JW532 鳴鵠が翔んだ日
【垂仁天皇編】エピソード61 鳴鵠が翔んだ日
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前7年、皇紀654年(垂仁天皇23)9月2日。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)は、詔(みことのり)の発表をおこなった。
イク「僕の息子、誉津別(ほむつわけ)こと『ホームズ』は、すでに三十歳で、長い鬚(ひげ)が伸びるまでに成長したっていうのに、まだ赤ん坊みたいに泣いている。言の葉を発しないのは、どういうことなんだろう。皆で、話し合ってくれないかな?」
この詔が、どういう効力を発揮(はっき)したのか分からないが、同年の10月8日、事件は起きた。
「イク」と「ホームズ」が庭を眺めていた時、鳴鵠(くぐい)が大空を飛んだ。
イク「鳴鵠(くぐい)・・・白鳥が飛んでいく・・・。」
ホームズ「・・・・・・。」
イク「あれ? ちょっと! ホームズ? ここで、あの台詞を言うんだよ?」
ホームズ「・・・・・・。」
イク「ホ・・・ホームズ? 『日本書紀(にほんしょき)』では『あれは、何だ。』と言ったって書かれてるんだよ? どうして言わないの?」
いろりん「これは、どう見ても『古事記(こじき)』の方を採用したとしか思えんがや。」
イク「えっ? 『古事記』?」
いろりん「尾張国(おわり・の・くに:現在の愛知県西部)で採れた、二股(ふたまた)の杉で造った舟を持ってくるでよ。それを市師池(いちし・のいけ)と軽池(かる・のいけ)に浮かべるんだがや。」
イク「ちょっと待って! 二股の舟っていうのは、すごく面白そうなんだけど、市師池って、どこなの?」
いろりん「それが、よう分からんでよ。」
イク「それに、軽池って、十五代目の時に造られる池だよ? まだ存在してないんだけど・・・。」
いろりん「こ・・・これが、ロマンというヤツだがや。」
ニック「とにかく、浮かべた方が、よろしいんとちゃいますか?」
イク「そ・・・そうだね。」
こうして、二股舟が浮かべられた。
そして、都合良く、再び白鳥が飛んだのであったが・・・。
ホームズ「あ・・・あう・・・。」
イク「あっ! 何か、言おうとしているよ!」
ひばり「ホームズ! 頑張って!」
ホームズ「あうわ、あんあ。」
イク「ちゃんと言えてない・・・(´;ω;`)ウッ…。」
くにお「こうなれば、白鳥を捕らえるしかありませぬぞ。」
イク「そ・・・そうだね。」
武日「誰に命じるんや?」
カーケ「ここは『古事記』に従って、山辺大鶙(やまのべ・の・おおたか)こと『オータン』に行かせるべきだと思うんだぜ。」
ちね「せやけど『日本書紀』は『オータン』の先祖、天湯河板挙(あめのゆかわたな)こと『ゆかわ』になってるで?」
オーカ「どうなされるので、あらしゃいますか?」
ひばり「二人同時に、お命じになられては? その方が、捕まりやすいと思うのですが・・・。」
イク「よし! 二人同時指名だ! オータン! ゆかわ! 白鳥を捕らえるんだ!」
オータン「かしこまりました!」
ゆかわ「実に、面白い・・・。」
今ここに、白鳥捕獲大作戦が発動されたのであった。
オータン「御先祖様! 我(われ)は、木国(き・のくに:現在の和歌山県)に向おうと思いまする。」
ゆかわ「そうか・・・。では、私は、多遅摩国(たじま・のくに:現在の兵庫県北部)に向かうとしよう。」
そして・・・。
ゆかわ「私は、多遅摩国とも、出雲国(いずも・のくに:現在の島根県東部)とも言われる地で、白鳥を捕まえた。」
一方の「オータン」は・・・。
オータン「木国から、針間(はりま:兵庫県南部)、稲葉(いなば:鳥取県東部)、丹波(たにわ:京都府北部)、多遅摩、淡海(おうみ:滋賀県)、三野(みの:岐阜県南部)、尾張、科野(しなの:長野県)に至り、高志(こし:北陸地方)で白鳥を捕らえたぞ!」
白鳥を捕らえた二人。
ホームズは、言葉を発するのであろうか?
次回につづく