末っ子の肝力と勇気 神さまも“失敗”して成長したことの葉綴り。二二七
陰謀に先手を
おはようございます。窓から晴れ間が見えている朝。小鳥のさえずりも聞こえてきます。今朝は、お仕事前に「ことの葉綴り。」のひと時です。
さて、初代、神武天皇が崩御したあと、後継者問題が勃発!!
義理の息子である、当芸志美美命(たぎしみみのみこと)の目的は、皇后、伊須氣余理比賣(いすけよりひめ)を娶ったうえで、
腹違いの、天皇と皇后の御子たち3人を亡き者にして、自らが皇位を継承することでした。
その陰謀に気づいた母の伊須氣余理比賣(いすけよりひめ)は、
当芸志美美命(たぎしみみのみこと)の企てを、歌にして御子たちに届けました。
義兄の陰謀を知り驚く三兄弟の御子たち。
どうするべきか……悩みぬき、相談の結果、私たちが亡き者にされる前に、「先手を取る」ことを決意します。
ある夜、三兄弟は、武具を整えて、芸志美美命(たぎしみみのみこと)の館へやってきます。
三兄弟の末っ子の神沼河耳命(かむぬまかはみみのみこと)が、様子をうかがったあと、次兄の神八井耳命(かむやいみみのみこと)にこう言葉をかけます。
兄さん、今だ。今こそ、この武器を手にして、中へと入り、当芸志美美命(たぎしみみのみこと)を殺してください!
ああ、そうだな。わかった。
と、答えたものの、いざ、足を出そうとすると、手足が震えはじめて、怖くなり、動けなくなってしまいました。
当芸志美美命(たぎしみみのみこと)は、館の中にいるようです。気づかれたら、御子たちは一貫の終わりです。
けれど、次兄の神八井耳命(かむやいみみのみこと)は、震えがひどくなり顔面も蒼白になっていっています。
あっあっ……。
震えから武器の刀が手から滑り落ちそうです……。
部屋の中から、何か物音が聞こえてきました……。
瞬間の決断と勇気
ヤバい! もう一瞬も待てない! もうダメだ!!!
気が付くと、刀を手にして震えている次兄の神八井耳命(かむやいみみのみこと)の背後にいた、末っ子の神沼河耳命(かむぬまかはみみのみこと)の、体が動いていました。
兄さん~
言葉よりも早く、次兄が手にする刀を手に取ると、
疾風のように、館の中へと突入していき、
部屋の中にいた当芸志美美命(たぎしみみのみこと)を見つけると、めがけて一目散。
そして、肚の底からの息吹で
ええぃ!!覚悟~当芸志美美命(たぎしみみのみこと)~!!!
と、雄たけびをあげながら、刀を振り下ろしました。
当芸志美美命(たぎしみみのみこと)も、そのあまりの勢いに
逃げることもできずに、その刀の一振りを受けて
命を落としたのです。
一瞬の出来事でした。
はぁはぁはぁと、肩で息をする末っ子の神沼河耳命(かむぬまかはみみのみこと)。
そこに、兄たちが近づいてきます。
「建」の名をもらう
神沼河耳命(かむぬまかはみみのみこと)、すごいぞ。よく撃ち取ってくれた。
ああ、見事だった。私は、怖くて体が震えて動けなかった。
すごいぞ!! この私たちの危機を救った、お前の勇気を讃えたい。これから、建沼河耳命(たけぬまかはみみのみこと)と呼ぼうではないか。
ああ、それがいい。
これから、末っ子の神沼河耳命(かむぬまかはみみのみこと)は、
建沼河耳命(たけぬまかはみみのみこと)と 呼ばれるようになりました。
この「建」には、逞しい、猛々しい、勇壮なという意味があります。
「国譲り」神話に登場した、刀剣の神、建御雷之男(タケミカヅチオノ)神と同じ、「強い、勇壮、勇気がある」という意味の名前を兄たちからもらい、褒め称えられたのでした。
―次回へ
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