ＪＷ６４７　来田見宮

【景行征西編】エピソード18　来田見宮

第十二代天皇、景行けいこう天皇てんのうの御世みよ。

西暦82年、皇紀こうき742年（景行天皇12）10月。

景行天皇こと、大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと（以下、シロ）の一行は、五人の土蜘蛛つちぐもを討つため、大分県竹田市たけたし方面に向かう。

そして、ここは、大分県豊後大野市ぶんごおおのしの朝地町あさぢまち綿田わただにある、北平きたびら地区・・・。

地図（豊後大野市朝地町綿田の北平地区）

地元の土蜘蛛つちぐも、小竹鹿奥しのかおき（以下、オキロ）と小竹鹿臣しのかおみ（以下、オミール）より御饗みあえを受けた一行は、彼らに感謝の言葉を伝え、出立しゅったつしようとしていた。　

筑紫行幸参加者名簿

シロ「『オキロ』、『オミール』・・・。馳走ちそうになった。たいへん美味うまかったぞ。」　

オキロ「勿体もったいなき言ことの葉は・・・。」　

シロ「して、これより後のちも、この地を治おさめていってくれ。」　

オミール「かしこまりもうした。」　

タケ「この辺あたりは、後のちに、直入県なおいり・のあがたとなるゆえ、もしかすると、汝いましらは、県主あがたぬしとなったのやもしれぬのう・・・。」　

オキロ「えっ？　そげんコツ、考えたことも無なかったに。」　

いっくん「せやけど、わてらに、協力ちからしてくれたんやから、もう、土蜘蛛つちぐもとは、呼ばれへん。他ほかの呼よび方かたになったはずやで。」　

オミール「そげん考えると、県主あがたぬしは、有あり得えるのか・・・。」　

シロ「まあ、どちらにせよ、これからも頼たのむぞ。」　

オキロ・オミール「ははっ。」×２　

こうして、一行は、更に進んでいったのであるが・・・。　

たっちゃん「これより先さきへは、進すすまぬ方ほうがよろしいかと・・・。」　

シロ「なにゆえにござる？」　

たっちゃん「敵の近くに陣を設もうけるは、下策げさくにござりまするぞ。この辺あたりで、行宮かりみやを建てるべきかと・・・。」　

シロ「義兄上あにうえが申もうされるなら、致いたし方かたありませぬな。して、この地は、何なんと申もうすのじゃ？」　

はやや「来田見邑くたみ・のむらじゃ。」　

えっさん「それゆえ、来田見宮くたみ・のみやにあらしゃいます。」　

ヤヌシ「二千年後の地名で言うと、大分県竹田市たけたしの久住町くじゅうまち仏原ぶつばると考えられるなり！」　

もち「考えられる？　そいそれは、どういうことやじ？」　

ヤヌシ「この地に、宮処野みやこの神社じんじゃが鎮座ちんざしているなり。そこが、行宮かりみやの地と言われているなり！」　

地図（宮処野神社）

宮処野神社（鳥居）

宮処野神社（拝殿）

シロ「では、ここに行宮かりみやを設もうけ、その後、如何いかにすべきか、皆みなと語らいたい。」　

行宮かりみやは、すみやかに建てられ、その中で、会議がおこなわれた。　

シロ「思うに、多くの兵つわものを動かし、土蜘蛛つちぐもを討ちたい。」　

モロキ「数かずで押し切ると・・・そう申もうされまするか？」　

シロ「うむ。されど、我わが兵つわものの勢いきおいに恐おそれを成なし、山野さんやに隠かくれてしもうたら、元も子もない。必ずや、後のちの憂うれいとなろう。」　

野見のみ「そうならぬためには、如何いかにすべきか・・・ということですな？」　

シロ「その通りじゃ。」　

おやた「さすれば、声東撃西せいとうげきせいは、如何いかがにござりましょう。」　

シロ「声東撃西せいとうげきせい？」　

ウナ「東を攻めると見せかけて、西を攻めることにござりまする。」　

シロ「そのようなこと、分わかっておる。我われは、詳つまびらかなことが聞きたいのじゃ。」　

おやた「『日本書紀にほんしょき』には、詳くわしい説明がありませぬが、その後、我われらは、柏峡かしわおの大野おおのに進んでおりまする。」　

ワオン「二千年後の地名では？」　

おやた「竹田市たけたしの荻町おぎまち柏原かしわばるの辺あたりと言われておりまする。」　

地図（柏峡の大野）

ナッカ「ちょっと待まってくださいよ。行宮かりみやから、いきなり、南の地に進んだってことっすか？」　

おやた「御意ぎょい。」　

ナッカ「行宮かりみやの地から、最もっとも近い敵は、鼠ねずみの石窟いわやに拠よる、青あおと白しろっすよ？　なんで、こっちを討たずに、いきなり、南に行くんすか？」　

地図（周辺の位置関係）

シロ「北の青あおと白しろを攻めると見せかけ、南の打猨うちさる、八田やた、国摩侶くにまろたちを討つと申もうすか？」　

おやた「何なにも書かれておらぬゆえ、あくまで、推測すいそくになりまするが、我われらの進軍しんぐんを見て、青あおと白しろは、兵を整え、戦う支度したくをしておりましょう。そのような敵を相手とするよりも、油断している者を叩たたく方ほうが、利りがあるのでは？」　

シロ「されど、我われらが、南へと進めば、三人の土蜘蛛つちぐもも、これに気付きづき、戦いくさの支度したくをおこなうのではないか？」　

おやた「それゆえ、気付きづかれぬことが肝要かんようにござりまする。」　

夏花なつはな「どのようにして、進むと申もうすのじゃ？」　

おやた「道なき道を、進むほかござらぬ。」　

地図（道なき道を）

やぁちゃん「そのような・・・私は、イヤですよ。」　

影媛かげひめ「同じく、イヤです。」　

はやや「うちも、イヤっちゃ！」　

おやた「女おなごや『リトル』様は、行宮かりみやに、お留とどまりいただき、我われら丈夫ますらおのみにて、動くべきかと・・・。」　

タケ「なるほど・・・。皇子みこたちを守るための行宮あんぐうと考えることも出来できるのじゃな？」　

おやた「御意ぎょい。」　

百足ももたり「されど、どのようにして、道なき道を進むのじゃ？」　

おやた「我われに、策さくがござりまする。」　

策とは？　

次回につづく