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#恋愛小説
『折り合い地点の恋』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2022年7月12日オンエア分ラジオドラマ原稿)
男「んーコイかな」
女「コイか」
男「コイっちゃコイね」
女「コイよねー」
僕たちは互いに恋して結婚に至ったわけだが、
いま言ってるのはその恋じゃなくて、
午前8時のお味噌汁の話し。
女「ちょっと濃いよねー」
男「うん、まあちょっとね。でも美味しいよ」
朝ごはんは変わり交代で作っている。
パンを焼いてコーヒーを淹れることが多いけど、僕もたまにお味噌汁を作る。
男「どう?」
女「ちょっとうす
『最後の恋は』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2022年5月24日オンエア分ラジオドラマ原稿)
何一つうまくいかない日、というのが人生には時々ある。
この日僕はフラレた。これが最後の恋だと思っていた人だ。
気がつくと僕は見知らぬバーのカウンターでひとり、ダイキリを飲んでいた。
ぽっかりと空いてしまった胸の空洞には、少し強めの酒を流し込む必要があった。
3杯目を飲み干し、席を立とうとした時⋯
女 「もう終わりね。」
後ろのテーブル席から声がした。
僕は思いとどまり、タバコに火をつける。
『この音』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2022年5月17日オンエア分ラジオドラマ原稿)
♪「プシュ」っという缶ビールの開ける音。
僕はこの音が好きだ。
この音を聴きたくて毎日生きていると言っても過言ではない。
♪また「プシュ」っという音。
それは言い過ぎたかもしれない。そして一本目を早く飲み過ぎたかもしれない。
仕方がない。恐ろしいくらいに喉が渇いていたのだ。
♪肉がジューっと焼けるような音。
この音もまたいい。
女「はい、砂ずり焼いたよ。レモン絞って」
いま死んでもい
『夏の夜空』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2022年4月26日オンエア分ラジオドラマ原稿)
同僚に誘われて海辺のバーベキューパーティーにやってきた。
西の空では、夏の太陽が、本日の仕事を終え
東の空では、夜空がスタンバイしている。
何人いるんだろう?
ざっと100人くらいだろうか?
その場に参加している人は、みなが知り合いというわけでもなさそうだがどこかで誰かが知り合いのようだ。
社交的な同僚は、いつものようにグループの中心にいる。
人見知りの僕には、彼のような真似はで
『無人島に必要なもの』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2022年4月19日オンエア分ラジオドラマ原稿)
(騒がしい店内。新歓コンパをしている大学生たち。)
「無人島に何かひとつ持って行くとしたら、なに?」
大学の新歓コンパで、まだ名前も覚えてない誰かがそう質問した。
みんな口々に答えていく。
スマホ、いや充電できないじゃん、とか。
男「えーっと、ナイフかなあ」
まあそれだよね、という微妙な空気が流れた後、彼女はそれを助けるように、
女「私は船」
といった。
いやそれはずるいじゃん、と彼女の
『いつものデート』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年11月9日(再放送:11月13日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
(騒々しい店内の定食屋)
店員「ご注文はお決まりですか?」
男「エビフライとヒレカツランチと、ロースカツとチキン南蛮ランチ」
店員「は、はい」
僕はいつもランチでは2食分頼む。
そして大体いつも、隣に座ったサラリーマンやOLたちに『そんなに!?』と驚いた顔をされる。
少ししたら僕の目の前には大量のカツが並んだ。
僕はベルトを緩めて、今ならひょっとしたら全部食べられるんじゃないかと思ったりする。
『秋の恋』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年10月19日(再放送:10月23日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
女「夏は男を少年に戻し、女を大人にする」
ジャックローズを口して彼女はそう言った。
女「そう思わない?」
彼女の唇はまるでジャックローズで染められたように真紅だった。
女「夏の恋がすぐに終わる理由、分かる?」
男「ひと夏の恋ってやつだね」
女「なぜ夏は恋をしたくなるか。それはみんな薄着だからよ」
男「僕らは肌色に恋をするってこと?」
女「あながち間違いではないわね。薄着だと相手の体型が分か
『テキーラの香り』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年10月5日(再放送:10月9日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
彼女と別れた9月、
僕はスマホに入っている彼女の写真を全て消去した。
(バーにて ♪フランクシナトラのSeptember in the Rainが流れている)
バーのカウンターに座ってバーボンを飲みながら、
10月になってからも忘れられない彼女との思い出を、
記憶からも消去しようとしていた。
男「マスター、もう一杯」
マスター「同じもので?」
男「ああ」
飲んでいるバーボンがアーリータイム
『山と海と君と』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年9月28日(再放送:10月2日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
「言うべきだよ、はっきり好きだってね」
山頂で僕の友人ははっきりそう言った。
「やっぱりそうかなあ」
「当然さ」
彼の言葉はいつも端的だ。
「多分、分かってると思うんだ、彼女も僕の気持ちを」
「そうかもしれない」
僕は友人に誘われて山に登った。
彼はよく一人でも山に登っている。
彼と山に登るのは初めてだった。
その山の頂上からは海が見えた。
頂上まで登って綺麗な海を眺めながら、彼の淹れて
『告白のタイミング』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年9月21日(RE:9月25日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
(本作は4月27日放送分「仲良くなりたい」の続編になります)
ゼミで一緒のあの娘に僕は恋をしている。
明るいブラウンだった髪は最近黒くしてショートボブになった。
広いおでこがはっきり分かるくらい前髪は短くしている。
少し目尻の下がった大きな瞳にしっかりした眉毛。
きれいに真っ直ぐ伸びた鼻筋に控えめな小さな鼻。
薄い上唇に反してぷっくりとした下唇。
端っこは常に上がっていて、笑うときは口を大きく
『猫と彼女』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年9月7日(RE:9月11日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
夜中に一人、部屋でボウモアをロックで飲んでいると飼い猫が話しかけてきた。
猫「最近彼女来ないね」
やれやれ。
このシングルモルトは40度もあるんだ。5杯も飲めば猫が話しかけてきてもおかしくない。
猫「どうして彼女は来なくなったんだい?」
猫は大きな目をしてこっちを見ていた。
「君にまだ言ってなかったね。彼女とはもう終わったんだ」
僕は猫に伝えた。
猫は悲しい顔をした。
猫「つまり彼女
『君とシェア』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年8月24日(RE:8月28日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
「ねえこれ借りていい?」
彼女は僕のラルフローレンの白いシャツを掲げてそう言った。
「もちろん。じゅあ君のこれ今日使ってもいいかい?」
僕は彼女のLLbeanのトートバッグを掲げてそう言った。
「どうぞ~」
僕と彼女はルームシェアをしている。
ただシェアするのはルームだけじゃなくなってきている。
「えー何このオーバーオール、買ったの?かわいいじゃん」
「うん、オーバーオール欲しくてさ」