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高岡紀美子エッセイ集♪

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ピアノ講師・高岡紀美子先生のエッセイをまとめました。クラシック音楽にまつわるエピソードが盛りだくさんです🎶
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2020年11月の記事一覧

『天翔(あまかけ)る白鳥』ピアノ講師・高岡紀美子エッセイ作品

『天翔(あまかけ)る白鳥』ピアノ講師・高岡紀美子エッセイ作品

「倭(やまと)は/国のまほろば/たたなづく/青垣/山ごもれる/倭しうるわし」と、故郷に想いを馳せながら、息絶える勇者ヤマトタケル。古事記に登場するヤマトタケルは、父・景行天皇に見捨てられた悲運の皇子として描かれている。父の命令によって東征の旅に出た彼は、帰路、伊吹山の神と対決し、敗北する。故郷を目前に、力尽きる肉体。「…無念」。やがて、彼の魂は白鳥となって、天高く舞い上がり、遠い異次元の空間へ吸い

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音楽エッセイ『半年後、弟たちは…』ピアノ講師・高岡紀美子作品

音楽エッセイ『半年後、弟たちは…』ピアノ講師・高岡紀美子作品

19世紀。ドイツの作曲家メンデルスゾーンは“4歳年上”の姉ファニーと仲が良く、ピアニストである彼女にいつも音楽的助言を仰いでいた。書きかけの草稿を手渡しながら、弟は言う。「このつづきは、姉さんが作曲してください。あなたの作り出す旋律はとても美しく、気品があり、その才能は僕の誇りです」。彼の代表作である『春の歌』や『ヴェニスのゴンドラの歌』など、48曲の“無言歌”の多くが、実は、姉の作曲だったとか

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音楽エッセイ『さて、診断は?』   ピアノ講師・高岡紀美子作品

音楽エッセイ『さて、診断は?』 ピアノ講師・高岡紀美子作品

モーツァルトは「豚カツを食べて死亡?」。2001年6月、そんな珍説がアメリカの医学誌に発表されたが、発熱、発しん、手足のむくみなど、彼の病気が豚肉の寄生虫による感染症に酷似しているとのこと。 潜伏期間は約50日。モーツァルトは発病の44日前、妻への手紙に「豚カツって、なんてうまいんだ!」と書き残しており

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音楽エッセイ『また、引っ越し?』ピアノ講師・高岡紀美子作品

音楽エッセイ『また、引っ越し?』ピアノ講師・高岡紀美子作品

「居所不定」。天保7年(1836)に刊行された『諸家人名録』に、浮世絵師・葛飾北斎の住所だけが、こう記されている。住所不定である。北斎については数々の奇行が伝えられているが、一ヶ所にとどまることを嫌う“転居癖”も、その1つであった。 「幕府の表坊主・寺町百庵と言う人が、引っ越し100回を目ざしているらしい」。

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