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マーケターがビジネス記事をnoteで有料販売するなら、いくらが妥当な価格かマーケティングリサーチで分析・検証してみた|リサーチ入門篇

こんにちは、マーケティングリサーチャーの出下(イデシタ)です。
前回の投稿からかなり期間が開いてしまいましたが、久しぶりに投稿してみようと思います。

▎今回お話するコンテンツ

今回のコンテンツは、
マーケティングのHOW部分にあたる4Pの 「Price(価格)」についてです。

より身近にリサーチを感じてもらえるよう、皆さんになじみのある「note」を題材として、ビジネス領域・特にマーケティングに関する記事って有料でいくらの値付けをすると受容されるのか、その買ってもらえる価格帯っていったいいくらぐらいなんだい?ということを消費者側からの視点でリサーチを用いて検証・分析してみました。

おもしろそうな題材ですね。

今回、オンライン上でつながりがあり、Twitterで16000人超のフォロワー数をかかえ、マーケティング関連の記事や投稿を多くされている、元DeNA、現在はご自身でHAIRTECT(ヘアテクト)というAGA領域で起業されている、西村マサヤさん(@masayaquality)から了解を頂き、彼のマーケティングについて書かれたnoteで検証してみました。

さてさっそく見ていきましょう!

▎マーケティングミックスのPrice(価格)

本題に入る前に、マーケティングミックス(Marketing Mix)について、
いくつか書かせてください。

マーケティングミックスはマーケティング実践プロセスフェーズのHOWにあたり、望ましい反応を市場から引き出すために、マーケティング・ツールを組み合わせること、その中でマーケティングの4Pはご存知のとおり、

Product(製品)
Price(価格)
Place(流通)
Promotion(プロモーション)

の4つを指します。

(マーケティングフレームの戦略立案・戦術実践プロセス)

「4P」のフレームは、マーケティング学者・エドモンド・ジェローム・マッカーシーが1960年に提唱しフィリップ・コトラー等が使っている有名な分類で、「4P」を用いてよくマーケティングミックスが語られています。

「4C」のフレームは、広告学者・ロバート・F・ロータボーン教授によって1993年、買い手側の視点による「4C」という分類がなされました。

Customer Value(価値)
Cost(顧客コスト)
Communication(コミュニケーション)
Convenience(流通)

から構成されます。

もともとあった4Pに対して、買い手の視点から再定義したのが4Cです。
そのため4Cと4Pはそれぞれの要素が対応しており、この2つの観点を軸とした上でマーケティング戦略を練っていくことが重要です。

(マーケティングミックスにおける4Pと4Cの位置づけ)

その中で、Price(価格)は、企業にとっては利益の元ともなる重要な要素となります。と同時に顧客にとってはCost(顧客コスト)として購入時のハードルとして作用します。

安すぎても利益が出ませんし、高すぎると買ってもらえません。
当然の事ながら「価格を適正に決める」ことは企業の利益を最大化します。

今回は、その価格決定という重要な部分についてフォーカスして、紐解いていきたいと思います。

▎ 価格戦略とは何か

書く必要もない気もしますが、まず前提として、
<価格とは・・・>

  • 消費者は通常、商品のベネフィットと価格を考慮に入れ、さらに他商品と比較をしながら購入をするのが一般的。

  • 価格は、単に商品の価値はどのくらいか、どのくらいの売上をもたらすか、利益はどのくらいかというものを表す数字ではなく、広告や、店舗の雰囲気等と同様にそれ自身が生活者の間に商品のイメージを創出し、生活者に満足を与えるという役割を持っている。

  • 価格設定の問題では、価格を下げれば販売量が増えるという単調な関係を想定するのではなく、商品のイメージやコンセプトとのコンテクストでも考えていくということが要求される。

その上で、
製品戦略 = Product ⇔ Customer Value
プロモーション戦略 = Promotion ⇔ Communication
流通戦略 = Place ⇔ Convenience
価格戦略 = Price ⇔ Cost

と、マーケティング基本戦略で言うところの、価格戦略=Price/Costにあたり、「いくらでお客様に提供するか⇔いくらなら受容されるのか」価格設定していくことを指します。

マーケティングミックスの中で、「価格」が最も操作しやすいと言われることもあり、他の要素(製品、チャネル、プロモーション)と切り離されて設定されていることも多いといわれたりします。

しかし、価格を上げることはコストを下げるよりも利益に直結しやすいのも事実であり、「コスト削減だけではなく、1円でも高い値段をつけることが重要」です。

かなり前のものになりますが、
マッキンゼーが「平均的な」企業を調査した結果、

固定費を1%削減すると ⇒ 利益額  2% アップ
販売量を1%増やすと  ⇒ 利益額  3% アップ
変動費を1%削減すると    ⇒ 利益額  8% アップ
価格を1%値上げすると    ⇒ 利益額 11% アップ

といった結果もあります。
しかしこれがなかなかできないのが実情ではないでしょうか。

昨今では、サービスによっては「ダイナミックプライシング(価格変動制)」を採用する企業も見られます。
(※ダイナミックプライシング:商品・サービスの提供価格を需要と供給などの状況に合わせて変動させること)

テーマパーク・航空・旅行・ホテル業界などでは閑散期や繁忙期などで価格が変動するのはこのような戦略を元に実行されているケースが身近ではなじみがあるかと思います。
最近では、AmazonやアリババといったECプラットフォームでも実施されるケースが増えてきました。

価格戦略においては、マーケットに新製品を投入した初期に低価格を設定し、早期に市場シェアの獲得を目指す「ペネトレーション・プライス(市場浸透価格)」をとる場合、価格弾力性(図参照)が大きく、需要が価格に左右しやすい製品で用いられます。

販売量を増加することで規模の経済性に伴ってコストを低下させるのが狙いであり、大手企業が取りやすい戦略かと思います。

一方で「スキミング・プライシング(上澄み吸収価格戦略)」のように、新製品を市場に投入した初期に高価格を設定し、収益を確保する、といった価格戦略をとる場合もあります。
特に価格弾力性が小さい需要が価格に左右されない製品やカテゴリーなどで用いられるのが特徴で、市場の成長にあわせて徐々に価格を低価格にしていくことが多い、といった戦略上の価格決定方法もあります。

(需要の価格弾力性について)


▎価格の3つの側面と価格の決定方法

ここでは価格を3つの側面と価格設定方法についてみていきます。


❶ “コスト”の側面からみた場合
· コスト志向型価格・・・生産者側からみた価格

  ・利益 = 価格 - コスト
  ・適正な利益を得るためにはコストとバランスをとり価格を決定しなければならない。

「コストプラス法」 価格 = 原価 + 希望利益額
「マークアップ法」 価格 = 原価 × (1+希望利益率)
のように算出することが多いかと思います。

こちらは、利益額(率)は確保できるが消費者視点の価格となるとは限らず、競合の価格を考慮していません。

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❷ “需要”の側面からみた場合
· 需要志向型価格・・・消費者側からみた価格

 ・価格は、消費者の購入決定を左右する。
 ・知覚品質に関するメッセージも発信できる。

「限界分析法」:限界収入=限界費用のときの価格(経済学上の理論値) ・・・ ただ非現実的

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❸ “競争”の側面からみた場合
· 競争志向型・・・企業間の競争の側面からみた価格

・自社の価格は、他社の価格戦略へ影響を与える。
・「どんな競争をしようとしているのか」についてメッセージも発信する。

競争企業の価格を模倣したり、少し安くしたりして設定する方法
⇒(“需要”と“競争”の側面を少し読みかえて)購入者志向型の価格設定を探ります。


消費者は通常、商品のベネフィットと価格を考慮に入れ、さらに他商品と比較をしながら購入をするのが一般的です。
⇒ 価値志向型価格設定方法

方程式で表すと以下のように表現できます。

(ヴァリューリフレイミング)

また価格という概念は、
消費者の中では以下のような概念図として描くことができます。

(価格の概念)

ここでいう参照価格というのは、2つに分かれます。

・【内的参照価格(値頃価格)】
  過去の経験などにより、頭の中で形成された価格

・【外的参照価格(小売り希望価格、競合品価格他)】
   頭の中以外にある参考にする価格


フィリップ・コトラー/ケビン・レーン・ケラー著の「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント第12版」の『消費者心理と価格設定』の中で以下のように語っています。

消費者は、過去の購入体験、公式なコミュニケーション(広告、セールス、パンフレット)、非公式なコミュニケーション(友人、同僚、家族)、購買時点あるいはオンラインの情報から得た知識に照らして価格を解釈しているのである。

消費者は、価格をどう知覚したか、実勢価格(マーケターが提示する価格ではなく)をいくらと考えるかをもとに購入決定を下す。
それ以下だと品質が悪く受け入れられないと感じる価格の下限、それ以上だと高すぎて金を払うに値しないと感じる価格の上限を持っている事もある。

 参照価格:これまでの研究によれば、消費者は価格の幅に関してはかなりの知識を持っているが、意外にも徳の製品の正確な値段を覚えている人はほとんどいないのだという。

しかし消費者は製品を吟味する際に、【参照価格】を用いている。
目の前の価格を検討するときに、消費者は内的参照価格(記憶にある価格情報)と外的参照価格(「定価」表示など)に照らして比較することが多い。
いかなるものでも参照価格となり得る。

例えば以下である。
・妥当な価格(製品にかかると思われるコスト分)
・一般的な価格
・前回払った価格
・上限価格(保留価格:多くの消費者が支払う最大価格)
・下限価格(最低価格:消費者が支払う最小限度)
・競合他社の価格
・将来期待される価格
・通常の値引き価格

※出典:
Russel S Winer, “Behavioral Perspectives on Pricing : Buyers’ Subjective Perceptions of Price Revisited,” Issues in Pricing : Theory and Research, edited by Timothy Devinnery (Lexington, MA : Lexington Books, 1988)

売り手は参照価格を操作しようとすることがよくある。
例えば、自社製品を高価な製品の中に置いて、同じ製品クラスに属しているという印象を与えることができる。

百貨店では婦人服を価格帯によって別々の売り場に陳列している。
したがって、高額品の売り場にある服は品質も高いとみなされる。

メーカー希望小売価格を高く設定したり、製品の本来の価格はもっと高いことを示唆したり、競合他社の価格は高いと指摘したりすることで、参照価格の判断を促すこともできる。

消費者が1つないしはそれ以上の準拠枠を引き合いに出すとき、知覚される価格は提示された価格と異なる場合がある。

参照価格の研究によって、知覚した価格のほうが提示された価格よりも低いという不快な驚きを受けた場合は、「快い驚き」を受けたときよりも購買するかどうかに大きな影響を与えることがわかっている。
コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント第12版


また、日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)前会長/ヨーロッパ世論・市場調査協会日本代表で、現在楽天インサイトの顧問を務めていらっしゃる(2021年12月時点)、三木康夫さんは、内的参照価格・外的参照価格について、「価格と消費者心理」の側面から以下のように語っています。

消費者は購入しようとしている商品の価格が「高い」、「安い」、「妥当」をどのように判断しているのでしょうか?

消費者の価格の知覚とは、商品の販売価格に対して感じる「高い」とか「安い」、あるいは「妥当」といった評価のことです。

対象となる商品の価格評価は、消費者が抱く「期待価格」(内的参照価格といいます)を基準として、実際の販売価格の差によって生じます。
この期待価格のことを「参照点」(Reference point)ともいいます。

内的参照価格は消費者がその価格が妥当かどうかを判断する際に基準となる、自分の経験に基づく記憶の中の価格です。

言い換えると、その人にとっての「値頃感」です(内的参照価格に対応する概念として、「外的参照価格」があります。

これはメーカーの希望小売価格、当店通常価格など外部で参照される価格情報のことです)。

消費者は購買決定にあたり、まず
1.商品の価格を見て
2.自分の内的参照価格に照らし合わせ
3.高い、安い、妥当(もちろん品質も加味されます)を判断し
4.自分の判断に確信があれば
5.購買の意思決定に至ります


自分の判断に自信のない場合は、他の商品の価格を調べ(外的参照価格)、上記の3.以下の過程を繰り返します。
このプロセスを繰り返していくうちに内的参照価格は更新され確信になっていくのです。
価格と消費者心理より
https://insight.rakuten.co.jp/knowledge/column/vol18.html

以上のように、
参照価格には2つの側面があることが分かったかと思います。

価格の決定に際しては各種の方法がありますが、それらの詳細な説明は専門家に任せるとして、ここでは先に提示した➊~➌のうち、消費者に意見を聞く価格調査をリサーチで導き出せる方法の➋と➌について触れていきたいと思います。
➊ “コスト”の側面からみた場合:コスト志向型価格(生産者側視点価格)
➋ “需要”の側面からみた場合:需要志向型価格(消費者側視点価格)
➌ “競争”の側面からみた場合:競争志向型(企業間競争側面視点価格)


▎価格設定におけるリサーチでの測定方法

実際のリサーチでは、
各価格設定方法別に消費者に確認する内容・方法は異なります。

以下、価格に関する調査には、大きく4つの方法があります。

  • 【直接質問法】
    「いくらぐらいから買っても良いか」など直接質問する方法

    実際の購買を想定してないため、事実とは異なる回答となる可能性が高く、「予算の幅」も考慮されていない

  • 【受容価格帯解析分析法】
    PSM
    (Price Sensitivity Measurement)
    PRICE2
    (Price Reasonability Index by Comsumer's Evaluation2)
    DAPP
    (Dicision of Allowable Purchase Price):購入許容価格の決定
    (※DAPP:マーケティングリサーチの論理と技法第3版 より)
    ・金額を直接聞くのではなく、価格イメージ・価格観を質問する方法
    ・累積分布から「購買可能曲線」「最低価格曲線」「妥当価格曲線」
    「最高価格曲線」の4つの曲線を求める

  • 【コンジョイント分析】
    (CBC:Choice-Based Conjoint Analysis + HD(階層ベイズ法))
    ・仮想の店頭で価格変化が購買行動に与える影響を明らかにする調査手法
    ・自社/他社商品の価格と販売量の関係を分析・予測する
    ・ウェブ画面上に仮想店舗を再現し、ブランド、スペック、価格
     といったトレードオフ関係を考慮しながら、価格の受容度を測定する
     価格決定の調査方法として、欧米では広く使われている

  • 【競合との価格感度測定法】
    自社商品の価格弾力性や競合商品との関係性などを把握することができる
    具体的な手法に「VRC」がある

    ※VRC:インターネット上で模擬購入実験を行い、自社や他社の製品の価格変化が販売量に与える影響を綿密に分析・予測する調査手法
    ※その他、以下の方法などがありますが、ここでは説明は割愛します。
    ・価格実験(テストマーケティング):
     実店舗で異なる価格を設定し、販売量の違いを検証する方法
    ・STM(シュミレーテッド・テスト・マーケティング):CLT(Central Location Test:会場調査)で仮想店舗を設置し価格変化に対する反応を分析する方法


いずれの方法にも、メリットデメリットがあり、一概にどの方法で調査をするべき、ということはなく置かれた状況によって適切な方法で採用していけばいいと思いますが、価格を決定していくだけでもこのような方法が存在する、ということが理解できたかと思います。

今回はその中でも最も費用がかからず、かつ、迅速に実施が可能なPSM・Price2について触れていきたいと思います。


▎PSM・PRICE2分析とは

先ほど説明した通り、2つの分析は以下を指します。

・PSM分析
・PRICE2分析

PSMとは価格決定の戦略において広く知られている既存の分析手法です。
一方でPRICE2はPSMを発展的に改良することで、PSMや一般的な価格調査の問題点を解消したマクロミル社独自の調査・分析手法です。

消費者がもつ価格イメージから「購買可能価格」、「最低価格」、「妥当価格」、「最高価格」の4つの曲線を求め、売上高や利益額の最大化、ブランドポジショニングの構築など、マーケティング戦略の立案や目標達成に向けた最適価格の決定を行います。

▎どのような特徴のある分析なのか

消費者一人ひとりが以下のような価格感の帯を持っていると仮定し、これら4つの質問によって価格感の境界線を明らかにします。
多様なマーケティング戦略に対応するために、更に購買可能な価格(購買可能曲線)について、下記の3つの価格感に分解し、詳細を確認します。

(消費者の購買可能曲線)

▎どのような時に用いるのか

  • 新たな商品に対する消費者の価格観を知りたい

  • 現行商品に対する消費者の価格評価を知りたい

  • 現行商品の価格や価格表示を改定したい

▎どうやってリサーチで聴取するのか

  • 「高いと思う価格」

  • 「安いと思う価格」

  • 「高すぎて買えないと思う価格」

  • 「安すぎて品質が疑わしいと思う価格」

上記4つの質問を聞くことで分析が可能となります。

(実際のアンケートでの質問方法)

▎どのようなことができるのか

  • 消費者が持つ価格イメージから最適な価格を決定する金額を算出します

  • 市場で受容される最適価格や高グレード商品の最高価格、バーゲン販売する際の最低価格などを消費者の価格観から算出できます

(実際のアウトプット例)

出典:マクロミルホームページより
https://www.macromill.com/service/data_analysis/price2.html


このようなステップを経て、ターゲットの価格評価をもとにした市場で許容される最適な価格を算出し、価格戦略に落とし込むという事がこの分析の目的となります。

上記のアウトプットは、
調査テーマとして、以下を想定したものになります。

  • 飲料メーカーA 社は、新たに発泡酒市場への参入を検討している。

  • 発泡酒はほとんど同じ価格で販売されているが、単純に他社と同じ価格設定にすればいいものなのだろうか?

  • ターゲットの価格観を根拠とした、最も適正な価格設定を行いたい。

といった感じです。
なんとなく理解できたでしょうか。
さて、長々書いてきましたが、最後の章になります。

▎マーケティング記事を「note」で販売する場合いくらで受容されるか検証してみた

今まで説明をしてきました通り、
価格を決める際にはいろいろな方法があります。

そこで、この後の章では、実際に「note」を有料で販売する場合、果たしていくらぐらいで販売すると、より購買してもらえるのかという視点で、題材としてビジネス領域・特にマーケティング系の記事って有料でいくらの値付けをすると不快ない価格帯で買ってもらえるのか、その受容される価格帯っていったいいくらぐらいなんだい?ということを消費者側からの視点でマーケティングリサーチを用いて検証・分析します。

先ほども説明した通り、今回はオンライン上でもつながりがあり、Twitterでのフォロワー数が16000人超のフォロワーを抱え、マーケティング系の記事や投稿をされている、元DeNA・マーケター、現在はご自身でHAIRTECT(ヘアテクト)というAGA領域で起業されている、西村マサヤさんのマーケティングに関するnoteをもとに検証します。

ご本人は事前に了承を取っていますので、ご安心を。

さて本題です。
その前にタイトルを多少盛っている点、ご了承ください。

実際は、記事内容(価値)によって価格はもちろん大きく変動しますし、汎用的な価格、というのは存在しないのでその都度リサーチを行う必要がある、ということになります。

今回題材とさせていただいたのは、西村マサヤさんのマーケティングのnoteをもとに検証をしたということを事前に改めてて記載しておきます。

今回検証したのは、以下の記事です。
実際に既に販売されていますね。

価格は1,400円で販売されています。
攻めた価格かなと個人的には感じました。

そして、以下の提示記事に対して、この記事を有料で買うとしたらどうか、という先の価格決定の戦略において広く知られている分析手法に用いる設問をアンケートで聴取しました。

対象となっているセグメントは、オンラインサロン等、ビジネス・特にマーケティングの書籍や学習・スキル習得にお金を実際に支出している10代~20代の方(学生や社会人数年目の方が多い)であり、実際にアンケートが回収できた、計39名です。
(統計上、参考値扱いはギリ超えてる)

比較的、ビジネスの現場にこれから立つ方、もしくは就職してまだ数年の若い方が属性の特徴となっています。
そして実際アンケート上で以下の提示物を示して、以下の質問をしました。

(アンケート上で提示したnoteの記事タイトル)

聴取設問:
Q.このnoteをいくらぐらいから「高い」と思いますか?
Q.このnoteをいくらぐらいから「安い」と思いますか?
Q.このnoteをいくらぐらいから「高すぎて買えない」と思いますか?
Q.このnoteをいくらぐらいから「安すぎて品質が疑わしい」と思いますか?

今回は、PSMでもいいのですが、より価格帯の幅まで見ていこうということでPrice2という手法をもとに分析を行いました。

39名と少し心もとないサンプルではありますが、以下が結果です。

Price2を用いた分析結果

ここから得られた結果としては、
最も受容される割合が高まるのは、“価格帯が600〜900円台”の時です。

妥当と判断される「妥当価格帯」で見ると、“700〜900円台”となっており、僕はこの指標を特に大事にして確認します。

900円~1,000円に至る間に、いわゆる「価格の壁」というのが存在し、折れ線グラフが一気に落ち込む部分があるのが確認できると思います。
これは、それ以上の価格だと受容される割合が一気に落ちる、ということを指しています。

従ってデータからわかるとおり、価格は900円~1,000円未満で設定することが購入される確率を最も高められる価格帯である、ということが理解できるかと思います。

ここで、「価格の手がかり」として、「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント第12版」でも「第5部市場提供物の形成・第14章 価格設定戦略と価格プログラムの策定 価格設定の理解:消費者心理と価格設定」の部分で取り上げられているのですが、著書の中で以下のように言っています。

“価格に対する消費者の知覚に影響を及ぼす価格設定戦略がもう一つある。価格は端数で終わらなくてはならないと思っている売り手は多い

顧客の多くは、ステレオ・アンプに300$ではなく299ドルという値がつけられていれば、300ドルの価格帯ではなく200ドルの価格帯だと考える

研究によれば消費者は価格を四捨五入ではなく「左から右に」読んだままとらえる傾向があるという。
もし四捨五入されると心理的に高いと感じるのであれば、このような方法で価格を符号化することは重要である。

「9」という端数で終わることは、それが割引やバーゲンの印象を与えるということからも説明できる。
しかしこの場合、企業が高価格のイメージを望むなら端数で終わる戦術は避けるべきである。

ある調査では、洋服の価格を34ドルから39ドルに引き上げると実際に需要が3分の1も伸びたが、34ドルから44ドルに引き上げた場合は受容に変化が見られなかった。

「0」や「5」で終わる価格も市場で見られるが、これは消費者にとって理解しやすく覚えやすいと考えられているためである。

また価格の隣に「セール」の表示をつけると受容が急に伸びることが分かっている。ただし濫用しなければ、の話である。

あるカテゴリーの製品に、全部ではなくいくつか選んでセール表示をつけるとカテゴリー全体での売上は最高になるが、セール表示をするアイテムが一定数を超えると、カテゴリー全体の売上が落ちてしまう。“
コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント第12版

ここでのポイントは、消費者は端数に対する認識を上記のようにしているという事であり、「1,000円」で販売されるのと、「980円や990円」で販売されるのでは心理的に大きな壁や印象を与えてしまうということです。

Price2での分析で単位を10円区切りで切っても受容される割合の傾向が変わらないこと、上記心理的な点を考慮しても、900円ではなく、980円でも変わらない価格受容率ではないか、と想定できると僕は考えています。

またもう一つの考えとして、「最高価格帯」の折れ線をご覧いただくとわかりますが、最大でも1,400円で販売する、という攻めの、強気の価格設定をとる、という判断も考えられます。

実際にこちらのnoteは1,400円という強気の価格設定となっています。

データからもわかる通り、1,400円~1,500円の間にも同様に「価格の壁」が存在しているため、1,500円以上だと一気に受容が落ちます。
結果、買ってくれる人が一気に減る、ということです。

これは高価格帯を狙った場合の価格であり、通常は「妥当価格帯」である700〜900円台を狙うべき、という視点がセオリーかと思います。

ここでも注意が必要ですが、一様に1,400円が良いわけではなく、西村マサヤさんだからこそ、この価格でも売れている、という西村マサヤさんが今まで築き上げてきたEquity(エクイティ)が大きく影響していると個人的には思います。

その彼が行ってきた行動は、「感情や信頼」と結びついているはずで、Twitterでも多くのフォロワーがいて、noteも多く購読されている西村マサヤさんが持ちうる、Equity(エクイティ)でこの価格である、ということも理解しておく必要があるのだろうと思います。

皆さんが一様に、この価格で売れるか、というと実際はそうではないのでその点は留意が必要です。

Equity(エクイティ)が高い(と消費者が感じているからこそ)から、この価格でも釣り合うのであって、単にEquity(エクイティ)を高めることを疎かにしたうえで、価格のみ引き上げてもValue(価値)は低いままです。

そのためにも、より有益な情報を発信(=実績・結果)し、そういった人物であるよう自身をブランドに見立て、そのブランドEquity(エクイティ)を作り上げること(=イメージ・印象・信頼)、それらを見てもらうべき人たちに見てもらうこと(露出・発信・共有)が非常に大切だと感じています。

そこがあるので、強気の価格でも一定受容され、この価格でも買う人たちがいる、ということなのではないかなと。

▎検証結果まとめ

結論:
この今回提示したタイトル記事では、「700〜900円台の価格帯」で販売するのが妥当だと判断できます。
特に価格の端数を考慮しても、「980円」での販売が最も適した価格ではないかと推察されます。

大雑把に言えば「妥当価格帯」は、厳しい目で見た場合の受容価格帯であり、一方で「最適価格帯」は少し楽観的に見た価格帯だと解釈してもらえるとわかりやすいかと思います。

ここで注意が必要なのは、以下です。

【注意すべきポイント】

①    この結果は、購入意向が加味されていない
→ 本来は該当ブランド・サービス、今回で言えばコンテンツの購入意向者に対して分析を行うのですが、サンプル欠損の可能性を考慮し、データを絞って分析をしていない

②    ある程度ビジネス商材に対して支出のアレルギーがない層のため、バイアスがかかった結果である可能性
→ このようなセグメントは、ビジネス系の本やサロン、コンテンツにあまり躊躇わずに支出する傾向があるので、そのバイアスが多少はかかっている可能性がある(リサーチ対象となる呼集する標本が非常に大切である)

③    同様のマーケティング関連のnoteでの有料コンテンツと相対的に判断していない
→ 実際の現場では、競合の販売価格と見比べて判断することが多いので、例えば今回のケースでは他のマーケティングを題材にした有料noteがいくらぐらいで販売されているのかサーチしたうえで結果を判断する必要があり、あくまで今回の結果は提示したコンテンツのタイトルのみでアンケートで聴取している

④    西村マサヤさんという独自の価値を持った方であり、多くの情報を自ら発信し、一定の方々に支持されていてそのブランドがバイアスを生んでいる可能性があること
→ 既に一定の認知・フォロワーがついており、その上でのnote有料販売をしても認知のすそ野が広く、興味関心の高さがあるので、結果として買いたいと思う人たちが一定数存在している記事である

といった点が挙げられます。

特に①は非常に重要で、購入意向者に対しての価格帯を確認するべき、というのは基本中の基本、セオリーです。
しかし今回はその点をしっかりとフォーカスして結果を(サンプルの観点から)見ていないのですが、そこと同等の支出可能者を見立てて分析を行っているので、対象者次第でもちろん結果に違いが出る可能性があるかもしれませんね。

いずれにしてもPrice2で価格感度を問う一連の流れが理解できたのではないかと思います。

▎最後に

以上、今回価格ってどのように決めればいいのだろうか、という点に着目して分析し、購買可能価格帯を算出してみました。

個人的な感想ですが、おそらくビジネスの中でもマーケティングに関するnote記事は1,000円以下が一般的だろうと思いますし、その価格帯が一番受容されるのだろうな、と感じました。

少人数でもいいから高い価格帯でターゲットにアプローチすべきか、それともある程度の受容可能な価格帯でより多くの層にリーチして購買してもらうか、判断は様々かと思います。

僕ならば少しでも多くの方に読んでもらい、今後も購入してもらうことも考えると、後者を選んで価格設定をしていくだろうなと思います。

その点、西村マサヤさんは強気の価格設定をしてターゲットにアプローチしているので、そこは考えの違いがあるのかもしれませんし、そこにかけた労力も影響してくると思いますので、そこらへんで判断しているのではないかと思います。

実際にお伺いしたところ、このnoteは過去の他note記事の販売実績との相対比較や、今回実際に当初想定していた目標購入冊数を上回っているとのことで、記事作成にかけた労力と設定した価格でバランスが取れているのかもしれません。

そこは最終的に消費者の声を聞いて、どう判断するのか、というマーケター側の視点や施策が試されるのだろうと感じます。

そこだけは消費者は答えを提示してくれませんし、どう決めていくのかは自身でジャッジしていかなければならない点は理解されているかと思います。

あくまで消費者は判断をするベクトルや方向性を指示してくれているにすぎません。

その点を理解したうえでリサーチを手段として使う、ということは忘れてはいけないと思っていますし、皆さんもそう思っていただければと思います。

そして今回、色々と細かい部分での反論や指摘があると思います。
私もその点を承知のうえで、緻密にやろうとすれば、色々とやりようがあることは理解しています。

ただ、今回の目的は、
(マーケティング)リサーチをより身近に感じてもらうこと、その上で価格を消費者側の視点を加味して、論理的に決定するプロセスをリサーチから導き出せるんだよ、という一つの手段と方法論を提示したかったので、簡易ではありますが、一連の流れを記事にしてみました。

できればリサーチを通じてより多くのビジネスマン、マーケターの方々がビジネスの成功確率を上げるための指針やノウハウ、プロセスを少しでも示せればと思っています。


いかがでしたでしょうか?

もし現在、価格設定や価格受容帯をいくらにすべきかと現在の仕事で直面していたり、またはリサーチでこういうことも分析でき、示唆として取り入れることができるんだ、ということが分かっていただけたのならばうれしい限りです。

そして最後に、この記事作成に際して事前に色々とご協力をしていただいた、西村マサヤさんにお礼を述べたいと思います。
ありがとうございました。(好き勝手書かせてもらいました)

マクロミルではこれ以外でも多様なビジネス課題をリサーチやデータで解決していけるパートナーとして日々お客様に向き合っていますので、是非お気軽にご相談いただければと思います。

それでは今回はここらへんで失礼します。
長々と読んでいただきまして、誠にありがとうございました。

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イデシタコウジ(デッシー)
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