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勤路記

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徒歩の通勤路(二駅分)の途中で見たり思ったりしたこと
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勤路記51.だから歩いていくんだね

キンモクセイがここそこからいい匂いを振りまいている。フッと香りにだけ気が付いて、キョロキョロ探すと民家の玄関脇にひっそりとオレンジの粒みたいな花をパラパラ咲かせてたりする。油断ならん秋。

奥ゆかしく見せかけてそういうタイプ、人間にもよくモテ枠でいるよね。

通学途中の長男にも嗅ぎなさい嗅ぎなさいと勧めたら、鼻をスピスピいわせて嗅いだあと「鼻が詰まっていてよくわからないな!」と言っていた。

初秋

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勤路記50.今日の悩み

遠足のおやつに「団子または餅、おはぎでもいいけど」とリクエストされて悩んでいる親はあまり多くないのでは。

そんな次男の遠足が明日。さてどうしたもんかと。本人の理想は「串団子を3種類買って、それを一個づつにバラして一本の串に刺す」やつだそうだが、一度串から外すと二チャーてなって多分うまく行かないと伝え諦めてもらっている。

きっぱりと朝晩寒くなり、あんなにも暑い日々のことをもうあんまり覚えていない

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勤路記49.調教期間

夏よさらば、我が麗しの秋よと、心賑やかしく二駅先まで歩いた。

本当は昨日、一昨日と涼しかったけれど、歯医者やら久々の編み上げブーツに時間がかかったことやらなどで、二駅歩きの日常が本日に持ち越されていたのだ。

しばらく歩いていない間に知らない看板が立っていたり、角のマンションが明るいレモンイエロー色に塗り替えられたりしていた。

私の知らぬ間に!と責めるような勢いで思ってすぐ、先方さんたちからし

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勤路記48.知らんでいい顔

明け方、全家族がタオルケットにグルグル巻きになっている。秋だ。

着る服が見当たらず、ではこのクローゼットや引き出しを圧迫している布たちはなんなのだ、と途方に暮れるのも季節の変わり目の風物詩ですね。

制服と制帽をかぶった男子園児が祖父と思われる男性と手をつなぎ、しっかり前を向いてテキパキ歩くのとすれ違う。立派なお孫さんですね、と声をかけたくなるほどシャンとした園児で、ジィジの鼻もさぞかし高かろう

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勤路記47.そのうち後光が

どんより曇りでまだ暑い。
先日の『安住紳一郎の日曜天国』(TBSラジオ)で安住アナが「この暑さは木曜まで、そこで秋が来ると私は信じております。皆さんもそこまでなんとか乗り切りましょう」と言っていて、その言葉をお守りのように拠り所にしている。

ぼんやりと歩いていたら、道のいつも歩くのと反対側を歩いていた。

毎日視界の端にうつりこんでいる景色がくっきりする。
この家の植え込みはこんなに多種だったの

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勤路記46.傲慢デトックス

9月も半ば。夏を引きずった日常。

朝、はい行くよ〜と子らをせき立て、これぐらいの時期から蚊が本領発揮しよんねん、と虫除けを子と自分にプシュプシュかける。
夫はこの虫除けが大変に苦手で、お父さんは虫疑惑がある。

次男はスタスタと先を行き長男はポテポテとのんびり後方を歩き、私は2人の真ん中を歩いている不思議フォーメーションで、これも成長といえば成長か。

長男がハンカチを忘れてきたと汗をかきかき言

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勤路記45.同じパンツとして生まれて

環七の車がスイスイ走っている。「電車人少ない」と夫にLINEしてお盆。都心のお盆はよい。

夏休み中、子の学童は何時まで行かなくてはならないという決まりがないため、私も毎日お弁当作りがあるとは言え朝をユルく過ごしている。

今日はゆるすぎて隣駅すら歩く余裕がなく、久々に地元駅から電車に乗った。

途中、新築の家のベランダに同色・同タイプの男性用下着が一枚づつピシッ!と広げられハンガーにバシッ!と等

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勤路記44.夏を嫌いになる夏

積乱雲の陰影がわざとらしいほどにくっきりと浮かび上がる。「summer」というフィルターがあれば、きっと今私が見ているこの空の質感なのではないか。

慎重に弱冷車を避けた車両、ブワっとくる塊の冷気、隣の人のノースリーブと小型扇風機のウィーンと小さなモーター音。
なんかもういいよ。
夏ってこんなに嫌いだったっけ。

今朝、先週比で気温下がってるのになんやねんこの暑さ、と文句を言ってたら夫が「湿気がな

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勤路記43.どれもこれも夏

暑さと比例したセミの声がないが、あの朝からやかましいセミは8月の現象なんだろうか。
それか暑すぎて昆虫も調子狂ってんのかな。

駅に着くと水筒の水をがぶがぶ飲む。
ますます夏が暑くなりなどしたら、朝の徒歩にもドクターストップがかかるようになるのか。
そう思うとあきらかにジョギングの人は減っているし、散歩の犬も飼い主もつらそうだ。

乗った電車が弱冷車で「失敗したな!」と心から思った。もっとかたまり

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勤路記42.あたしゃ忘れない

あいさつは大事だよ。
少し前のCM「よーく考えよーお金は大事だよー」を聞いて「なんやねん、わざわざやかましな」と軽くイラついていたのと同じ感じになるぐらいあたりまえのこと。

通学路の旗振りの方々、暑い中毎日子どもの安全のためにありがとうと思い見ているが、そのうちのお一人が、あいさつをしない、できない子どもに対して、「あいさつしないの?!」とか「返事しないね!!」と結構大きい声で叱る、とまではいか

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勤路記41.成長と現実の夏

長男が二泊三日の宿泊学習へ行っている。
彼は支援級在籍で決まりとして登下校の送り迎えが必要なのだが、それがスコンとないため時間の余裕がものすごい。

次男は勝手に行って勝手に帰ってくるので、普通級の子との暮らしというものを束の間体験している。
楽ちんで少し寂しい。

次男と一緒に家を出て、最初の角で別れて歩く。
振り返ると、決して振り向かないという意志を感じる次男の後ろ姿が見える。頼もしく心細い。

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勤路記40.教え教えられ

朝は湿度が低い。
風が心地よいのを喜びながら昨日の出来事を反芻して歩く。

今月から私は長いこと就いていた業務を外れ、社内で全く新しい仕事をすることになった。
これまでの仕事は3人の後輩と私でやっており、私が抜けることを大いに不安がっている。
そりゃそうだろうよ。あたしゃあんたたちが青春時代を過ごしていた頃からこの業務やってたんよ。

1番新人の子が少しイレギュラーな仕事をどう進めていいか分からず

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勤路記39.ストップザシーズン

通勤路沿いに何かしら水道設備っぽい建物がある。横を通るたびにザーという水の音にジーという軽微な機械音がまざったものが聞こえ、たとえ真冬でも一瞬「蝉」と思う。

今朝は蝉の声を聞いた。
昨夜は次男の誕生日で、遊びに来ていた友人親子と一緒に花火もした。
なかなかに夏だ。
夜の公園は思い思いに過ごす人々がチラホラといて、そうそう日没後が楽しい季節ですよね。

蝉の声を聞いた後、水道設備の横を通るとやはり

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勤路記38.令和ぞ?

最寄駅には私大とその付属中高がある。
スポーツに力を入れている学校で、ものすごく大きい人たちの群れによく遭遇し、うちの息子たちがこのサイズ感になったら…と想像しては身震いを楽しんでいる。

今朝、小型扇風機を手にしたその学校の女生徒3人組が、しかめっつら男性に呼び止められ何やら話をされている。

なんだなんだ、ことと次第によったらおばちゃん割って入ってやるぞと、大きく耳をそば立てて慎重に横を通り過

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