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海幸彦の攻撃  海幸山幸20 神様も“失敗”して成長した ことの葉り。百八三

逆恨みから争いへ

日曜日の午後、こんにちは。「ことの葉綴り。」の習慣の一時です。


竜宮城から戻った山幸彦さまは、海の神の綿津見神さまから授けられた呪文を唱えた上で、兄の海幸彦さまに、釣り針を返しました。
それ以降、海幸彦さまは、何をやってもうまくいかず八方塞がりの状況に追い込まれ、どんどん貧乏になっていきました。
そして、その原因をすべて、弟の山幸彦さまのせいにして、怒りや妬みと、逆恨みの念を強くしていきます。
何年も魚も獲れず、田んぼも日照りで枯れてしまって……。
大ピンチです。追い込まれて不安も募ります。

なのに弟の山幸彦の田では豊かな稲穂が実り、山の幸の実りにも恵まれて、豊かに暮らしています。

憤怒にかられ、常にイライラと気持ちも荒っぽくすさんでいく海幸彦さま。

うう~!!!!
なんで、アイツだけが!!
こうなっては、アイツの田畑を奪うしか、私たちが生きることはできない!
アイツが悪いんだから、成敗するのが“正義”なんだ!!

そして、とうとう、海幸彦さまは、家来たちを引き連れて
山幸彦さまの土地を奪うために、戦を仕掛けてきたのです。

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潮満珠の威力

山幸彦さまは、残念に思っていました。
兄さんは、私を攻めてくるのか……。
仲良くしたかったのに……兄さんのために竜宮城まで釣り針を探しにいったのに……。
義父の綿津見神さまの、お見立てや心配通りになってしまった…。

山幸彦さまは、2つの珠を大事そうに見つめています。


御子どの。あなたの側に、私や豊玉毘賣がいなくても、ずっと大切な御子どののことをお守りしていますよ。


竜宮城に残してきた、愛する妻、豊玉毘賣さまと
良き理解者である義父、綿津見神さまのお顔と、送り出すときにくれた言葉を思い返していました。

御子どの。
もし兄君が、それを恨み、あなたを攻めて争いになったならば、
この潮の満ち引きを支配するこの「潮満珠(しおみつたま)」
を出すのです。
すると、潮が満ちて溢れて溺れてしまうでしょう。


海幸彦の馬に乗った軍勢は、山幸彦の宮殿のすぐそばにまで来ていました。
雄たけびの声も聞こえてきます。

山幸彦は、意を決して立ち上がると、「潮満珠」を空に向けて掲げると、こう唱えました。

潮満珠よ~潮よ、満ちよ~!!!

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助けを求める海幸彦

すぐに、山幸彦の耳にゴオゥーっという、地響きのような
渦を巻いたような波音が聞こえてきました。

海の潮が一気に満ちていきます。
そして、次の瞬間、津波のような海水が、浜辺に、
そして田畑に、宮殿にも押し寄せてきました。
山幸彦を攻めていた兄の海幸彦たちの軍勢も一気に呑みこんで、溺れさせていきます。

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あまりにもいきなりのことで、海幸彦たちは、どうすることもできません。
海水に溺れて水の中に沈みこみそうです。

あ~もうダメだ~!!!
うっぅ、苦しい~!!!

視界の先には、潮満珠を手にした山幸彦の姿が見えました。

あ~助けてくれ~!!!
頼む~~~

海幸彦は、どんどん海水の中へと沈んでいき、かろうじて頭だけが見えて、手足をばたばたさせています。
もうろうとする意識の中で、海幸彦は、これまでの自分のしてきた行いを“走馬灯”のように思い返したのです。
すべての原因は、自分にあったことを“理解”したのです。

ああ~
俺が悪かった~~。
助けてくれ~~。
すまなかった~~。

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―次回へ。

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