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人生のステージが変わるとき 海幸山幸14 神様も“失敗”して成長した ことの葉綴り。百七七

還る時来たる


こんにちは。月曜日はお仕事の後、夕刻「ことの葉綴り。」に向かいます。


竜宮城の主で、海の神・綿津見神さまの魚たちへの呼びかけにより
山幸彦が、あきらめかけていた兄の海幸彦の釣り針が、赤鯛ののどから見つかりました!

ありがとう。
ありがとう。
ありがとう。

兄の釣り針の発見に、山幸彦の目から涙が止まりません。

竜宮城にきて三年。
愛する豊玉毘賣さまと仲睦まじい夫婦として暮らした歳月
かけがえのない幸せ。

義父の綿津見神さまの深く包み込むような父性の愛。
海の世界の誰もが、優しく交流してくれました。

憤怒から心を閉ざした兄との関係性。
絶望の淵に沈んでいたとき、塩土老翁神の導きにより辿りついた竜宮城。
愛と優しさに満ちた竜宮城での歳月は、
山幸彦の傷ついた心をすっかり癒やしていたのです。

傷口が塞ぐように、生命力も取り戻し、
愛し愛される愛妻と絆を深め合い、
幸せ、喜び、平穏、温かさを肌身で味わえました。
だからこそ、山幸彦は、「私は竜宮城に何をしに来たのか?」
と、自分の“果たすべき使命”を思い出した
ともいえます。

はぁ~
心底安堵した山幸彦は、海の上の世界を見上げていました。

私の故郷、生きる場所……。

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これまで受けた愛と恩とサポート、情
が我が身に身に染みわたっていくようです。
隣でもらい泣きする、美しい豊玉毘賣さまを見て、
どれほど愛しいと感じたことでしょう。

でも、それでも、山幸彦は、
「時は満ちたのだ。今こそ、還るときなのだ」
深い深い丹田の奥から、強い意思が沸き上がるのを感じました。

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人生の転機

私たち人間も、人生の岐路で、絶望や不安を感じていて、
それを周りの人の助けを借りて、助けられて
なんとか一つの山を乗り越えたとき、
転職、結婚、離婚、起業、独立、転居、など……。
「さぁ、次の扉が開いたよ」と、
人生に新たなステージが、自ずと立ち現われたりしますよね。

山幸彦さまも、次男の御子、婿殿という立場から
我が道を進むときがきたのだ。

と、それを感じられたのだと思います。
同時に、それは竜宮城との別れを意味します。
けれど豊玉毘賣さまをお大切に愛している心には変わりなく、
竜宮城の暮らしの満ちた暮らしの貴さもご存じで、
嫌になったわけではありません。


山幸彦の表情は晴れやかで、これまで以上に凛々しく清々しいお姿になっていました。

山幸彦のその姿をご覧になった綿津見神さまには、山幸彦さまのご決意を、すぐに理解されました。


義父上さま、
愛する妻、豊玉毘賣よ。
私は、兄の釣り針を探しに、この世界へと参りました。
義父上と、妻のおかげで、釣り針を見つけることができました。
身勝手を申しますが、私は、私の生きるべきところへと
還るときがきたように思います。

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綿津見神の呪力

綿津見神さまは、山幸彦の言葉を聞くと
静かにうなずきました。
そして、赤鯛から見つかった釣り針を手にすると、
清らかな海水で、きれいに洗い清めて、
そして、山幸彦さまへと、奉り、こう仰ったのです

御子どの
いいですか。
この釣り針を、兄君にお返しするときには、
後ろ向きになり、この呪い(まじない)の言葉を唱えてから
お返しするのです。
『この鉤(はり)は、おぼ鉤(ぢ)、すす鉤、貧鉤(まぢち)、うる鉤』というのです。

さて、これは、どういう意味かわかりますか?
まず、後ろ向きになるのは、人を呪うときの行為なんですって。
で、『この鉤(はり)は、おぼ鉤(ぢ)、すす鉤、貧鉤(まぢち)、うる鉤』は、
おぼ鉤(ぢ)は、心がふさがる鉤
すす鉤は、心のたけり狂う鉤
貧鉤は、貧乏な鉤
うる鉤は、愚かな鉤
という意味なのです。この呪力を山幸彦さまに伝えたのです。

そして、綿津見神の呪力はまだ続きます。

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―次回へ。

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