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病室 著:前花しずく
世界には「指定難病」と呼ばれる病気がある。文字通り、現在の医術ではどうにもならない病気。身体が徐々に動かせなくなってしまうパーキンソン病なんかもそれに含まれていたりする。
少年が患っている病気も、この指定難病の一種であった。なんでも、肺が委縮して呼吸がうまくできなくなる病気なのだとか。症状は突然現れ、やれ酸素ボンベだの人工呼吸器だのがんじがらめになったコードを体内にたくさん刺されることもよくあ
この星に生まれて 著:くらげさん。
死んだ友達の命日に、毎年造花を贈っている。咲く前に散った命に、首を切られて枯れるのを待つだけの花を添えるのは、気分が悪い。
作り物の花を選ぶ時間が好きだ。その棚には命が一つもないから。無機物だけが咲き誇る風景に安堵する日々が、何よりも楽しくて罪深い。花弁に手を触れても、茎を握りつぶそうとしても、変わらぬ美しさがそこにある。
「お客様、贈り物ですか?」
視界の中に有機物が侵入してくる。嫌だ。反
「AI・カカオ・幸せ」をテーマに、あなたへ贈る物語集。
2017年秋の作品発表会。3つのテーマに沿って書いた作品を詰めました。
「ラスト・マキナ」―――慢心大魔王
「振り下ろされた鍬」―――またたび浴びたタマ
「ある夜の喫茶店で」―――水菓子
ラスト・マキナ 慢心大魔王
人間とAIの思考能力に違いが無くなってから、早くも二百年が過ぎた。最新型のAIは感情を持ち、人間を理解し、精工な外骨格があ
マリオネ・テスタと空欄[K] 第五話
著・亮月冠太朗 絵・市川正晶
金城拳聖(かねしろけんせい)。
最初には、未夕ではなく……竹山でもなく、彼を生き返らせたかった。
最後に言葉を交わしたのが彼だったから。
何より、彼の声を聞きたかったから。
「よかった。生きてたんだな」
生き返った拳聖の第一声。
「死ねばよかったのにな」
そして二言目。歪んだ口元が彼の皮肉を際立たせる。瞳は苛つくほど無邪気に輝き、俺