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【不定期更新!】文芸コンテスト情報ニュース(2024/5/24版)


 毎月第2・第4金曜更新の「文芸公募ニュース」の5.24分です。
 結果発表は「過去」の出来事の報告ですが、「募集だけしといてバックレてしまった」のではないということを示す意味でも大事ですね。
 受賞者に自分の名前がなくても、「いつかはここに」と思って励みにしましょう。それにしても隔週ってこんなに早く来るんですね~。いやはや。

第70回江戸川乱歩賞

 第70回江戸川乱歩賞には395編の応募があり、その中から下記のように受賞者2名が決まった。選考委員は第70回を記念し、今回のみ7名(綾辻行人、有栖川有栖、真保裕一、辻村深月、貫井徳郎、東野圭吾、湊かなえの各氏)。
 報道によると、「遊廓島心中譚」は、二人の女性が遊廓島で起きる事件の真相を探る時代ミステリー。舞台は幕末の横浜だそうだ。
 「フェイク・マッスル」は、ボディービル大会のドーピング疑惑の調査に端を発するユーモアあふれるミステリー。日野さんは4年連続最終候補だった。

当選作
「遊廓島心中譚」 霜月流(東京都・30歳)
「フェイク・マッスル」 日野瑛太郎(東京都・38歳)

 江戸川乱歩賞は、エドガー・アラン・ポーをもじってペンネームとした江戸川乱歩の還暦を記念して創設された賞。当初は公募ではなかったが、第3回から一般公募に。当時、つまり70年前は「探偵小説」の呼称が一般的だったが、日本ではアメリカのハードボイルドのように私立探偵が活躍するという土壌がなく、それで乱歩の発案で「推理小説」と言うようになったらしい。

 江戸川乱歩賞は、西村京太郎、森村誠一、栗本薫、高橋克彦、桐野夏生、池井戸潤など人気作家を多数発掘。ミステリー文学賞の最高峰でもあり、受賞すると乱歩賞作家と言われる。

 受賞者の一人、日野さんは4年連続最終候補だそうだが、最終候補まで行けば、その後は公募は介さず、単行本デビューとなってもおかしくない。なのに4年も応募したのは乱歩賞作家という魅力なのか。それにしてもなんと粘り強いことか。

第1回有吉佐和子文学賞

郷土の偉人、有吉佐和子を顕彰し、和歌山市がエッセイを公募した有吉佐和子文学賞には2077編の応募があり、以下のように受賞作品が決まった。

入選作
最優秀賞 「手紙」日沼よしみ(山梨県)
優秀賞 「杜鵑草」原徹(愛媛県)

詳細はこちら

  有吉佐和子と言えば、昭和30年代~50年代に活躍した作家。代表作は『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』など、純文学的な作風から社会問題を扱った作品まで話題作を多く残した。

 今までその名を冠した文学賞がなかったのが不思議なくらいだが、有吉佐和子記念館の開館を機に創設された。社会派の小説部門もあってもいい気がするが、あんまり盛り上がらないかなあ(独り言)。

夢野久作文学賞

 東雅夫(文芸評論家)、大槻ケンヂ(ミュージシャン)の選考により、下記のとおり入選者が決まった。応募数は、「わたしの、いなか、の、じけん賞」が423編、「童話賞」は310編だった。

入選作
〈わたしの、いなか、の、じけん賞〉
受賞作 「地獄参り」鳩麦つむじ
特別賞 「見られからくり」熊代近々
    「幽霊華」倩瑞

〈童話賞〉
受賞作 「はとや歯科の鳩時計」国方はるみ
    「トルソーとランプの恋」伊灯とみの

 夢野久作といえば、日本三大奇書の一つと言われる『ドグラ・マグラ』の作者だが、意外にも童話も書いていた。
 ペンネームの由来は、福岡地方で言う「夢野久作さんのごたる人」だという。その意味は、「いつも夢うつつで、ぼんやりしている人」だそうだ。

 小説を書くぐらいだから、そう言われるような空想壁のある人だったか。あるいは、松尾芭蕉が自らを芭蕉(バナナに似た植物だが、実がならない無用のもの)と呼んだのと同じ自虐だったのかもしれない。

第27回ボイルドエッグズ新人賞

応募総数は65編。残念ながら2年連続で受賞者はでなかった。

受賞作
該当作なし

 出身者に万城目学がいることから、ちょっと注目していたが、これが裏目に出たかも。村上達朗氏の選評を、ちょっとだけ引用させてもらう。

〈新人賞に応募する場合、こうした流行や話題には注意が必要です。昭和ものやタイムスリップものが流行っているなら、応募者はむしろそれらを避けねばなりません。二番煎じととられるのが関の山だからです。万城目学が注目を浴びているなら、そこからもなるべく距離を置かねばなりません。万城目学は万城目学であって、余人には代えがたい独自性と作風の才能だからです。万城目学のジャンルは万城目学に任せ、近づかないことです。〉

何かの広告コピーではないが、「近づくな、危険」と肝に銘じよう。

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