JW456 遷座はつづく
【崇神経綸編】エピソード31 遷座はつづく
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
紀元前34年、皇紀627年(崇神天皇64)。
倭姫(やまとひめ)(以下、ワッコ)は、菟田(うだ)の笹幡(ささはた)に向かった。
天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)の新たな鎮座地(ちんざち)である、佐佐波多宮(ささはたのみや)を求める旅である。
同行するのは「ワッコ」の曾祖父、大彦(おおひこ)。
采女(うねめ)の香刀比売(かとひめ)(以下、カット)。
大称奈(おおねな)(以下、ねな)。
その弟、大荒(おおあら)(以下、アララ)である。
そして、三つの候補地が語られたのであったが・・・。
大彦「とにもかくにも、これで候補地の解説は終わりなんだな。」
ワッコ「ひいじいさま、申し訳ありませぬ。実は、もう一つだけ有りまして・・・。」
大彦「ん? どういうことなのかな? 三つではなかったのかな?」
ワッコ「実は、社(やしろ)としては残っていないのですが、もう一つ候補地がございまして・・・。」
アマ「そうなのじゃ。奈良県宇陀市(うだし)の室生大野(むろうおおの)とも言われておる。」
カット「その辺り・・・というだけで、社が建っているわけではないと?」
アマ「うむ。それゆえ、どうして候補地となっておるのか、わらわにも分からぬのじゃ。」
ねな「とにかく、これで佐佐波多宮の候補地紹介は終わりなのね。安心したわ。」
アマ「うむ。そういうわけで、わらわは、再び遷座(せんざ)しようと思うておる。すまぬな・・・。」
ワッコ・大彦・カット・ねな「ええぇぇ!!」×4
アマ「し・・・仕方なかろう。一年も経たずに、遷(うつ)ってしもうたのじゃ。ちなみに、宮の名は、隠市守宮(なばりいちもりのみや)じゃ。二千年後の三重県であるぞ!」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
大彦「隠(なばり)・・・ということは、二千年後の三重県名張市(なばりし)のことなのかな?」
アマ「よく知っておるのう。わらわたちの御世で言えば、伊賀国(いが・のくに)じゃな・・・。」
ワッコ「で・・・では、隠市守宮の候補地について、解説をおこないまする。候補地は、五つにござりまする。まず一つ目は、蛭子神社(えびすじんじゃ)にござりまする。」
ねな「蛭子って、事代主神(ことしろぬしのかみ)のことよ? おかしいんじゃないかしら?」
カット「一緒に『アマ』様も祀(まつ)られておる。それゆえ、おかしくはないぞ。」
大彦「ところで、何処(いずこ)に鎮座しているのかな?」
ワッコ「三重県名張市の鍛冶町(かじまち)にござりまする。」
カット「次は、宇流冨志禰神社(うるふしねじんじゃ)にござりまする。名張市の平尾(ひらお)に鎮座しておりまする。ただ、祭神は、宇奈根命(うなね・のみこと)になっておりまするが・・・。」
ねな「それって、おかしいんじゃない? 『アマ』様が祀られてないってことよね?」
ワッコ「ではあるが、姫大神(ひめおおかみ)という神が配祀(はいし)されておるので、それが『アマ』様ではないかと、作者は考えておるようじゃ。確証は無いが・・・。」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
大彦「ところで、宇奈根命とは、どんな神様なのかな? 聞いたことが無いんだな。」
カット「水と穀物の神と言われておりまする。宇奈根という名は、名張川(なばりがわ)の『うねり』の近くであることから『うねり』が転訛(てんか)したモノと言われておりまする。」
こうして、佐佐波多宮から、隠市守宮に遷ることとなった。
解説はつづく
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