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「国産のCOVID-19治療用核酸医薬の吸入剤、来年臨床試験へ」

2021/05/15



TONOZUKAです。


国産のCOVID-19治療用核酸医薬の吸入剤、来年臨床試験へ


以下引用

 いまだ広がり続ける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。治療薬については、既存薬の転用で抗ウイルス薬レムデシビルやデキサメタゾンが承認されたが、依然として治療薬の必要性は高い。そこで海外では、既存薬の転用のみならず、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のS蛋白質を標的とした抗体医薬をはじめとした新薬開発も進んでいるが、日本から新薬の開発が進んできた。それが一本鎖RNAを有効成分とする核酸医薬。動物実験などで効果の検討が進んでおり、来年には臨床試験を開始する計画だ。
 「ウイルスを排除する方法として核酸医薬を使うのは理にかなっていると感じている。SARS-CoV-2の配列情報から十数個の候補核酸を作って検討を進め、細胞実験で有望なものを3つに絞り込んだ。すでにモデル動物を使った実験もいくつか行った。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の事前相談も行っており、さらに動物実験を進めつつ、来年には臨床試験を始める予定だ」──。こう話すのは、核酸医薬の研究開発などを進めるボナック(福岡県久留米市)社長の林宏剛氏だ。

 同社は独自にRNAの原料となるアミダイトを開発しており、これを原料に一本鎖RNAを合成し、RNA干渉と呼ばれる作用を応用して狙ったRNAを特異的に分解する医薬品の開発を進めてきた(図1)。その1つが、特発性肺線維症を対象にTGF-β1のmRNAを特異的に分解する吸入型の一本鎖RNA製剤で、東レと共同で開発を進めており、現在、東レが米国でフェーズ1試験を進めている。
 一方で同社は2012年頃、福岡県保健環境研究所と共同で、一本鎖RNAを使ってインフルエンザ治療薬の開発も行っていた。RNAウイルスであるインフルエンザウイルスを阻害するには、一本鎖RNA製剤を使うコンセプトは有効だと考えたからだ。検討の結果、研究自体は良好な結果は得られたものの、この頃はインフルエンザ治療薬としてノイラミニダーゼ阻害薬が次々と登場したあと。開発そのものは断念したが、「一本鎖RNA製剤はRNAウイルスによる感染症にも有効だという手応えは得られた」と林氏は振り返る。

 こうした経験を有していた林氏は、2019年末、中国で未知のウイルス感染症が広がり始めたとき、「日本にもやってくるかもしれない」と考えた。翌2020年の1月にはRNAウイルスであるSARS-CoV-2の塩基配列が早々に公開されたことから、「社内に、SARS-CoV-2の配列情報を使って検討を始めるよう指示した」(林氏)。そしてSARS-CoV-2を使った細胞実験が進められるように共同研究先を探した。しかしその頃はすでに国内にも感染者が発生し、共同研究を受け入れてくれる余裕のある組織はなかった。
 一度は開発をあきらめかけたが、こんな状況が福岡県知事(当時)の小川洋氏の耳に入り、県と共同研究するプロジェクトが2020年5月にも始動。福岡県保健環境研究所にはSARS-CoV-2を扱うことができるBSL-3施設もあった。福岡県は、過去にインフルエンザ治療薬の開発でボナックとの共同研究に従事していたがその後は他部署に異動していた担当者をすぐに研究所に戻すほどの力の入れよう。BSL-3施設も改修が必要で2020年度予算に計上していたが、その予算を前倒しで執行したくらいだ。こうしてSARS-CoV-2を使った細胞実験が可能となり、10数の候補一本鎖RNAを同定。さらに動物実験を進めて有望な候補一本鎖RNAを3つに絞り込んだ。

 SARS-CoV-2を標的とした一本鎖RNAは、特発性肺線維症に対する治療薬開発の経験を生かし、吸入剤として開発する方針だ。

 同社は今年1月、医師で米Merck社の開発部長やMSDで副社長/開発本部長、グラクソ・スミスクライン取締役開発本部長などを歴任した高橋希人氏を取締役COOとして迎え入れた。林氏は、「これで開発体制も整った。われわれの一本鎖RNA製剤は既存薬の転用ではなく新しい薬剤である分、少し時間が掛かるが、早く臨床現場に届けたい」と語っている。


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