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クレール・ドゥニ『Stars at Noon』ニカラグアで出会った男と…

2022年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品、カンヌ映画祭のコンペはデビュー作『ショコラ』以来34年ぶりの登場となった。昨年は濱口竜介がベルリン映画祭とカンヌ映画祭のコンペにそれぞれ別の長編作品を出品し、それぞれで何らかの賞を受賞していたが、今年はそれをクレール・ドゥニが達成した。本作品はデニス・ジョンソンによる同名小説を原作としているが、舞台は1984年のサンディニスタ統治下にあった内戦期のニカラグアから現代のコロナ禍のニカラグアに変更されている。ドゥニはこの本を10年ほど前に読んで、"革命という文脈のみによって関係を築くラブストーリー"と評しているらしいが、他の設定はそのままに舞台だけ現代に移して申し訳程度のマスク描写でコロナ禍を語るという意味不明な状態になっており、"革命"の部分は消えている。例えば、主人公はスマホを破壊されたという設定なので、連絡には直接会うか公衆電話を使っており、特に現代的な部分は感じない。好意的に受け取れば、パンデミックと戦時中の生活がそれなりに重ねられているのかもしれないが、寧ろ原作通り、つまり『サルバドル / 遥かなる日々』とか『危険な年』とか80年代の政情不安定地域にいた白人の物語に近いものを感じる。主人公の植民地主義的な言動は現代にしてはあまりにも時代遅れなので、80年代にしてくれたほうがまだマシだったのに。

主人公はジャーナリストを名乗るアメリカ人の若い女性トリッシュ。最初の頃は人権問題などの記事を書くために入国したはずで、現地の政府高官や警察などとも繋がりがあるのだが、今ではプレスカードもパスポートも失効し、日銭を稼ぐために娼婦のようなことをしている(もうこの設定からよく分からない)。ある日、客を求めてインターコンチネンタルに行った彼女は、イギリス人のオイルマンの男ダニエルに出会う。最後まで彼の背景は謎だが、取り敢えず取引相手が地元の人間には忌み嫌われているコスタリカ人だったので、トリッシュはそのことをダニエルに伝えて彼らの取引を破壊する。するとなぜか、何者からか追われる羽目に…云々。上記のドゥニの言葉から連想するに、本作品はカンヌでボロクソに叩かれまくったショーン・ペン『ラスト・フェイス』に近く、テーマをそのままに演出や映像をドゥニお得意の"身体を通じた湿っぽく気怠い官能性"に置換したような感じに見える。同作との最大の違いは、主役二人の背景も現代ニカラグアの背景もボンヤリしすぎているので、何をやっても違和感を覚えることだろう。ずっと何がしたいかよく分からず、取り敢えずセックスしてるといった感じだった。

海外評ではマーガレット・クアリーが酷評されているんだが、役が悪かったとばっちりを食ってるだけな気もする。

・作品データ

原題:Stars at Noon
上映時間:138分
監督:Claire Denis
製作:2022年(フランス, アメリカ)

・評価:30点

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