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短歌と和歌と

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中学生向けに和歌・短歌を語る練習をしています。短歌は初学者。和歌は大学で多少触れたレベル。
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#古今和歌集

5月30日(日) 古今集の五月雨

五月雨に物思ひをればほととぎす夜深く鳴きていづち行くらん
                     (153 紀友則)

 『古今和歌集』の夏歌に載る五月雨の歌は二首だけだ。そのうちの一つが紀友則のこの歌。
 ここでの五月雨は物思いを誘発するものとして機能する。するとほととぎす到来。ほととぎすは新古今時代に「村雨の空」との繋がりを深くするけれど、雨自体とは『古今集』の時代から縁が深かった。 

 

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2月28日 社会派短歌と伊勢の桜

2月28日 社会派短歌と伊勢の桜

 今日も練習です。ちょっと社会派に挑戦。

 チームから2人目の感染者でて笑顔の練習始めるチーフ

 この夏にマスクをつけて臨むべきかのっぺらぼうが会議を持った

 教科書が電子化されて電子化に興奮していた男子が消えた

☆ ☆ ☆

 古今和歌集の歌は「理知的」と評価されることが多いのですが、理知的ってどういうことなのでしょうか。

 それは例えば理屈っぽいということであり、別の言い方をす

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2月27日 色々な僕と凡河内躬恒の梅

 1日一首と決めると肩に力が入る。どうせ初心者の下手くそなのだから、推敲とか考えずに数を詠むことにした。戦いは数だよ兄貴。

 まあ、気力の許す限りだけど。

シイタケを栽培し始めるくらいの口調で猫の避妊を決める

子どもらがテレビを見る間に風呂入るすぐに来おった さては、君め

教室を統治するのに温もりは不要だ統治したくなんか無い

休日に雨降れどこにも出かけない堂々とした理由が欲しい

とっと

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《和歌日記》2021年1月8日

《和歌日記》2021年1月8日

 いやさむっ!!!寒いわ、あほかっ!!冬あほーーー!!

 手がアカギレしまくるこんな日に、三学期が始まりましたわけですけども。立っても寒い歩いても寒い、チョークを握る手が寒い。窓の外みりゃ南国鹿児島に雪が散らついてます。
 何にもなきゃスクワットしたり叫んだりするいつもの古文をやってるはずなのに、新型コロナがいつまでもコロナコロナしてるもんだから、こんな寒い日にしんと静まり返って身動き一つしない

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(古典和歌)冬の恋歌

(古典和歌)冬の恋歌

思ひかね 妹がり行けば 冬の夜の 川風寒み 千鳥鳴くなり
                  (『拾遺和歌集』224 紀貫之)

 恋しさをおさえきれなくなって あのひとの住む方へ行ってみると
 冬の夜の 川風が寒いので 千鳥が鳴いているらしい

 会いたいなら会いに行けばよい。わざわざ「思ひかね」というからには、何か容易に会えない事情があるのだろう。親世代の干渉か、あるいは仕事が忙しいか。

 

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冬の月と古今集

冬の月と古今集

大空の 月の光し 清ければ 影見し水ぞ まづこほりける

 冬の夜空に君臨する月は、冴え冴えとした静謐な光を放ちます。その光は透明で美しく、しかしどこか怖い。

 歌は『古今和歌集』の三百十六番歌。詠み人知らずの作品です。「影」は月影、月の光を意味します。

 清さが凍結を招くという詩情。水の擬人化。そして「まづ=いち早く」見たものから凍り付かせる無慈悲。

 作者は月を振り仰ぐことができたのでし

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冬の風の歌

吹く風は 色も見えねど 冬くれば ひとり寝る夜の 身にぞしみける
              (後撰和歌集449 詠み人知らず)

(訳)
吹く風は色も見えないけれども 冬が来ると 一人で寝る夜、私の身に染みわたるものだね

 冬の風の冷たさに気がつくのは、僕の場合はまず手だ。

 朝のランニング時、寒さと闘って外に立ち、身体をひねって走り始める。やがて身体はぽかぽかしてくる。だけど手先はなかなか

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