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瑞葉
2020年2月21日 12:53
夏には小さい頃から田舎の親戚の家へ行くのが恒例行事だった。午前中は宿題の時間だったが、昼ご飯を食べたら虫かごと虫あみと水筒を持たされて外で遊んで来なさいと暑い中へ放り出されるのが常だった。わたしはどちらかというと外で遊ぶより家で本を読む方が好きだったので、それに関しては毎年苦痛の夏休みだった。それでも逃げ道というのはあるものだ。わたしは家から放り出された後、いつもの場所へ、ポケットに文庫
2019年8月27日 10:58
「こんなところで…」 道の先にはうすくて赤い甲羅のサワガニ最近の強い日差しに干上がりつつもゆっくりと横歩きだいぶ下ったところに川があるからそこから来たのだろう 「そっちに水辺はないよ」 もちろんサワガニは進み続けるこのままだと車に轢かれるか乾ききってサワガニの一生は終わるだろうわたしはハサミで切られないようにサワガニの甲羅をそっと持って川へと歩く 「最近は暑いでしょ
2019年4月18日 18:18
あーーーー、だるい…朝に目が覚めて体のだるさを感じたけれど寝れば治るだろうなんて安易に思ったわたしを殴りたい治るどころかなんだか熱が上がってる気がする"こりゃ病院行かないとだめなやつかなーめんどくさいなーひとり暮らしってつらいなー"などとぶつくさ言いながらもかかりつけの病院の診察券を見ると、午後の診察受付終了時刻までもうぎりぎりだった"やばいやばい週末サークルあるからそれまでには
2019年3月16日 03:45
「ねえ!こっち向いてよ」 「いやだ、どうせまたカメラこっち向けてるんでしょ!」 「それは…そうだけど…」 僕は彼女にカメラを奪われて手持ち無沙汰まあそのカメラは元々彼女のものなんだけれど 「ちょっと来てよ、これ!きらきらしてる!宝石見つけちゃったかも!」 「あー…それただのガラスだと思うよ、触ったら怪我しちゃうから気をつけてね」 「ちぇっ、夢のないやつ」 そう言って彼
2019年3月15日 17:48
「なんだかね、狭い部屋にいて天井を感じるの」 彼女は言った 「何をしてても、楽しくても、悲しくても天井があって窮屈なのどんな感情もそこからはみ出ることがなくて、あるときはわたしが天井から自分を見ているような気にすらなるの」 「急にどうしたの?」 「ごめん…わたしも上手く説明できないんだけど、今までこんなことなかったからその、君と…繋がってるときですら幸せなはずなのに天
2019年3月15日 16:56
「君は何につけても考えすぎてしまう節があるみたいだね。」 「そう?」 「ああ、僕は基本的に何も考えてないよ。」 「何も考えない?私の頭の中はいつでも思考がぐるぐる巡ってるわ。」 「ほら、ずっとそうしていたら気づかないうちに疲れてしまうよ。」 「そう…なのかしら…」 「もちろん考えることは悪いことではないけれど、大抵のことは何も考えなくても上手くいくものさ。」
2019年3月15日 16:35
日常のふとしたきっかけでいとも容易く僕の思考は支配される頭の中は映像で溢れてもう目の前なんて見えなくなる僕は雨にうたれてずぶ濡れのまま叫んでいたり運命の奴隷になって打ちひしがれていたり手に入れられなかったものを思い出しては苦しんだりそうやって溢れてくる映像にのしかかられて潰されてしまうもうそうなったら動けない見えないどうすれば自力で立ち上がれるのかわからなくて何度考えても答えなんて
2019年3月15日 03:14
もう仲良くなってだいぶ経つでも完全に2人きりでどこかに行く、というのはまだだったわざわざそういう約束をしなくても毎週会えるんだから、いや、そうだからこそわざわざそういう約束をするのが照れくさかったのかもしれない夏が好きだと度々主張していた彼女も同じことを考えていたのかもしれない 夏は待ってくれないんだから 僕は恥ずかしい気持ちを何とか押し込めて夏に乗り遅れないように、彼女と花火
2019年2月8日 00:47
わたしは走っている怪物に追いつかれないように苦しい足がもたつくもう解放されたいもう真っ直ぐな道しか見えなくなったこの重荷に耐えられない声が出ない視界がかすむ怖い押しつぶされるいっそ死んでしまいたいそうしたら解放されるはず…本当にそうだろうかもうずっと怪物から逃げている逃げきれるのか?逃げ切った先に何が待っている?わたしは急ブレーキをかけて振り返って叫ぶ「かか