JW214 栄光を取り戻せ
【孝元天皇編】エピソード17 栄光を取り戻せ
第八代天皇、孝元天皇(こうげんてんのう)の御世。
時は流れ、紀元前176年、皇紀485年(孝元天皇39)となった。
そんなある日の出雲国(いずも・のくに)で・・・。
出雲君(いずも・のきみ)の世毛呂須(よけろす)(以下、ケロロ)のもとに、ある人物がやって来ていた。
中臣梨迹臣(なかとみ・の・なしとみ)(以下、トミー)である。
トミー「出雲君・・・。御尊顔(ごそんがん)を拝し奉(たてまつ)り、恐悦至極(きょうえつしごく)に存じ申し上げまする。」
ケロロ「遥々、ヤマトからの来訪、大儀である。して、如何(いかが)致した?」
トミー「今年創建された神社の紹介をするべく、罷(まか)り越しましたる次第。よろしゅう御願い申し上げますぅ。」
ケロロ「そげなことであったか・・・。」
トミー「それでは、早速、紹介に移らせていただきますぅ。」
ケロロ「うむ。どげな神社か、わしも気になるぞ。」
トミー「その神社にあらしゃいますが、その名も、豊田神社(とよだじんじゃ)にあらしゃいます。」
ケロロ「ほう・・・。して、鎮座地(ちんざち)は、どこになるんだ?」
トミー「島根県益田市(ますだし)の横田町(よこたちょう)になりますぅ。」
ケロロ「そげか・・・。そげなところに、なにゆえ、神を祀(まつ)ったんだ?」
トミー「その辺は、ロマンにあらしゃいますなぁ。」
ケロロ「ロ・・・ロマンか・・・。して、祭神は?」
トミー「天津大神多祁阿久豆魂命(あまつおおかみ・たけあくづたま・のみこと)にあらしゃいます。」
ケロロ「な・・・長い・・・。して、その長き名の神は、どげな神様なんだに?」
トミー「よう分かりませんが、高御産巣日神(たかみむすひのかみ)の御子にあらしゃいます。」
ケロロ「なっ!? そげに偉い神様なのか?」
トミー「そうみたいですなぁ。よう分かりませんけど・・・。」
ケロロ「そ・・・そげか・・・。解説、大儀であった。」
トミー「それでは、これにて帰らせていただきますぅ。」
こうして、トミーは、言うだけ言って、帰っていった。
ケロロの元に、息子たちが駆け寄ってきたのは、トミーを見送った直後のことであった。
息子たちの名は、下記の通り。
振根(ふるね)。
飯入根(いいいりね)。
甘美韓日狭(うましからひさ)(以下、カラピー)である。
振根「父上! ヤマトは、何と言ってきたんだに?!」
飯入根「怪しき頼み事でも?」
カラピー「大丈夫だったんですか?」
ケロロ「息子たちよ。心配するな。ただの解説であった・・・。」
振根「か・・・解説?」
ケロロ「そげだ。神社が創建されたゆえ、その解説に来ておったんだに。」
飯入根「そ・・・そげですか・・・。」
ケロロ「まあ、怪しんでおいて、悪いことはない。次は、何を言い出すか分からんからな。」
カラピー「そげですね。」
ケロロ「とにかく、これ以上、ヤマトに好き勝手させるわけにはいかないんだっちゃ!」
振根「父上! ヤマトの横暴を止める手立ては無いのですか!?」
ケロロ「今は、我慢するしかないに。力を蓄え、かつての栄光を取り戻すんだにっ!」
振根「必ずや、そう致しましょうぞ!」
カラピー「さ・・・されど、戦(いくさ)となったなら、太刀打ちできませぬぞ?」
ケロロ「それゆえ、力を蓄えると言ったんだに!」
飯入根「そげにうまく行くんでしょうか?」
ケロロ「何を言っちょるんだ! そげなことでどうする!」
振根「そげだっ! 何とかして、ヤマトを倒し、栄光を取り戻すんだに!」
カラピー「わ・・・分かりもうした。」
振根「父上! わしは、必ずや、ヤマトを倒す手立てを見つけてみせまするっ!」
ケロロ「よくぞ申した! それでこそ、我(わ)が息子よ!」
飯入根「兄上・・・。倒すのではなく、良き関わりを持つというのでは、ダメなのですか?」
振根「何を言っちょるんだ! 汝(いまし)には、出雲の誇りが無いのか!?」
ケロロ「飯入根よ・・・。汝(なれ)は、臆病風を吹かすところが有るに。そげなことでは、国を支えること能(あた)わぬぞ。」
振根「父上の申される通りだに。では、父上! ヤマトを抑えるため、まずは、丹波(たにわ)の豪族たちと手を携えるところから、始めるに。」
飯入根「丹波?」
振根「同じ北津海(きたつうみ:現在の日本海)に面する地だっちゃ。ヤマトの圧力を感じている豪族もいるはずだに。」
ケロロ「丹波も、少しずつではあるが、ヤマトに浸食されておるからな・・・。」
カラピー「たしか・・・エピソード169から171で、尾張氏(おわり・し)というか海部氏(あまべ・し)というか、ヤマトの息が掛かった勢力が、神社を創建しておりましたな。」
飯入根「京都府京丹後市(きょうたんごし)の久美浜町(くみはまちょう)に鎮座しているのであったな。三嶋田神社(みしまだじんじゃ)、矢田神社(やたじんじゃ)、丸田神社(まるたじんじゃ)の三つだに。」
ケロロ「そげだ。すなわち、ヤマトが久美浜湾(くみはまわん)を抑えちょるということだに。」
振根「そげです。それゆえ、わしらは加佐(かさ)などの地と手を携えるんだっちゃ!」
飯入根・カラピー「加佐?」
ケロロ「加佐の津(つ)を抑える豪族たちと手を結ぶのじゃな?」
振根「そげです。元々、交易を通じて、誼(よしみ)を結んでおるとは思いまするが、今以上に、対ヤマトで力を合わせるんだっちゃ!」
出雲が対決姿勢を見せる中、ヤマトでは、新たな局面を迎えようとしていた。
つづく
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