【短編小説】ドーナッツ
「あーあ、雨の日はつまんないなあ」
梅雨の最中、けんじが退屈そうに畳の上をゴロゴロと転がっている。それはそれで楽しそうに見えるのだが。
「けんじ、あんたまたそうやってゴロゴロして。」
母きよみのお叱りが飛ぶ。
「そんなこと言ったって母ちゃん、つまんないものはつまんないんだもん。」
ぱたんぱたん、と半回転を繰り返すけんじ。まるで畳に蝶番がついたドアだ。
「くーーー、情けないねぇ。あたしが若い頃は何でも見つけては遊び道具にしたもんだったよ。」
母のきよみが若かりし頃を思って嘆