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我々の脳でも「量子もつれ」が起こっている!?

2022年のノーベル物理学賞でテーマとなった「量子もつれ」現象について、幾度か触れました。

この量子もつれは、実験室で検証され、今はそのもつれ距離を広げた実証実験が各国で行われています。

特にそのうち、目立つのが中国による地上と衛星をつないだ量子もつれ実験です。

このように、「量子もつれ」は科学技術という人工的な産物というイメージをもたれがちですが、実は鳥にも量子もつれを通じて地磁気を感知しているということが分かっています。

コマドリの眼にあるタンパク質「クロプトクロム」が光を吸収すると、「もつれ状態」にある”電子のペア”をつくりだします。
その電子同士が再結合して生成物する確率が、方向に対する”磁場がなす角度”に強く影響され、普通の磁石の100分の1と弱い「地磁気の磁力」にも鋭敏に反応できるという機構です。

となると・・・、やはり人間にはそういった能力が働いていないのか?
と考えたくなりますね。

そんな中、驚くべき実験成果を米国の研究グループが発表しました。

ようは、
人間の脳内で既知の量子系を特定し、それを未知の系と相互作用させることで、量子的なもつれを確認することに成功した、
という話です。

この実験は、量子重力の存在を確認する手段として元々は発想されたアイデアだったそうです。
「量子重力」とは、ミクロの世界である量子論と、宇宙空間のようなマクロの世界で中心となる重力を統合する考え方を指します。

過去にもそれを統合する試みについては触れたので、それ以上の詳細は引用にとどめておきます。

今回はあくまできっかけで肝心なのは、それによって脳内処理に量子もつれらしきものが発見されたことです。

ちょっと実験内容は神経科学の分野も関わるため小難しいです。そもそも実験を行ったのも脳のプロフェッショナル達です。

まず、元々「脳内にある水」から陽子スピンが存在することは以前より測定されていました。スピンとは名前の通り回転量のような物理的な情報です。
量子もつれでは、どんなに遠く離れていても、スピン情報は文字通り一瞬で伝わります。
厳密には伝わる、というよりもつれているので片方を動かすともう片方に影響を与えるというイメージのほうが近いです。

その陽子スピンですが、脳内の血流を磁気現象から計測する MRI (Magnetic Resonance Imaging) で確認できます。
そして次に、EEG(Electroencephalography) の一種である心拍誘発電位に似た信号を発見しました。
この信号は通常はMRIからは計測できず、説明可能であるためには、脳内の陽子スピンが量子もつれ状態にあるとしかいえない、というわけです。

しかも興味深いことに、この現象は脳の記憶機能にも影響するとのことです。
つまり、これらの脳内で起こっている量子プロセス現象は、我々人類の認知および意識に関わる脳機能の重要な部分である可能性があります。

我々の認知活動まで物理現象で説明できる時代になったのは、冷静に考えるとすごいことです。

この研究を通じて、なぜ人間の脳がここまで他の生物と異なっているのか、知能の本質まで追求できるかもしれません。

この研究成果の今後の動向は、脳内で長期的に記憶しておこうと思います。

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