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たい(小説とうたうたい)
2017年5月1日 15:26
「ただいまー。」「お帰りなさい、美沙。結構遅かったのね。どうだった、教会は?」「うん、えっとね……。」 美沙は母に約束したとおり、ひとつひとつ頭の中を整理しながら、母に話していった。美智子は時折「へえ」とか「まあ」とか相づちを打っていたが、次第に無言になっていった。「……お母さん、わかった……?」「……まあ……だいたい……?」 そう言う美智子も、やや自信がなさそうだった。
週末のその日、美沙は意図的に時間を取って【空白】を作ることにした。理由は、牧師さんのメッセージの中で印象に残った言葉からだった。「静まって、わたしが神であることを知れ。」「静まり、なにかをすることを止めることで、神が語り、働かれる空間・スペースを作ることができるのです。」 確か牧師さんはそんな風に言っていたように記憶している。「祈りとは、耳を傾けることです。目に見えない神の語りかけ
2017年5月1日 15:20
「おはようございます!」 教会の扉を開けると、いつもの受付のおばさんに挨拶した。「あらー美沙ちゃん。おはよう。今日は早いわね」「はい。……あの、お願いがあるんですけど……牧師さんとお話しすることって、できるでしょうか?」「あら、増田先生と?そうね……聞いてみるわね。ちょっと待っててね」 そう言うと婦人は2階へ上がっていった。玄関で手持ち無沙汰に突っ立っていると、後ろから声がした