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冬の月と古今集

大空の 月の光し 清ければ 影見し水ぞ まづこほりける

 冬の夜空に君臨する月は、冴え冴えとした静謐な光を放ちます。その光は透明で美しく、しかしどこか怖い。

 歌は『古今和歌集』の三百十六番歌。詠み人知らずの作品です。「影」は月影、月の光を意味します。

 清さが凍結を招くという詩情。水の擬人化。そして「まづ=いち早く」見たものから凍り付かせる無慈悲。

 作者は月を振り仰ぐことができたのでしょうか。いいえきっと、その威を恐れて視線をあげることもできなかったでしょう。せめて水に映った月の姿をと思ったら、その水はすでに凍り付いてた。

 恐ろしい、でも美しい。『古今集』冬部に収められた、月の名歌です。

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