見出し画像

量子重力理論の進展ともう1つの派閥

最近、量子重力理論の実証に関わるニュースが続いています。

ようは、
重力にも量子論の原則「非実存性」が当てはまる実験方法を編み出した、
という話です。

もう少し背景を補足すると、日常や天体のようなマクロ現象ではアインシュタイン重力理論が使えますが、それが原子レベルのミクロになると量子論という不思議な法則に支配され、折り合いがつきにくくなります。
その不思議な中でも、「観測を行うまでは状態が確定しない」というのが「非実存性」です。
観測という主観的な行為を組み込むことが、アインシュタインを初めとして多くの科学者の頭を悩ませてきました。

今回それを実験で検証できる可能性を提示し、うまくいけば「やはり組み込まざるを得ない」とという立場を強くすることが出来ます。

このように、量子論と重力論を統合する理論を一般的に「量子重力理論」と呼びます。
実は、以前に取り上げたペンローズは、重力は量子論に従わない、というスタンスで独自の理論を追求してきました。

今回は、量子重力理論の方向性として2つのタイプがあり、その違いについて触れてみたいと思います。

2つのタイプとは、

超ひも理論」と「ループ量子重力」と呼ばれるもので、メディアでは前者をよく伝えていると感じます。(このあたりの実態はメディア経由なので何とも言えません。ただ、日本では超ひも理論研究者のほうが多いのだろうとは想像します)

「超ひも理論」については、過去も取り上げてきました。

もう1つの「ループ量子重力理論」ですが、シンプルにいうと「時空は離散的な塊で説明できる」というのが特徴です。

は?
と言う声が聞こえそうなので補足します。

アインシュタインの構築した重力理論は「時間と空間は相互作用」します。
ただ、もう一歩突っ込みを入れると、そもそも「時間と空間はどうやって存在しているか?」についてはあまり語っていません。

超ひも理論では、少なくとも「空間は量子もつれによって創発する」という考え方で研究が進んでいます。時間についてはまだ未知の領域です。(おなじく量子もつれで説明しようという話は聞いたことがありますが、公開記事では見つけられず)

一方でループ量子重力理論では、時間と空間を1セットとした離散的(とびとび)な単位を定義します。その最小数は「プランク単位(時間または空間)」で表現されます。
但し、細かくはこの最小時空単位が存在するだけでは「時間という概念は存在しません。
その単位をネットワークで結合する作用の変化が、我々が感じる「時間」と呼ばれているものだ、としています。

このあたりをして、「時間は存在しない」というキャッチフレーズでループ量子重力理論の文脈で使われることがあります。
上記の仮説に基づくとある意味正しいともいえますが、これは話すときの定義の問題かなと思います。
「時間」を物理学的にとらえるか、神経科学的(または心理学的)にとらえるかによって、その向き合い方は変わってくるということです。

今この文脈で注目されているループ量子重力理論研究者が「カルロ・ロヴェッリ」氏で、下記書籍では「時間」を物理学だけでなく多面的にみたうえで語っています。

ループ量子重力理論についても、どこかでもう少し触れてみたいと思いますが、まずは時間をありきとしない不思議な理論があるよ、という紹介で今回は指を置きたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?