーハ乗換のカタール航空。50000円弱。ドーハまで3時間、乗継5時間、羽田まで10時間弱。カタール航空は評判が良いらしく、評判通り、機内食も美味しいしサービスも良い。申し分なさすぎる。 ・ビザ

          トルコ・エジプト旅行 エジプト(カイロ)篇

          トルコ・エジプト旅行 トルコ(イスタンブール)篇

          ・フライト 羽田-イスタンブール片道5万円弱だった。北京で乗継1回。北京まで4時間弱、乗継5時間半、イスタンブールまで11時間。中国南方航空は可もなく不可もなく。 ・空港からイスタンブール市街まで ハワイストhavaistを使うのがよさそう。帰りバスと電車を使って空港へ向かったが、バスが大幅に遅れる。狭い路地に平気で雑な路駐をするためバスが通れずクラクションの嵐。面白いっちゃ面白いんだがストレスフルではある。 ・両替 イスタンブール市街地でした。レートのいい両替所を探すべ

          トルコ・エジプト旅行 トルコ(イスタンブール)篇