神仕への心 「左左右右 元元本本」 元伊勢二三 ことの葉綴り三四九
童女の大宇祢奈の覚悟
今日も、天照大御神さまが、伊勢の神宮にお祀りされるまでの「元伊勢」の物語。倭姫命(やまとひめのみこと)さま編です。
倭姫命(やまとひめのみこと)さまが、出会った童女、大宇祢奈(おおうねな)は、祭祀において重要な「大物忌(おほものいみ)」として、皇位の御徴の御鏡と御剣、「天岩戸」の鍵を護るように託されます。
そして、「大物忌(おほものいみ)」としての神さまにお仕えする覚悟を、幼いながらに、こう宣言したといいます。
墨心(きたなきここと)を無くして、丹心(きよきこころ)を以って、清潔(きよ)く斎(いつ)き慎み、
左の物を右に移さず、右の物を左に移さずして、
左を左として、右と右にし、左に帰り右に廻る事も、
万事(よろづ)違(たが)ふ事なくして、太神に仕へ奉る。
黒き心をなくし丹(あか)き心で清く慎みて
倭姫命さま。慎んで申し上げます。
黒い心(きたないこころ)をなくして
丹き心(明るく清いこころ)を持って、
大神さまにお仕えいたします。
身もきれいに清めて、大神さまを尊び慎みます。
左にあるものを、右に移したりいたしません。
右にあるものを左に移したりしません。
もともと、左にあるものは左として、
右にあるものを右にしたままで
左にかえったり、右に廻ったりと
不自然なことを一切おこなわず
すべてのことを、元のままで違うことが無きようにして
大神さまにお仕えいたします。
さらに、今風に“訳して”みると……
はい。倭姫命さま。
われは、我を張ったり、欲をだしたりの黒いこころをなくすように心がけます。
明るく清く、正直で素直(明浄正直)に、まっすぐなこころで
大神さまに。お仕えいたします。
そのためには、身も、衣も、食べものも住むところにも
清らかに清潔に浄めます。
われは、言葉もつつしんで、美しい言葉をもってお仕えいたします。
そして、左にあるものを、不自然に右へと自分勝手に移動させたりせず、同じように、右にもともとあるものを、左にもせずに
余計なことや不自然なことは、一切おこなわいようにして
すべてのことを、元のままで、
神代からつづくことを、違うことがないように、
心から誠心誠意をもって、一生懸命に大神さまにお委ねして、
お仕えいたします。
いつも、初めを心がけて、初めに戻ります。
左左右右元元本本(ささううげんげんぽんぽん)
おお、大宇祢奈(おおうねな)よ。
そなたは幼きながら、大神さまへお仕えする心をよく存じておる。
大宇祢奈(おおうねな)の言葉を聞いた倭姫命(やまとひめのみこと)さまは、たいそう関心なさったのです。このとき、大宇祢奈(おおうねな)の弟の大荒命(おおあれのみこと)も、倭姫命さまのもとにやってきて、共に、お仕えすることになりました。
元(はじめ)を元(はじめ)として。本(もと)を本とする。
高天原で天照大御神さまが、お祭りされたときのように、
「元を元にし、本を本にする故なり」
元を元とし、明るく素直で正直で誠の清らかな御心の大切さ。これは今も祭祀で、大切にする心として伝わっているのです。
―次回へ
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