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JW219 狛兎に守られて
【開化天皇編】エピソード4 狛兎に守られて
第九代天皇、開化天皇(かいかてんのう)の御世。
紀元前156年、皇紀505年(開化天皇2)3月となった。
そんなある日、開化天皇こと、稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひ・のみこと)(以下、ピッピ)の元に、ある人物がやって来た。
尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)である。
妻の諸見己姫(もろみこひめ)(以下、ロミ子)も同伴している。
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ピッピ「如何(いかが)致したのじゃ?」
ケモロー「大王(おおきみ)! 今月創建された神社が有るでよ。その解説に来たがや。」
ピッピ「されど・・・なにゆえ、神社の解説に妻を同伴しておるのじゃ?」
ロミ子「気付いてくださって、嬉しゅうござりまするよ。子供を紹介したいのでござりまするよ!」
ピッピ「ケモロー? 汝(いまし)も代替わりするのか?」
ケモロー「代替わりではないがや。ほんでも、紹介しておきたかったんだがや!」
ピッピ「そ・・・そういうモノなのか?」
ケモロー「では、紹介するがや! 息子の倭得玉彦(やまとえたまひこ)だがや! 玉彦(たまひこ)と呼んでちょう(ください)!」
玉彦「我(われ)が玉彦だがや。よろしくお願い申し上げます。」
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ピッピ「う・・・うむ。では、今月創建されたという神社を解説致せっ!」
玉彦「分かったがや。今月創建された神社とは・・・。」
ケモロー「調神社(つきじんじゃ)だがや!」
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ピッピ「鎮座(ちんざ)せる地は何処(いずこ)ぞ?」
ロミ子「埼玉県さいたま市の浦和区岸町(うらわく・きしちょう)にござりまするよ。」
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玉彦「祭神は、天照大神(あまてらすおおみかみ)、豊受大神(とようけのおおかみ)、素戔嗚命(すさのお・のみこと)の三本だがや!」
ピッピ「豊受大神・・・籠神社(このじんじゃ)に祀(まつ)られておる神ではなかったか?」
ケモロー「その通りだがや。エピソード104で、籠神社の藤祭(ふじまつり)を解説した際に、名前だけ紹介されとる神様だで。」
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ピッピ「して、どのような神なのじゃ?」
玉彦「穀物をはじめとした、食物の女神とされとるでよ。二千年後は、伊勢神宮(いせじんぐう)の外宮(げくう)に祀られとるで。」
ピッピ「伊勢神宮? 初耳じゃな?」
ケモロー「た・・・玉彦! それは言うてかんてぇ(言ってはいけない)・・・。」
玉彦「あっ!」
ピッピ「なにゆえじゃ?」
ケモロー「異国(とつくに)の言の葉で、フライングになるでよ。」
ピッピ「き・・・聞かなかったことにすれば良いのじゃな?」
ロミ子「と・・・ところで、こちらの神社は、面白いモノがござりまするよ。」
ピッピ「面白いモノ?」
ロミ子「狛犬(こまいぬ)ではなく狛兎(こまうさぎ)が守っているのでござりまするよ。」
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ピッピ「ほう・・・。犬ではなく、兎とは・・・。また、なにゆえじゃ?」
ケモロー「神社の名が『つき』ということで、中世からは、月の信仰も始まったげな(始まったそうです)。ほんで、月といえば兎になったと。」
ピッピ「なるほどのう・・・。」
とにもかくにも、調神社が創建されたのであった。
それから数日後か、数か月後のこと・・・。
出雲君(いずも・のきみ)の世毛呂須(よけろす)(以下、ケロロ)の使者が、ヤマトを訪れていた。
使者は、飯入根(いいいりね)ということにしたい。
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飯入根「お初にお目にかかりまする。飯入根にござりまする。」
ピッピ「おお、飯入根殿。よう参られた。」
飯入根「着到(ちゃくとう)早々ではござりまするが、単刀直入に申し上げまする。此度(こたび)の一件、我が君は、たいへん御立腹なされておられまする。」
ピッピ「さもあらん・・・。されど、こればかりは致し方ない。我(われ)の勅命(ちょくめい)となっておるのじゃ・・・。」
ここで、大臣(おおおみ)の物部鬱色雄(もののべ・の・うつしこお)(以下、コー)が問いかける。
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コー「お二人とも、勝手に話を進め過ぎやがなっ! 読者が置いてけぼりになってますでぇ!」
ピッピ「ん? 言うてはおらなんだか?」
コー「しゃあないなぁ。ほな、わしから、解説致しましょか。今年の出来事なんやけどな、日御碕神社(ひのみさきじんじゃ)に宮を造営しろ・・・っちゅう命令が出てるんですわ。」
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飯入根「その通りにござる。二千年後は、島根県出雲市(いずもし)の大社町日御碕(たいしゃちょう・ひのみさき)に鎮座しておりもうす。」
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ピッピ「エピソード186、187にて、月支国(げっしこく)と戦(いくさ)をおこなった地じゃ。」
飯入根「神社そのものの解説は、エピソード94と95で成されておりまするな。」
コー「ほんで、此度の宮の造営は、どこが問題なんです?」
飯入根「宮の造営について異議はない。ただ、なにゆえ、ヤマト君(やまとのきみ)の命にて、造営をおこなわねばならぬのかと、出雲君は御立腹なのじゃ。」
コー「せやけど・・・。」
ピッピ「その辺は、まことに申し訳ないと思うておる。」
飯入根「そう言われましても・・・。如何(いか)に、我が君を納得させれば良いか・・・。」
コー「せやけど、なんで、宮を造営してはるんです? エピソード94と95で解説されてるんやから、もう創建されてる神社やないですか・・・。今さら、どうして造営を?」
ピッピ「うむ。『コー』の申す通り、神社は既に創建されておる。それゆえ、此度の造営とは、遷座(せんざ)についての伝承と思われる。」
コー「せ・・・遷座でっか?」
日御碕神社の遷座とは、一体、如何(いか)なることなのか・・・
次回につづく
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