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【読書】人に「教える」ということ

こんにちは!アート王子です。
今日は僕のメンターでもある(お会いした事はないが)出口治明さんの新刊
『「教える」ということ 日本を救う、[尖った人]を増やすには』をご紹介します。
24年8月10日に発売されたばかりの新書です。

出口治明さんはライフネット生命の創業者で
現在は立命館アジア太平洋大学名誉教授・学長特命補佐です。
知識量が豊富で数多くの著書があります。
出口さんは著書でたびたび、"人間は『人・本・旅』でしか勉強できない"と仰っていますが、僕はそれに共感して勇気づけられたので、何冊か読んでいます。

どんな本?

この本は4章から構成されています。

第1章 後輩たちに「社会を生き抜く武器を与える」
第2章 根拠に基づいて話す。選択肢を与える
第3章 「尖った人」を生み出すための高等教育
第4章 正しい「人間洞察」を前提にした社会人教育

目次より

第1章〜第3章の末に出口治明さんと著名人との対談が収録されており、そこで話される、後輩(主に子供)に知っておいてほしい事を対談前のページに書かれています。その内容が、各章のタイトルになっています。
第4章は社会人を対象とし、主に上司や管理者に向けて話しています。

(1から3章の)対談内容は親や教育者をターゲットにしているかと思いますが、対談で出た"知っておいてほしいこと"を学生や学び直したい大人向けに出口さんが書かれています。
4章はマネジメント術とインプット方法が書かれています。

リスキリング(学び直し)したい社会人(というか、社会に出たら学ばない日本人"全員"向け)、勉強の面白さがわからない学生に特に刺さる内容になっています。

感想

人に教えるってめちゃくちゃ難しい事だと思います。ましてや、教え方を間違うと「パワハラ」だと言われかねない。
しかし、人手不足の現代日本では、効率良く働かないと共倒れして死ぬ。
けっこう難しい問題だと思います。
そのため出口さんはマニュアル化が大事だとおっしゃいます。
一筋縄ではいかない課題だと思いますが、確かにありだと思いました。

しかし、別の観点から見ると
「自分で学ぶ人は強い」という事に気づきました。
「学び方が分からない」「これで合ってるのか」という不安を少しでも解決してくれるような内容でした。
また「おわりに」で述べられている考え方がとても良かったです。

「おわりに」がめっちゃ良かった

…昔から僕は中途半端が嫌いで、すべての物事を「オール・オア・ナッシング」で考えています。
どんな本でも最初の5-10ページはきちんと読んでみて、その時点で面白くなければその本は読むのをやめます。おもしろければ一字一句、腹落ちするまで精読します。オールオアナッシングです。
お金を使う時も、オールオアナッシングです。食べることや本と旅が大好きなので、食費や旅費や本の購入にはお金を使う。けれども、それ以外の費用は節約しています。というか、興味がわかないのです。

p.258

…世界を変えることのできる尖った人材をひとりでも多く輩出する。僕の頭の中には、今、そのこと以外は何もありません。

p.262

70歳を超えて、時代の変化を敏感に捉えつつ、川の流れに逆らわずに、自分がいいと思うものにオールイン(全賭け)する生き様を感じました。
本書でも「尖った人が必要な時代」と仰っていて、そういう人を輩出したいという熱量がかっこいいです。

本書の面白かった点

面白かった点をメモがわりにまとめています。
気になる方は本を購入して続きを読んでみてください!

どのような気持ちで投票するか

『そもそも選挙は「より良い人」を選ぶための制度ではありません。…
イギリスの名宰相、ウィストン・チャーチルが次のように明言しています。
「自分を含めて選挙に立候補するのは、目立ちたがり屋やお金儲けをしたい人など、ろくでもない人ばかりである」
「選挙というのは、こういった信用のおけない人たちのなかから、相対的にマシな人を選ぶ忍耐のことである」
「したがって民主政は最低の政治形態である。ただし、これまで試されてきた王政や貴族政などの過去の政治制度を除けば」
…市民がすべきことは、忍耐を強いられながらも、「100%満足はできないけれど、他の候補者に比べれば、多少はマシ」な政治家を選ぶことです。』

p.43

僕は大阪市民なので、先の東京都知事選の投票権はなかったのですが
小池百合子さんには負けたものの、石丸さんや安野さんなど、ネットの力を使っての投票率が上がった背景が感じられる結果が出た事をこれを読んで思い出しました。
勝てないが無駄ではない、何年後かの布石になると思えば投票も楽しいかもしれません。
余談ですが、僕は"大阪都構想"実現してほしかったです。

財産三分法

『給与を「財布」「投資」「預金」の3つに振り分けるという法則。
財布→数日間の生活に必要なお金は財布に入れる
投資→「無くなってもいい金額」恋人へのプレゼント、投資信託の購入、自己投資
預金→いつもでも引き出せる"流動性のある"お金』

p.60

72の法則

『【72÷金利(成長率)≒元本が倍になる年数】
100万円を預けて、金利が1%の場合
「72÷1=72」なので、200万円になるのに72年かかる
…つまりお金を増やそうと思えば投資信託など元本の値段が変動する変動商品に頼るしかなくなる。』

p.62

ドルコスト平均法

『定期的に定額で投資信託や株を買っていく方法。
例えば
今月、価格が1万円の投資信託を1つ買いました。
来月、価格が5,000円に急落すると2つ買えます。
再来月、価格が2万円に高騰すると0.5しか買えません。
これを定期的にずっと繰り返していく。
…平均取得コストは時間の経過と共に安くなっていく。』

p.62

お金の話もめちゃくちゃ基礎を教えてくれています。銀行に預けていればなんとかなる時代は終わったので(銀行に100万円預けても、利息より物価上昇の方が早いので、翌年に引き出しても101万円とかが必要になる)、学校で教えてくれないお金の話はめちゃくちゃ重要です。

対談メモ 久野信之×出口治明

・度々「世界を動かすような、型破りの生徒を育てるにはどうすべきか」という議論が出るのですが、最初に型にはめないと、破りようがないわけですよね(久野)
・人間の向学心や好奇心は、18〜19歳にピークを迎えると考えられていて、この時に学習習慣を身につけておくと、大人になってからも学び続けるそうです。(出口)
・私の経験上、18歳よりも少し前、15歳から17歳くらいまでの間に学びを通じて大きな感動を覚えると、学ぶ習慣、学ぶ姿勢が一生続くと思います(久野)
・そういう(子供たちに本当の感動を与える)機会を与えたら、教師が教えなくても、子供たちは自然に学ぼうとするでしょうね。ですから「教える」ということは、ある意味では「場所を与える」ことなのかもしれないですね。(出口)
・学ぶという姿勢は、テクニックを暗記するだけでは身につかない。自分が腹落ちして見つけるものであって、人に教えてもらうものではないかもしれませんね。…人間はそれほど賢くありません。それなのに人間は傲慢になりがちで、「なんでも教えることができる」と勘違いしてしまう。まず、「教室や教科書では教えられないことが山ほどある」と自分の限界を認識した上で「ではどうすればいいのか」を考えることが大切だと思うのです。(出口)
・僕自身は子供に教えることは2つしかないと思っています。ひとつは人生の役に立つこと(お金の使い方、増やし方、投票の仕方、税金の考え方、社会保障)いわゆる「生きるための武器」。もうひとつが、どこでもいつでも、自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見をいえるように育てること。(出口)
・何事かを成すためには4つのPが必要。目的(purpose)、情熱(passion)、仲間(peer)です。もうひとつが決定的に重要で遊び心(play)です。

p.80

大学生になった時に授業そっちのけで、人生で1番本を読んだのが(漫画含め)18歳ごろだったからめちゃくちゃ納得しました。
ただしその根底にあったのが、高校が進学校で強制的に英単語や漢字を覚えされられたことが活きている気がします。
この対談を読んで再確認しました。

変態と偏差値でコースを分ける

『これからの社会で伸びる人材は、上司の機嫌を取ったり、すぐに社会に適応してしまう人ではなく、好きなこと、やりたい事をのびのびと追求する姿勢を崩さない人です。
偏差値に興味のある生徒は教科書に沿って学力を伸ばせばいい。偏差値に興味のない生徒は自分の好きな事を徹底してやればいい。絵を描くのが好きなら、絵ばかり描いていたらいい。漫画を描くのが好きなら、漫画だけを描いていたらいい。人間は全員顔が違うように、考え方も個性も違うのだから、「違って当たり前」という文化、社会を作るべきなのです。』

p.180

めちゃくちゃ自信になる言葉。
僕は頭が良くないので、偏差値競争より偏愛競争の方が向いている気がします。

マニュアル化は世界の常識

『日本は鎖国以来、同質社会が長く続いてきたので、暗黙の了解が尊ばれてきました。工場の生産現場ではそれでもよかったのです。同質性や協調性が重視されていましたから、空気を読んだり、気を遣い合ったりすることがよしとされました。
ですが、サービスが中心の社会では、暗黙の了解は通用しません。多様な人がアイデアを出し合って価値が生み出されていくため、暗黙の了解では誤解を招くだけです。』

p.222

日本人の得意の「同調」や「空気を読む」が足かせになってる可能性がありますね。
もうすでにそうなってますが、何かに偏愛している人が稼げる時代になっていますね。

アウトプットを生み出すには、「人・本・旅」によるインプットが不可欠(p.244-)

『サービス産業が中心となった今の時代は、斬新な発想やアイデアを生み出す必要があります。
新しいサービスという無形のものを生み出すには、さまざまな経験を積んで、発想力や柔軟性を養うことが大切です。
イノベーションやアイデアは、自分の仕事を深掘りするだけでは生まれないので、新しい情報を常にインプットしなければなりません。
…たくさんの「人」と出会い、たくさんの「本」を読み、たくさんの「旅」をして(現場に出て)、さまざまな考え方や発想のパターンに触れることが何よりも大切です。

p.244

①「人」から学ぶ
さまざまな脳が集まれば集まるほど、アイデアが生まれやすくなります。何事も混ぜれば強く豊かになるのです。ですから、自分とは異質な脳を持つ人に会うことが大切です。初対面でも臆せず、「まずイエス」で新しい人に会い続けましょう。
②「本」から学ぶ
…本を選ぶ基準は「おもしろいかどうか」だけです。
どうやって選んでいいかわからないときは例えば「店頭での立ち読み」「新聞の書評欄」「古典」など
③「旅」から学ぶ
「旅」=「現場」と言い換えてもいいかもしれません。真実は現場の中にしかありません。机上で考えるだけではなく、足を使って色々な現場に出向き、体験を重ねる事が重要です。

p.245

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