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超ひも理論の雰囲気を超ゆるく紹介

4/30まで毎年恒例となった「ニコニコ超会議」が行われ、公式サイトによるとネットで1300万名以上が来場したとのことです。
どこまでユニークユーザかは分かりませんが、それにしてもすごい数です。
「超」という言葉もなんとなくすごそうで、それも集客効果を生んでいるのでしょうか?

実は、「超」お堅いイメージのある理論物理学の分野でも、「超」は多用されており、その究極が、万物の理論有力候補「超ひも(弦)理論」です。

今回は、思い切って超ゆるめにその雰囲気を紹介してみたいと思います。

まず、超ひも理論はまだ候補にすぎないのと、元々は重力を除いた近似的な万物理論「素粒子の標準模型」の技法として、南部陽一郎氏が唱えた「ひも理論」が発端です。
粒子を点でなくひも状に広がりを見せた存在とみなすことで無限大を回避した、というのがアイデアの根幹です。

過去に近い話はしたので、そのあたりの話は過去投稿を引用して超流しておきます。

上記から、超ひも理論の系譜だけ再掲しておきます。

出所:上記記事


まず、なぜ「超」がついているのか?を先にすっきりしておきます。

素粒子の標準模型では、電子・陽子など我々にとって相対的になじみ深い物質を表す「フェルミオン」と、それらに力を伝える「ボゾン」とに大別されています。

元祖ひも理論は、このボゾンの振動を説明したもので、これをフェルミオンにまで広げて、この2つの対称性を唱えたのが発端です。(まだまだ話はひろがります)

ポイントは、「超空間」という概念を導入してそこでフェルミオンが振動すると定義することで交換可能にしたと思ってください。

ただ、これは極めて難解な数学で、誰が計算しても異常な結果ばかりが出てきました。例えば0で割って無限大になるみたいな感じです。

それを解決したのが、ジョン・シュワルツとマイケル・グリーンで、特にシュワルツはまさに孤軍奮闘で超ひも理論に立ち向かった方です。

そしてその結果で興味深いのが、
異常値にならないためには「10次元」でなければいけない
ということを数学的に示したのです。

我々は、3次元空間+1次元時間、という4次元世界で日常を過ごしています。では残りの6次元はどこにあるのでしょうか?

彼らが出した答えは、「小さすぎて見えない空間」(専門的にはカラビ・ヤウという元々ある数学上の空間)が追加で存在しているということです。

例え話でいうと、ロープを遠巻きに見ると1次元ですが、その上に虫がへばりついていると2次元に見えるという比喩です。

いずれにせよ、我々には感知できない微小な空間があり、そこで「ひも」状の最小単位が作用しているというわけです。

この発表は今まで見向きもしなかった方も含めて話題を呼び、バブル現象が生まれます。

今回導入した微小空間は解釈による定義(要はルール設定)が可能で、また、やっかいなことにひもにも閉じたもの(輪ゴム状)と開いたものの2種類に分かれたりまたその動き方にもある程度定義の余地があります。

つまり、「超対称性」という大きなアイディアは歓迎されたものの、その自由度に応じて5種類の超ひも理論が生まれるという、唯一無二の万物理論候補のはずが複数生じるという奇妙な事態に陥ります。

ここで颯爽と登場したのがエドワードウィッテンです。

この方は物理学者としても高名ですが、数学のノーベル賞と呼ばれる「フィールズ賞」も受賞した「超」天才です。


ウィッテンはなんと、これら5つの超ひも理論は「数学的に1つにくくられる」という驚くべき説を唱えました。

これは「M理論」と呼ばれています。

Mの由来は若干濁してますが、1つ言えるのは「ひもを1次元でなく2次元膜(membrane)」としたことです。
つまり11次元の新理論で、そこから5つに分かれた10次元超ひも理論を全て導くことが出来たのです。

確かに歴史を振り返ると、「1次元のひも」も1つの仮説で、そうでなければいけない理由はどこにもありません。たまたまうまくいっただけです。

言われてみると、ある意味コロンブスの卵のような発想です。

そしてもう一つ、違った角度からの援護射撃がありました。

改めて超ひも理論の期待値を思い出してください。4つの力のうち「重力」だけが「素粒子の標準模型」では取り扱えませんでした。

そして逆に、重力を取り扱った重力方程式(一般相対性理論)があり、それまでも、我々が常識としてきた3次元空間では解かれていました。

実は、この方程式も3次元でなければいけない理由はありません。

主にタウンゼントという科学者が中心となって、なんと「10次元空間(時間を加えると11次元)にすると2次元解でなければいけない」ことが分かっていました。

なんとなくうっすらとみえてきたでしょうか?

実はこれら2つの別々の流れは繋がっていることが分かったのです。

これまでバラバラと思われていた研究分野かつそこから派生した枝に対して共通の幹を発見したイメージで、これで改めて万物の理論としての可能性が持ち直したことになります。

これをして第二次超ひも理論革命と呼ばれることもあります。(もはや紐が中心ではないので変な語感ですが)

今ではM理論自体も発展を見せていていますが、いったん超ひも理論の香りを引き立てる意味でとどめておきます。

いいことばかり触れたのですが、もちろんまだまだ課題は山積です。
特に「どう検証するのか?」は、どうしても自然科学である以上避けては通れません。

1つの間接的な検証方法としては、元々の仮説にある「超対称性を持った粒子の発見」です。

これは実は比較的検証可能な部類で、そのなかでも暗黒物質「ダークマター」の候補もこの超対称性を備えた粒子です。

これは日本含めて国際的な検出合戦が地上・宇宙空間で繰り広げていますので、ぜひこの言葉で検索してみてください。

最後に書籍の紹介で終わります。

例えば、なぜ10次元でなければいけないのか?など、もっと知りたい方は下記の一般向けがとても分かりやすいです。

最先端の研究を追いかけるのは難しいですが」、一般メディアに載るぐらいの趨勢は今後も楽しくお伝えしていきたいと思います。

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