JW649 直入で祀る
【景行征西編】エピソード20 直入で祀る
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦82年、皇紀742年(景行天皇12)10月。
景行天皇こと、大足彦忍代別尊(以下、シロ)の一行は、五人の土蜘蛛を討伐するため、戦勝祈願の祭祀をおこなっていた。
ここは、柏峡の大野(大分県竹田市荻町柏原の辺り)。
いっくん「前回は、石が舞い上がったり、神々を祀ったんですよね?」
シロ「うむ。石は『蹈石』と名付けたぞ。」
たっちゃん「神々は、志我神、直入物部神、直入中臣神を祀ったぞ。」
するとそこに、一人の男が駆け寄ってきた。
シロ「ん? 誰じゃ?」
野見「あれは、屋主忍男雄心こと『ヤヌシ』様ですぞ。」
ヤヌシ「その通りなり! 帰ってきたなり!」
ナッカ「たしか、前回、大富神社に向かったんじゃなかったっけ?」
ヤヌシ「その通りなり。務めを終え、無事に戻ってきたというわけなり。」
シロ「そうか・・・。大儀であった。」
ヤヌシ「そして『蹈石』と、前回、祀った神々について、補足説明が有るなり。」
百足「どういうことにござりまする?」
ヤヌシ「三柱の神を祀る社が有るなり。」
舟木「それは、何処に?」
ヤヌシ「まず、志我神は、志加若宮神社にて、祀られているなり。鎮座地は、大分県豊後大野市の朝地町志賀なり。」
ワオン「道なき道を進んでいる時に、立ち寄ったのやもしれませぬな。」
ヤヌシ「そして、直入物部神は、籾山八幡社にて、祀られているなり。大分県竹田市の直入町長湯に鎮座しているなり。」
夏花「こちらは行宮の近くなのですな?」
モロキ「道なき道を進む前に、立ち寄ったのやもしれぬな。」
ヤヌシ「そして、直入中臣神は、直入中臣神社にて、祀られているなり。鎮座地は、大分県由布市の庄内町阿蘇野なり。」
小左「こちらは行宮よりも北の地に鎮まっておるのですな?」
モロキ「道なき道を行く前に、立ち寄ったのやもしれぬぞ。」
シロ「なにはともあれ、やはり、三柱の神は、地元の神だったのじゃな?」
ヤヌシ「そういうことなり。」
えっさん「あれ? あと『蹈石』についても、何かあると、仰っておられたような・・・。」
ヤヌシ「その通りなり。実は、直入中臣神社にも、土蜘蛛戦勝祈願の蹈石が有るなり。」
シロ「なっ! それは真か?」
ヤヌシ「嘘を吐いても、仕方ないなり。」
ウナ「いろんなところで、石を蹴っておるのですな?」
ナッカ「もしかして、石を蹴るのが好きなんすか?」
シロ「戯けたことを申すな。蹴りたくて、蹴っておるのではない。」
おやた「これぞ、ロマンにござりまするな。」
たっちゃん「して、ついに、土蜘蛛に攻めかかるので?」
シロ「いや、更に、祀りたい神が居りもうす。」
たっちゃん「更に? それは?」
シロ「伊弉諾神と伊弉冉神にござる。」
いっくん「念には念を・・・っちゅうワケですね?」
シロ「うむ。緩木川の源流の手洗いの滝にて、伊弉諾神と伊弉冉神を祀ったらしいのじゃ。」
えっさん「滝は、何処になります?」
シロ「よく分からぬそうじゃ。」
おやた「ロマンにござりまするな。」
シロ「されど、この神事を基にして、社が建ったぞ。」
ワオン「社?」
シロ「その名も、緩木神社じゃ。」
モロキ「鎮座地は?」
もち「元々は、由留木山の山頂付近に鎮座しちょったんやが、西暦1694年、皇紀2354年(元禄7)に、竹田市九重野に遷座しちょる。」
シロ「うむ。こうして、様々な神を祀り、戦勝を祈願したのじゃ。」
ナッカ「では、とうとう攻めるんすね?」
シロ「うむ。皆の者、敵を屠るぞ!」
たっちゃん「あっ!」
シロ「ん? 義兄上? 如何なされましたか?」
たっちゃん「大王・・・。攻めること、能わぬぞ・・・。」
シロ「それは、如何なる意で?」
どういう意味なのであろうか?
次回につづく