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愛する皇子のために弟橘比賣命 倭建命其の二九 神話は今も生きている ことの葉綴り五五四

小糠雨と雨の水玉

こんにちは。今日も、静かに小糠雨が降る朝、神社にお参りしてきました。
ほんの少し前まで、猛暑で蝉の声が聞こえていたのが、すっかり涼しくなり、虫の音が心地よく耳に入ってきます。
草が光っていると思ってよく見てみると、小さく細い葉に、きれいに雨の粒が並んでいるのです。
写真では、うまく撮れませんでしたが、雨の水玉がキラキラしていて、とっても美しかったです。
お参りしての戻り道の空には、覆われた雲をかき分けるように、太陽のうす~くうす~い光が見えてきました。

明日九月六日(月)は金運に良い「巳の日」です。
六曜は、お昼前後、正午だけが吉の「赤口(しゃっこう)」。
十二直は、「(おさん)」で、お買い物や商品の買い入れ、五穀の取り入れなど、物事を納めるに良き日。
二十八宿は「(き)」で、移転や登山は凶で、修理や工事が吉です。

さて、倭建命(やまとたけるのみこと)さまの神話の物語に入ります。

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<ことの葉綴り>ご案内

「ことの葉綴り」全体の神話の物語のご紹介です。
神話は、「神さまも“失敗して成長した”」「“神話は今も生きている”」と、日本の魅力的な神様の物語編。
約二千年前、伊勢の神宮ができるまでの「元伊勢」編。
ときおり綴る「エッセイ」編と、「マガジン」に分かれています。
下記のトップページから、スクロールしていただくと、物語別、神様べつに「マガジン」が選べるようになっております。
神さまの名前や、ご興味あるものを読んでいただけると幸いです。

最新のマガジンは、天照大御神さまが伊勢の神宮にお鎮まりになられるまでの「元伊勢」物語 神話13~17です。

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<倭建命様の物語。これまでのあらすじ>

景行天皇の御代四〇年、皇子の倭建命(やまとたけるのみこと)さまは、熊曾建兄弟(くまそたける)討伐後、すぐ東国の荒ぶる神の討伐へ出立されます。
焼津」(静岡県)で、罠に嵌められて窮地に陥った倭建命さま一行を救ったのは、伊勢の神宮の斎宮(いつきのみや)で叔母の倭姫命(やまとひめのみこと)さまから賜った、皇統を受け継ぐ「草薙剱(くさなぎのつるぎ)」と「御袋」の火打石でした。
そして、走水(神奈川)の岬の「旗山崎」から、房総半島の上総国へ向けて御船で出港されていきます。

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海の神の祟り

 出港後すぐ、空が真っ黒となり、暴風雨が襲ってきます。御船はまったく進むことができず、荒れ狂う大波の渦の中へと巻き込まれて、今にも沈没しそうです。
これは、海の神がお怒りになり祟られてのことでした。

倭建命(やまとたけるのみこと)さまも、ただ御船にしがみつき、為すすべもありません。

草薙の剣を抜くこともできません。

このまま海の藻屑となってしまうのか……どうすればいいのだ?!
どうすれば、海の神の怒りをなだめられる?!……

家臣の誰もが、ただ、ただ必死に御船にしがみついているだけです。
御船、沈没までもう猶予もありません。

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愛する妃、弟橘比賣命(おとたちばなひめ)の覚悟

その時です。
御船の小屋に避難していたお妃の弟橘比賣命(おとたちばなひめのみこと)さまが姿を現し、倭建命(やまとたけるのみこと)さまへ、こう仰ったのです。

建命(たけるのみこと)さま~。
これは、海の神の激しいお怒りです!!!
このお怒りを、祟りを鎮めるために、私が、皇子(みこ)さまの代わりとなり、海の中へと入り、この身を捧げます!!!!

何を、何をいうのだ!!?

あまりのことに、倭建命(やまとたけるのみこと)さまは、ただ驚かれています。

弟橘比賣命(おとたちばなひめのみこと)さまは、真剣でした。
強い覚悟をされて肚をくくられていたようです。

建命(やまとたけるのみこと)さま~
皇子さまは、天皇より賜りし勅命である、東国征伐を必ずや成し遂げなければならぬお方です。
そして、必ずや、東国平定を成し遂げて、朝廷へとお戻りになり、天皇へと復命なさってください、必ず!!!
そのために、建命(たけるみこと)さまのお力になれるのであれば、私は、喜んで皇子さまに、命を捧げます!!!

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海の神への“生贄”に身を捧げ

古(いにしへ)、荒ぶる神を鎮めるには、人を差し出し、“供える”人身御供(ひとみごくう)があったのです。

絶句したまま倭建命(やまとたけるのみこと)さまは、動けません。

けれど、もう、それしか打つ手はありませんでした。

弟橘比賣命(おとたちばなひめのみこと)さまは、八枚重ねの菅(すげ)の敷物、同じく八枚重ねの獣皮敷物八枚重ねの絹の敷物を、波の上に敷くようにして、
そして、倭建命(やまとたけるのみこと)さまに、優しく微笑まれると、そのまま荒れ狂う海の、“敷物”の上へと、御船から降りていかれました…………そして……。

弟橘比賣(おとたちばなひめ)――――!!!

大きな波が一気に、弟橘比賣命(おとたちばなひめ)さまを、くるめとるように、呑み込んでいってしまいました……。

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―次回へ
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