記事一覧

一分小説『宝石洞窟』

 金のなる木。  そんなものはないけど。  宝石のなる洞窟。  それはある。  あった。  ルビー、トパーズ、エメラルド。サファイア、クォーツ、ダイヤモンド。そして…

月
1か月前

短編小説『完璧な母』

「わが社の新製品、i-motherは、悩める世界の奥様方にとって救いとなる商品です。日々の生活の中で奥様達の手を煩わす、我が子の夜泣き、ぐずり、あるいはもっと成長為され…

月
1か月前
5

一分小説『入道雲』

『積乱雲が発達しています。急な雷雨にご注意ください』。  奴はそうやって、期待と不安をのせて、真っ白な体を運んでくる。  今日こそは、体育失くせよ入道雲。  おま…

月
1か月前
1

短編小説『世界始発論』

 ある日世界は始発を迎えた。  僕は僕の陰気さによく似あった、終末系SFを呼んでいたものだから、それはもう参った。 『昨日発見された新元素、アキラロメンにより、こ…

月
1か月前
5

一分小説『ー1秒』

 秒針を眺めていると、カチリと、テッペンの12にたどり着いた直後、  左回りに1秒動いた。  カチ、カチ、カチ……  何事もなかったように、秒針は再び右へと進み出し…

月
1か月前
2

短編小説『人肌』

男には秘密があった。 誰にも言えない秘密だ。 秘密はベッドの上にあった。 男は時価総額でN位を取る企業で、高い地位を得ていた。 同じ釜の飯を食ったキャリアコースの仲…

月
1か月前
2

一分小説 『靴擦れ』

 靴職人は、その足音を聞いて嫌な予感がした。  男が、店へとやってきたのである。 「おや、どうも……お客様」 「やあ職人さん。前に買ったこの靴で、靴擦れを起こしち…

月
1か月前
1

自分辞書(with Wikipedia):part1

文章力が死んだ。最近動画ばっかり見ているからである。 最近どうにも、人に説明するのが下手になった。 なので、語彙力アップのため、ランダムな単語で自分の辞書を作ろう…

月
1か月前
2

フリーターの日記 3/26

小説を書かなくなってから、もう一月。 書かなくなったというか、書き上げてから、『これを本当に俺は作品として誰かに見せたいのか?』と思ってしまった。 思えば、書くの…

月
2か月前
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一分小説『宝石洞窟』

 金のなる木。
 そんなものはないけど。
 宝石のなる洞窟。
 それはある。
 あった。

 ルビー、トパーズ、エメラルド。サファイア、クォーツ、ダイヤモンド。そしてゴールド。
 大空洞、その内壁すべては、七色の光を孕んで、反射して、天国とすら張り合える異世界を現実に作り出す。七つの大陸の地脈が合わさるこの土地は、不思議なことに宝石が分類無く、際限なく湧き出る。掘っても、掘っても。採っても、採って

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短編小説『完璧な母』

「わが社の新製品、i-motherは、悩める世界の奥様方にとって救いとなる商品です。日々の生活の中で奥様達の手を煩わす、我が子の夜泣き、ぐずり、あるいはもっと成長為されているのでしたらイヤイヤ期に、反抗期。
こんな悩みを全て解決するためには、そうです。新時代の力をお便りください。
わが社が発明した『子守型アンドロイド i-mother』は、最新の用事心理学に基づいた、完璧な『子守AI』を搭載。情操

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一分小説『入道雲』

『積乱雲が発達しています。急な雷雨にご注意ください』。
 奴はそうやって、期待と不安をのせて、真っ白な体を運んでくる。
 今日こそは、体育失くせよ入道雲。

 おまえは、そんな嫌われ者みたいな体しているのに、よく夏の主役と言わんばかりに威張っては、よくいろんな人を怒らせては、たまに誰かを救っていく。

 夏の全てを台無しにできる癖に、唯一夏の暑さに勝てる、そんなお前が、ちょっとうらやましくて。
 

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短編小説『世界始発論』

 ある日世界は始発を迎えた。
 僕は僕の陰気さによく似あった、終末系SFを呼んでいたものだから、それはもう参った。

『昨日発見された新元素、アキラロメンにより、これまでとは比べ物にならないエネルギー機関の開発が現実のものとなります。アメリカ研究機関の発表では、リスクのない核融合発電所が世界各地に建設できるようになるとのことで、世界的課題であったエネルギー課題、食力事情、労働力不足や内戦問題がドミ

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一分小説『ー1秒』

 秒針を眺めていると、カチリと、テッペンの12にたどり着いた直後、

 左回りに1秒動いた。

 カチ、カチ、カチ……
 何事もなかったように、秒針は再び右へと進み出し、テッペンの12を越えていっ た。カチ、カチ、カチ……。

 私は、それを机の上で一人見入った。目をまん丸に見開いて。
 まるで、一瞬時が止まったようだった。

「それでは、連立二次方程式を使うと、こうなるから……」

 ハッとして

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短編小説『人肌』

男には秘密があった。
誰にも言えない秘密だ。
秘密はベッドの上にあった。

男は時価総額でN位を取る企業で、高い地位を得ていた。
同じ釜の飯を食ったキャリアコースの仲間を幾人も蹴落として得た地位だ。
競争社会において冷徹さは羨望の的になる。
品格を守るために、彼は何人たりとも自分の部屋に入れるわけにはいかなかった。

だから男は女を招くこともなかった。
しかるべき雰囲気になったときは必ず懇意の星付

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一分小説 『靴擦れ』

 靴職人は、その足音を聞いて嫌な予感がした。
 男が、店へとやってきたのである。

「おや、どうも……お客様」
「やあ職人さん。前に買ったこの靴で、靴擦れを起こしちゃったんだ。幾分キツイようでね。どうにか、直してもらえないだろうか」

 男はそう言って地面へ、抱えていた二足の靴を置いた。それは細部まで意匠の凝った上等な靴であったが、男の言う通り、サイズは彼の大きな足と比べれば、やや小さかった。
 

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自分辞書(with Wikipedia):part1

文章力が死んだ。最近動画ばっかり見ているからである。
最近どうにも、人に説明するのが下手になった。
なので、語彙力アップのため、ランダムな単語で自分の辞書を作ろうと思った。
比較サンプルは、wikipediaとする。
単語はランダムに抽出してくれるサイトを使用する。

今日はいったん5つまで。

①共依存

〇相互関係において、両社が依存状態にあること。共生と違い、両者に悪影響が出ている状態。

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フリーターの日記 3/26

小説を書かなくなってから、もう一月。
書かなくなったというか、書き上げてから、『これを本当に俺は作品として誰かに見せたいのか?』と思ってしまった。
思えば、書くのが楽しく、没頭しているのが楽しく、誰かに読んでほしいという気持ちは薄かった。
そこを見ないふりをしていた。

三文小説であろうと、『小説を書く』という行為には多大な労力がかかる。
多大な労力をかけて物事をやっていると、多少なりとも自己肯定

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