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幻覚の科学ばなし

前回、ハルシネーション(幻覚)について触れました。

もう少し、幻覚作用について補足しておこうと思います。念のため注記しておくと、LSDは日本でも(おそらく大半の国?)1970年には麻薬指定されています。その科学的な視点での歴史をつづるという話です。

前回触れたとおり、1943年にホフマンが見つけたLSDを「偶然」体内に摂取して幻覚作用を体験しました。

LSDは、強烈な作用を有するドイツ語の略称で、かつ元々研究開発していた物質の25番目の系列であることから、正式には「LSD-25」と呼ばれます。
Wikiからその化学式を引用しますが、ホフマンは「この構造式には以前気づかなかった何かがある」という直観が働いて研究を再開したそうです。

出所:Wiki「LSD」内の画像

その結果偶然摂取してしまったわけですが、その後も自身の体で実験を試みますが、その結果これが当時最も強力な精神活性物質であることが判明します。当時の常識で安全と思われていた量を試したそうですが、それでもなかなか度胸のある方です。。。

経緯はともあれ、わずかな量でここまで精神に強く作用するという現象は、当時の脳科学者にも影響を与え、セロトニンという神経伝達物質の発見にも影響を与えたそうです(参考文献より)

セロトニンについては過去にも取り上げたので、基礎説明は割愛しますが、幸福感や、近年では逆に不安感を高めることで知られています。

上記Wikiによると、LSDはどうもこのセロトニンと化学反応することで幻覚を起こさせているのではないか?と考えられているようです。

そして、その幻覚の科学研究で重要な分岐点は2006年といわれています。(参考文献の意見を借用)

この年はホフマンの生誕100周年で、本人自身もその会に矍鑠(かくしゃく)として登場して、自身の研究に関する意義を唱えます。(亡くなったのはそのわずか数年後)

それはあくまで話題ですが、重要なのは同年に発表された、精神科医ローランド・グリフィスの論文です。

そこではプラシーボ(要は偽薬効果を排除)も組み込んだ客観的な実験事実を通じて、幻覚剤の精神医学的な効果を示しました。

1つだけ、グリフィス氏のインタビューも載った記事を紹介します。

この論文の影響で、それまでは麻薬としての毒物的な扱いだったのが、精神医学としての視点も真剣に議論されるようになったわけです。

そのグリフィスに共感し、精神医学としての幻覚物質の研究発展に影響を与えたのがボブ・ジェシー(当時IT業界のOracle副社長)とリック・ドブリンです。

二人とも科学者ではありませんが、幻覚作用物質は人類にとって正しい用途もあるのではないか?と感じて活動する中で、グリフィスにめぐり合います。

そして幻覚物質は、医療という新しい用途に向けた道にも進んでいくことになるわけです。

<参考リソース>

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