“女装”の秘策 倭建命 其の三 神話は今も生きている ことの葉綴り五二六
獅子座の新月、願い事を。
こんにちは。トリプル台風、9号は、九州に上陸するかもです。10号は、千葉県に激しい雨が降っています。土砂災害も警戒が必要とのこと。どうか、無難に過ぎていきますように!!
オリンピックも今日が最終日ですね。こちらも、無事に終わりますように。
そして今夜は、獅子座の新月ですね。あなたは、あなた自身のことで何を願いますか?
熊曾建(くまそたける)兄弟の征伐へ
さて、今日も神話の物語を綴ります。
悲劇の英雄神といわれる、倭建命(やまとたけるのみこと/日本武尊)さまの物語です。
今はまだ、小碓命(をうすのみこと)と呼ばれております。
父、景行天皇(けいこうてんのう)の命の意図を“勘違い”した小碓命(をうすのみこと)は、兄の大碓命(おおうすのみこと)を殺めてしまいます。
その荒々しさに恐れをなした天皇(すめらみこと)は、小碓命(をうすのみこと)を、遠ざけるために、遥か九州の地で、宮廷に従わない熊曾建(くまそたける)兄弟の征伐を命じます。
それは、地の果てでの、勝てる見込みのない勝負で、きっと小碓命(をうすのみこと)は、もう生きて戻ってこれないだろう……。
天皇だけではなく、誰もがそう思っていたのです。
なにせ、まだ髪型も子どもの結い方をした若干十五歳。引き連れる家臣もわずかばかりでした。
それでも、まっすぐな心持ちの小碓命(をうすのみこと)は、伯母で伊勢の神宮の斎宮(いつきのみや)の倭姫命さまからもらいうけた御装束を大切にはなすことなく持っていたのです。
やがて、九州の熊曾の地に辿りつきますが、熊曾建(くまそたける)の大きく立派な館は、三重の強固な守りがあり、まったく近づくことができません。
この熊曾建(くまそたける)兄弟を討たなければ、私は大和へと戻ることは許されない。なんとか、兄弟を討ち果たせば、きっと父も私のことを許してくださるだろう……。
小高い山の上から、熊曾兄弟の館を見つめながら、小碓命(をうすのみこと)は、そう覚悟をしていました。
だが、今、動くことはできない。
小碓命(をうすのみこと)の秘策とは?
様子を探ると、新しい館を建てており、それがもうすぐ完成する情報を入手しました。
多くのものが、忙しそうに動き回っている。あれは……新たな館の完成したときの祝いの宴の準備ではないか!
そうか……よし!
小碓命(をうすのみこと)さまは知恵をはたらかせ、そして一つの秘策が浮かびました。
時を待つ……。
新築落成の酒宴が近いと気づいた小碓命(をうすのみこと)さま。
しばし、その祝いの宴まで、じっと山中で身を潜めて、待っていたのです。
家臣たちにも、探りを入れる者以外は、新しい館の完成まで、山中から出ることなく、熊曾の人に、決して姿を見られないように気を付けるよう命じられました。
何日過ぎたことでしょう。まだ小碓命(をうすのみこと)は動きません。ただ、待っています。
しばらくすると、熊曾建(くまそたける)の館では、お祝いの酒宴に出されるお酒や食料を用意している様子が見られるようになりました。
小碓命(をうすのみこと)はまだ見た目も幼いことから、館の近くまで、遊んでいるふりをして、出かけていき、様子を探りながら、新築落成の祝いの宴が、いつになるか、その日をずっと待っていました。
ある日、偵察の者から、「小碓命(をうすのみこと)さま。熊曾建(くまそたける)の館が、いよいよ完成をしました。村の者の話によると、今夜、祝いの宴が催されるとのことです」と、報告が入りました。
時は満ちたのです。
小碓命(をうすのみこと)は、皆を集めてこういいます。
今夜、決行の時がきた。
だが、祝いの席で、酒が入っているとはいえ、私たちが一気に隙をついて攻めても、返り討ちにあってしまうのがおちだろう。
よいか、私、一人で向かう!
小碓命(をうすのみこと)の言葉に、家臣たちは驚きを隠せません。
それは、あまりにも無謀すぎます。
ご一緒いたします。
お願いいたします。お一人でなどおやめください。
小碓命(をうすのみこと)は、首を縦にふりません。
私には考えがあるのだ。
そういうと、小碓命(をうすのみこと)は、少し席を外しました。
倭姫命さまの御装束を
一人になった小碓命(をうすのみこと)は、少年の髪型「ヒサゴバナ」をほどくと、髪を一つにまとめ上げて少女の髪型へと結いなおしました。
次に、自分の装束を脱ぐと、伯母の倭姫命(やまとひめのみこと)さまから譲り受けた、女性の装束を身にまとったのです。
その姿で、家臣たちの前に戻ります。
ええっ?!!!
本当に小碓命(をうすのみこと)さまですか?!
そうです。小碓命(をうすのみこと)は、女装をしたのです。
もともと端正な顔立ちをしていた小碓命(をうすのみこと)さま。
誰が見ても、美しい少女にしか見えませんでした。
これであれば、酒宴の席にいてもおかしくないであろう。
はっはい!
まさか~女にしか見えません!
家臣たちは、ただ口をあんぐりあけて驚いています。
元祖女装した英雄神?!
よいか、私は、必ず熊曾建(くまそたける)を討って参る。
皆、どうか待っていてくれ。
そういって微笑むとと、短剣を懐に忍ばせて、一人、山を下りて熊曾建(くまそたける)の館へと向かっていったのです。
まさに、元祖“女装”って感じですよね。
今なら、「まじ? 鬼カワイイ」とか感想がでそうです(笑)。最近は、女装できるアプリもありますし……。
また、ここで、倭姫命(やまとひめのみこと)さまの装束が、こんな風に役だてたのですね。
一人で、敵の領地へと進んでいく小碓命(をうすのみこと)さま。
どうなるでしょう?
―次回へ
#一度は行きたいあの場所
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