JW539 肥長比売
【垂仁天皇編】エピソード68 肥長比売
第十一代天皇、垂仁天皇の御世。
紀元前7年、皇紀654年(垂仁天皇23)冬。
垂仁天皇の皇子、誉津別(以下、ホームズ)が言葉を発した。
国中(奈良盆地)に報せを届けた、菟上王(以下、うなお)は、その足で、出雲(島根県東部)に戻る。
出迎えた人物は、下記の通り。
兄の曙立王(以下、アッケン)。
出雲国造の襲髄(以下、カネス)。
その息子、岐比佐都美(以下、さつみ)である。
うなお「た・・・ハァハァ・・・ただいま、も・・・ハァハァ・・・戻り・・・ました。」
アッケン「おお! ようやく戻って来たか!」
カネス「如何なされました? 息切れなされて?」
うなお「お・・・大連たちが、早く戻れと急かすので・・・。」
さつみ「そのようなオリジナル設定に従わずとも・・・。」
うなお「えっ?」
アッケン「まあ、良いではないか。」
うなお「ところで『ホームズ』様は? 皇子の姿が見えぬが?」
カネス「皇子は・・・。」
さつみ「じ・・・実は・・・。」
うなお「ん? 何かあったのか?」
アッケン「皇子は、近くに、麗らかな女がいると聞き及び、通いに行かれた。」
うなお「は? まだ、片言しか喋れぬのに? 歌は、どうするのじゃ? どうやって愛の告白を?」
アッケン「仕方あるまい。『古事記』では、肥長比売こと『ひな』のところに行ったと書かれておるのじゃ。」
カネス「左様ですな。こればかりは、誰にも止められませぬ。」
さつみ「うまくいくように、祈りましょうぞ。」
そのころ「ホームズ」は・・・。
無事に、迎え入れてもらっていた。
ひな「もう! ダーリンったらぁ! 積極的で、肉食系なんだからぁ! 『ひな』歓迎!」
ホームズ「我・・・汝を・・・心から慕う。」
ひな「もう! ダーリンったらぁ! 『ひな』感激!」
そんなこんなで、一夜を共にした二人。
「ホームズ」は、ふと気になって「ひな」の寝顔を覗き見たところ・・・。
ホームズ「こ・・・これは・・・女にあらず・・・蛇なり。」
ひな「えっ? ダーリン?」
ホームズ「我・・・怖い。逃げる。」
全力で走りだす「ホームズ」。
それを「ひな」が追いかける。
ひな「待ってよ! ダーリン! 『ひな』すっごく傷ついたのよ!」
ホームズ「許せ・・・。我・・・逃げる。」
ひな「ちょっと! 待ちなさいよ!」
ホームズ「ふ・・・舟が! 我・・・舟に乗る!」
ひな「海に逃げたって無駄よ! 海面を照らして、追いかけちゃうんだから!」
ホームズ「し・・・しつこい・・・。」
ひな「さぁさぁ! 目の前まで来ちゃったわよ!」
ホームズ「こうなれば・・・舟を山に引き上げる・・・。」
ひな「あれ? 舟は? どこ行っちゃったのかしら?」
ホームズ「蛇・・・というより・・・海神の一族・・・であったか?」
ひな「ダーリン? どこぉ?」
ホームズ「我・・・このまま、国中に・・・帰る。」
こうして帰国してしまったのであった。
ここは、纏向珠城宮。
大連や大夫たちが居並ぶ中、垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(以下、イク)は、震えていた。
イク「ホ・・・ホームズ・・・。つ・・・ついに話せるようになって、すごく嬉しいんだけど、どうして帰ってきちゃったのかな?」
ホームズ「父上・・・。蛇が・・・怖くて・・・逃げてきました。」
イク「えっ? 蛇? ちょっと、何、言ってるのか分からないんだけど、なんだろう。感動的な再会になるはずが、すごくモヤモヤするんだよね。」
モヤモヤとは?
次回につづく
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