怪物

わたしは走っている
怪物に追いつかれないように

苦しい
足がもたつく
もう解放されたい
もう真っ直ぐな道しか見えなくなった
この重荷に耐えられない
声が出ない
視界がかすむ
怖い
押しつぶされる
いっそ死んでしまいたい
そうしたら解放されるはず

…本当にそうだろうか
もうずっと怪物から逃げている
逃げきれるのか?逃げ切った先に何が待っている?

わたしは急ブレーキをかけて振り返って叫ぶ
「かかってこいよ」

しかし振り向いた先には何もいない

…わたしは何から逃げていた?
怪物に追われていたはずなのに
はっとした
わたしは自分が創り出した頭の中にある怪物で自らを苦しめていた
そんなもの
そんなもの
この手で壊してやる
このわたしをこれ以上傷つけるなんて
何度でも、出てくるたびに、地面に打ち付けて壊してやる

そうしているうちに怪物には元となるものがあることを知った
悪意があるものもあるが、そうではないものもある
刺激に上手く反発できなかったもやもやが怪物を創り出した
わたしは怪物を地面に打ち付けるのをやめた
怪物は弱って横たわったままだ
黒いもやの中にある心の奥底でわたしが叫んでいた感情を必死にすくい上げた
わたしが本当は言いたかった言葉を、主張したかったわたしの価値を、そう、わたしがわたしの価値を認めて守ろうとしていたことを知ったとき、頰に涙が伝った
そしてわたしはわたしを抱きしめた

ありがとうございます。サポート代はマイク等の機材費の足しに使わせていただきます。環境が整えば音声作品を投稿する予定です。