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小中学生向け読書会「国語のひろば」開催レポート②(課題文『空気がなくなる日』)

こんにちは!
今日は、葛飾区で開催している小中学生対象の読書イベント「国語のひろば」の開催レポートをお届けします。
(前回のレポートはこちらをご覧ください!↓)

イベント運営が忙しくて全然記事が書けてなかったんですが、去年の10月から毎月開催しています!
今日は去年の12月に開催した会の様子を書きます。
『空気がなくなる日』が課題本でした。


『空気がなくなる日』著:岩倉 政治

課題本のあらすじ

1910年、ハレー彗星の接近が間近に迫った時、欧米各国ではこの世の終焉が訪れるという噂が飛び交い、パニックとなったといわれる。

彗星が接近する「その年の七月二十八日」に5分間だけ「地球上から空気がなくなってしまうそうだという」「ばかばかしいうわさ」について、回顧調で語られている。
この噂について、最初は、だれも信じなかったが、校長先生が県庁の役人もその噂を信じているらしいと言い出すと、学校や村中が大騒ぎになる。

Wikipedia『空気がなくなる日』より

【写真でダイジェスト】イベントの様子

文章よりも写真の方が雰囲気が伝わりやすいと思うので、まずは写真でイベントの様子を紹介します。
読書会の工夫や、子どもたちがどんなふうに読書を楽しんでいるかを見てください!

まずは司会決めじゃんけん

→ じゃんけんで勝った人が司会になります。みんな、司会をするのが楽しいのだそう。

一つ目のテーマ:この本はいつ頃の話?

→すかさず手が挙がる。
こういう雰囲気なので、司会の子に負担がかかりません。

話し合いの様子①

司会(Mさん):この本はいつ頃(西暦何年ごろ)の話ですか?
Y君:7月28日!
H君:西暦何年の7月28日?
Y君:…書いてない。

講師:そう。西暦何年かは本に書いてないんです。
でも、何年くらいだと思う?本の挿絵とかもヒントになると思うよ。

Cさん:「百姓」って書いてあるから結構昔だと思う。
H君:江戸くらいじゃね?
M君:いや、江戸はないと思う笑
H君:江戸には「内務大臣」なんていないか。
M君:「陸軍大将」も江戸時代にはいないよね?
講師:そうだね。江戸時代には軍隊はなかったもんね。
Cさん:洋服着てる。自転車もあるでしょ。
M君:自転車があるなら明治時代?

司会(まとめ):明治か江戸か昭和っていう意見が出たけど、江戸じゃなそうだなという話になりました。明治か昭和だけど…やっぱり明治なのかな?

講師:こんな意見が出ましたね。
明治時代か、もしかしたら昭和かもな?とイメージしながら読書会を進めていきましょう。

まだイベントの序盤なので、私からは答えを提示しません。

子どもたち自身が考えるきっかけを散りばめながら、「もっと知りたい!」という気持ちを軸にして読みを深めていく。
これが、国語が好きになる読書会「国語のひろば」の大きな特長です。

二つ目のテーマ(講師からの問いかけ)

講師:「空気がなくなる」という噂が立った時、一回目は誰も信じなかった。でも、二回目は村じゅうの人たちが信じてパニックになったよね。
どうして二回目の時はみんなが信じたんだと思う?

→ 難しい問いが出た時は真剣に読む時間もあります。

友達と相談しながら読んだりもします。
「複数人の視点で読める」ことが、読書会の魅力の一つ。

話し合いの様子②

H君:1回目に小使(こづかい=用務員)のじいさんから噂を聞いた時、校長先生は信じなかった。でも、県庁の友達から噂を聞いた時は「2回目」だから信じたんじゃない?
講師:あぁ、校長先生は「2回も聞くってことは、さすがにこの噂は本当かも」って思ったのかもしれないね。
Mさん:2回目は県庁に勤めてる人からの噂だから信じたんじゃない?小使のじいさんから聞くよりも説得力があるし。
H君:それに「東京が騒いでると怖い」よね?県庁はこの村から見ると都会だから、都会が騒いでいると聞いて怖かったのかも。
Cさん:小使のじいさんは信用がなかった。けど、校長先生には信用があったから、みんなが噂を信じたんじゃないかな。

→ 噂(デマ)はどうして広がるのか、本文の記述を手かりにして様々な視点から読みが深まっていきました。

何度も言いますがこれ、塾のプリント教材を読んでるんです!
普通だったら嫌がる国語の問題を、子どもたちがこんなに真剣に、楽しみながら読んでいるのって、すごいことだと思います。

司会を助ける「ぬいぐるみシステム」

先生から「司会をやってください」って言われるの、結構嫌じゃないですか?
「〇〇についてどう思いますか?」とクラスのみんなに話を振った時、誰からも手が挙がらないとめっちゃ気まずいんですよね…。
その気まずさを解消するために、この読書会では「ぬいぐるみシステム」を採用しています。

【ぬいぐるみシステム】
① 司会にはぬいぐるみ(すみっコぐらしの「ぺんぎん?」)が与えられる
② 司会が「〇〇についてどう思いますか?」と話を振った時、誰からも挙手がない場合は、ぬいぐるみを誰かに渡すことができる
③ ぬいぐるみを渡された人は、ひと言でもいいので何か発言しなければならない

司会のプレッシャーを和らげつつ、しかも、自分から手を挙げづらい子に発言の機会が回りやすくなるという二重の効果を狙っています。

ぬいぐるみを頭の上に乗せる子も。

ちなみにこの設計は、お茶の水女子大学附属中学校の渡邉先生の授業を真似させていただいております。

渡邉先生、ありがとうございます!

振り返り:「テーマ大賞」を決める

イベントの最後に、みんなの投票で「テーマ大賞」を決めます。
今日話し合った中で、一番面白かったテーマは何か?を話し合うんですね。

◆『空気がなくなる日』のテーマ大賞(同率1位が3つでした)

テーマ① もし自分だったら、人生最後の日(=空気がなくなる日)に学校に行く?
テーマ② 氷袋の値段は本当に200倍になったのか?
テーマ③ 作者はこの本にどんなメッセージを込めたのか?

実は、このイベントを楽しくする仕掛けの一つに「他者貢献」という要素があります。
たとえば、自分が何気なく話したことで、クラスが思いがけなく盛り上がったらすごく嬉しいですよね?

自分の発言がみんなのためになった!
だから嬉しくなって、もっとみんなに問いかけをしたくなる…

そんなスパイラルを作るために考えたのが、この「テーマ大賞」です。
「あなたの疑問が、この読書会をこんなに盛り上げてくれたんだよ!」という、他者貢献を実感してもらう仕組みとして、振り返りの時間に盛り込んでいます。

「国語のひろば」を開く理由

今回は塾のプリントを使ってやりましたが、この読書会は国語の教科書でも、受験の過去問でもできます。
事実、私が見学に行った私立・国立の小中学校では、こうした「子どもたちの問いから始まる国語の授業」が行われていました。

一方、先日Xでこんな投稿を目にしました。

・東京周辺家庭の中学受験への期待が大きすぎると思っていて、自分の子供に面白い選択肢を与えられない状況がもどかしいです
中学受験以外の面白いというかチャレンジ的な選択肢が皆無に近い状況です
・親同士で話しても中学受験か公立の選択肢しか出てきません

東京で塾を経営している私も、この感覚分かるなぁと思うんです。
中学受験はとても良いチャレンジだと思うんですが、志を高くすればするほど時間もかかるし、ストレスもかかります。

都市部の小中学生の中学受験率と学力が上がる一方で、「学びを楽しむ」という選択肢が、少なすぎるように感じるんです。

勉強に疲れてしまう子たち ~通信制高校を取材した時のエピソード~

実は以前、都内の通信制高校を取材に行った時に、思ったよりずっとたくさん中高一貫校出身の子たちがいたんですね。
その子たちは勉強が得意だし、好きなんです。でも、

中学受験には合格しました。
でも、中学に入ったら周りは自分より勉強ができる人たちばっかりで、ちょっと疲れちゃったんです。
だからここでペースを取り戻して、もう一度大学受験に挑戦したいです。

と、私に話してくれました。

これ、おかしなことだと思いませんか。
もともと勉強が好きだった子たちが、競争に疲れて勉強できなくなってしまうなんて…
心情的にも許せないし、才能ある子が体調を崩して勉強できなくなってしまうなんて、社会的にも大きな損失です。

こういう子たちが本格的に体調を崩す前に、「実はこういう学び方もあるんだよ。楽しみながらでも、学力を伸ばせる学び方があるんだよ」と教えてあげたい。
この通信制高校を取材してからずっと、そう思っています。

フォロー&シェアをしてくれたら嬉しいです!

・著名な先生のいる中学・高校に通わなくても、そういう学校と同じスタイルの授業が受けられる選択肢があったらいいなと思いませんか?

・楽しみながら国語を学べる選択肢が、学校の外にあったらいいなと思いませんか?

このイベントの存在をもっとたくさんの人に知ってもらいたいです。
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