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JW202 思いかねて降臨
【孝元天皇編】エピソード5 思いかねて降臨
第八代天皇、孝元天皇(こうげんてんのう)の御世。
すなわち、紀元前211年、皇紀450年(孝元天皇4)3月11日。
この日、遷宮(せんぐう)がおこなわれた。
軽境原宮(かるの・さかいはら・のみや)である。
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また、磯城氏(しき・し)の継承問題も解決を見たのであった。
そして、年が明け、紀元前210年、皇紀451年(孝元天皇5)となった。
そんな春正月のこと・・・。
中臣梨迹臣(なかとみ・の・なしとみ)(以下、トミー)が駆け込んできた。
トミー「エピソード152以来の登場にあらしゃいますっ! 大事件勃発にあらしゃいますっ!」
息を切らす「トミー」に、孝元天皇こと、大日本根子彦国牽尊(おおやまとねこひこくにくる・のみこと)(以下、ニクル)が尋ねる。
ニクル「如何(いかが)致したのじゃ?」
トミー「大事件が起きたのであらしゃいます!」
ニクル「それゆえ、何が起きたのか聞いておるのではないか・・・。」
トミー「そ・・・そうでしたなぁ。じ・・・実は、科野国(しなの・のくに)で、思いがけぬこと出来(しゅったい)致し、皆、慌てふためいておりまする。」
ニクル「思いがけぬことじゃと?」
トミー「左様にあらしゃいます。思いがけず、思いかねて、思兼神(おもいかねのかみ)が降臨したもうたのであらしゃいます。」
ニクル「お・・・思兼神じゃと?」
すると、まばゆい光と共に、思兼神が現れた。
思兼「お初にお目にかかりまする。思兼です。」
ニクル「こ・・・これは、思兼神・・・。この地にも、降臨あそばされるとは・・・。」
思兼「解説のために参りました。」
トミー「お・・・思兼神・・・。なにゆえ、科野に降臨あそばされたのであらしゃいますか?」
思兼「そんなことより『トミー』。大切なことを言い忘れてはいませんか?」
トミー「大切なこと?」
思兼「科野と読んで、どこか分かる読者ばかりでは、ないはずですよ。」
トミー「あっ! そうであらしゃいましたなぁ。ち・・・ちなみに、科野は、のちの信濃国(しなの・のくに)で、二千年後は長野県になりますぅ。」
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ニクル「して、長野県に降臨したもうた理由(わけ)をお聞かせくださりませ。」
思兼「なぜなら・・・・・・降臨したかったからです。」
ニクル「思兼神・・・。戯(たわむ)れも、ほどほどにしてくださりませ。それ相応の理由(わけ)が有るのでは?」
思兼「で・・・ですから、降臨したかったのです。」
ニクル「思い立ったが吉日と?」
トミー「ち・・・ちなみに、御子神(みこがみ)を随(したが)えて降臨したというのは、まことにあらしゃいますか?」
思兼「本当です。」
ニクル「御子神というは、お子様たちということですな?」
思兼「その通りです。家族総出で降臨したと、想像していただければいいでしょう。」
トミー「な・・・なんのために?」
思兼「いわゆる、引っ越しというものですね。科野に移住したのです。」
ニクル「で・・・では、これからも、科野で暮らして参られる御所存(ごしょぞん)か?」
思兼「そういうことになったので、子孫は、阿智祝(あち・のはふり)となりました。」
トミー「祝(はふり)とは、神に仕える者のこと・・・。どの神様に仕える者たちとなったのであらしゃいますか?」
思兼「愚問ではありませんか? ここに神がいるというのに・・・。」
トミー「あっ! そういうことにあらしゃいますな!」
思兼「そういうことで、阿智神社(あちじんじゃ)が創建されました。」
ニクル「して、鎮座(ちんざ)せる地は、何処(いずこ)に?」
思兼「長野県阿智村(あちむら)の智里(ちさと)に鎮座しておりまする。」
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トミー「ち・・・ちなみに、二千年後は使われておりませんが、鎮座地の地名は、昼神(ひるがみ)と言うそうにあらしゃいますなぁ。」
思兼「その通りです。智里よりも、更に小さな区域を指す地名です。」
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ニクル「昼神・・・。もしや、思兼神が、夜を昼に戻したことが由来では?」
思兼「さすがですね。天岩戸(あまのいわと)に籠(こも)りし、天照大神(あまてらすおおみかみ)を救い奉(たてま)ったことが、私の一番の功績ですから・・・。」
トミー「さ・・・されど、日本武尊(やまとたける・のみこと)の伝承が由来という説も有るみたいですけど・・・。」
思兼「本当に呆(あき)れるほかないですね。『トミー』・・・。それを異国(とつくに)の言の葉で、何と言うか存じておりますか?」
トミー「えっ? よ・・・よう分かりません。」
思兼「フライングというのですよ。」
トミー「フ・・・フラエン?」
ニクル「し・・・して、日本武尊とは何者にござりまするか?」
思兼「十二代目の皇子(みこ)のことです。」
ニクル「じゅっ! 十二じゃと!?」
思兼「それから、今年、戸隠神社(とがくしじんじゃ)の奥社(おくしゃ)も創建されました。二千年後の長野県長野市戸隠(ながのし・とがくし)です。」
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ニクル「そ・・・その社(やしろ)も、思兼神を祀(まつ)りし、社にござりまするか?」
思兼「その通りです。戸隠神社の主祭神は、天手力男神(あめのたぢからおのかみ)こと『ちから』ですが、奥社については、私が祀られているんですよ。」
トミー「なるほどなぁ。戸隠山(とがくしやま)は『ちから』様が、天岩戸を投げ飛ばした時の欠片と言われておりますんで、そのつながりで、思兼神も祀られることになったんですな?」
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思兼「天岩戸と言えば、私ですからね。降臨を機に、創建されたのでしょう。」
こうして、思兼神は、科野国で家族団欒の時を過ごすことになったのであった。
つづく
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