マガジンのカバー画像

超短編戯曲・小説

27
超短編戯曲・小説を不定期に書き綴ります。
運営しているクリエイター

2021年9月の記事一覧

【超短編小説】もっと高く(300字)

【超短編小説】もっと高く(300字)

男は街の権力者。

男は自分の土地に、街で一番高いビルを建てようとしていた。

金にものを言わせ、ついに街一番のビルは完成した。

満足気な男をよそに、街外れにはビルより高い山がそびえ立っていた。

男は面白くない。

さらに金にものを言わせ、その山より高いビルを建てようとした。

山より高いビルが完成したが、男はそのビルよりも高い所にある雲が気に食わなかった。

男はさらに金にものを言わせ、雲よ

もっとみる
【超短編小説】ひとりになりたい(300字)

【超短編小説】ひとりになりたい(300字)

男はいつもの様に満員電車に揺られ、帰宅した。

男の家は四人家族で、昔使っていた書斎は子供部屋となり、自分の部屋は無くなっていた。

「ひとりになりたい。」

男は心からそう思った。

トイレに駆け込み鍵をかけてみたが、ポケットの携帯電話と、ノックの音が鳴り響いた。

男はどうしてもひとりになりたかった。

男は家を飛び出し、おもむろに地面に穴を掘り始めた。

携帯電話も投げ捨て、男は一心に穴を掘

もっとみる
【超短編小説】27クラブ(300字)

【超短編小説】27クラブ(300字)

27クラブという言葉がある。

27歳で他界したミュージシャン達のこと。

ブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン……。

27歳自称ミュージシャンの僕も、きっと彼らと同じ運命を辿ることになる。

天国でのセッションの時、英会話が必要なのではないか。

急に僕は思い立ったように英語の教科書を引っ張り出し、ページをめくり始めた。

その時ジャニス・ジョプリンは独特の声でこ

もっとみる
【超短編小説】キロ(300字)

【超短編小説】キロ(300字)

人生には岐路がある。

あの時こうすれば良かったと後悔することもある。

男が一人、岐路に立っていた。男の心にだけ響く声が聞こえる。

「一度だけ、過去のあなたの道を変えることができます。」

男は半信半疑だったが、変える道について考えてみた。

変えるなら、まず学校の選択だ。今度は猛勉強して良い学校に入って、良い会社に入るのだ。

そうすれば妻も子供も今より楽な暮らしができる。

男は妻と子供の

もっとみる

【超短編小説】カタツムリ(300字)

「ああ、もれる、もれる。」

男はいつもの様にトイレに駆け込み、便座に座って用を足した。

ほっとしたところで、ドアに一枚の張り紙を見つける。

「このトイレは自動爆発トイレです。便座を離れると自動的に爆発します。」

驚く男。

が、その時すでにウォシュレットの勢いが強すぎたため、立ち上がろうするのを必死で堪えていた。

何とか、ウォシュレットの電源を切る男。

「誰かの悪戯だろう。」

そう思

もっとみる