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個人的にストックしておきたいnote記事をまとめております。 無言での追加失礼致します。
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短編ゴシックホラー 『悪魔城 ITABASHI』

短編ゴシックホラー 『悪魔城 ITABASHI』

まったく無駄な遠回りばかりだったと、これまでの人生を振り返って私は思う。

つまり「中年の危機」と世間で謂われるものに、漏れなく自分も捕らわれてしまったのかもしれない。これも俗世に生きる男の多くが経験するという現代的な通過儀礼と考えれば「何だそんなものか」と逆に楽天的になりもするのだが、それと同時に自分というものが余計に詰まらない、如何にも取るに足らない存在に思われてもきて、やはり辛くなる。

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【民話ブログの民話】 実録・レスラー闘犬殺し

【民話ブログの民話】 実録・レスラー闘犬殺し

戦後十数年、一部の資産家や有力者たちの間では、当時はまだ珍しかった外来の大型犬種の飼育がブームとなっていて、品評会なども催されていたようだ。

そうした大会の一つで、都下三多摩地区の地主である新三郎(仮名)の飼うグレートデンが優勝を飾った。

またこの大会には、当時国民的人気を誇っていた、あるプロレスラーの飼い犬も出場していた。彼の犬もまた新三郎と同じくグレートデンであった。

グレートデンは温厚

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【民話ブログの民話】 おれの玉は湿っている

【民話ブログの民話】 おれの玉は湿っている

 天高くを悠然と揺蕩うように泳ぎ飛ぶ龍はその手に宝玉を握っていて、龍というものは大体がそうやって宝玉を携えているものらしい。

 この世界のうちのある領域を治めている龍もやはり手に宝玉を握っているのだが、この龍はそれについて悩んでいた。

「おれの玉は、どうも湿っているな……」

 数千年に一回位の割合で、他の龍とすれ違う事がある。果てしなく広大な世界の中では大変に珍しい出来事ではあるが、龍の寿命

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短編小説「パープル」

短編小説「パープル」

間宮は?
と僕は尋ねた。

死んだわ。
と依子は言った。
間宮は、依子の恋人であった。

依子は肩に。
露出された彼女の白い柔肌に、黒色の海洋生物を乗せていた。
アメフラシ。体長20センチ程の軟体生物。
肩と、鎖骨と鋭角に曲げた肘の上にも。
依子の身体を三匹のアメフラシが這っている。

依子はアメフラシを肌に這わせて遊んでいる。

「ねえ、セックスの話をしましょう。」
と依子は言っ

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【紫PURPLE】眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー第34集 解題と読者アンケート

【紫PURPLE】眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー第34集 解題と読者アンケート

眠れぬ夜の奇妙なアンソロジーは一つのテーマでnoteの記事をつなぎます。noteは現代のアカシックレコード。日々紡がれる膨大な物語に、タイムラインの奔流に、あなたの物語が押し流されて消えてしまわないように。遺構に眠る誰かの呟きを掘り起こし、磨いて輝きを取り戻すために。大切なものを繋ぎ留めるために。
この企画には今月も多くの記事が集まりました。

「この企画は山小屋のようなものだ」と或る方が言いまし

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