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JW313 出雲来訪

【丹波平定編】エピソード20 出雲来訪


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

出雲(いずも)へ戦勝報告に向かう、彦坐王(ひこいます・のきみ)(以下、イマス)の一行。

同乗するのは「イマス」の息子にして、四道将軍(しどうしょうぐん)の丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)(以下、ミッチー)。

そして、黄沼前来日(きぬさき・の・くるひ)(以下、クール)である。

船路は順調に進み、一行は、出雲に到着したのであった。

系図(イマス、ミッチー)
地図(出雲へ)

イマス「ようやく辿(たど)り着いたぞ。」

ミッチー「ここが、出雲・・・。」

クール「こにゃぁな、たくさんの人を見たんは、初めてだわいや!」

するとそこに、出雲君(いずものきみ)の息子、飯入根(いいいりね)がやって来た。

飯入根「ようこそ、出雲へ! お待ちしておりましたぞ。」

イマス「おお! お初にお目にかかりまする。我(われ)が『イマス』にござる。」

飯入根「お話は、遠い出雲まで聞き及んでおりまする。大変な御活躍だったとか?」

イマス「お恥ずかしい限りにござりまする。」

飯入根「そのような御謙遜(ごけんそん)を・・・。さあ、立ち話もなんです。早速、出雲君の元まで案内(あない)致しましょう。」

こうして「イマス」たちは、出雲君に拝謁(はいえつ)することとなった。

出雲君の世毛呂須(よけろす)(以下、ケロロ)が、渋い顔で応対する。

系図(出雲氏)

ケロロ「遥々の来訪、た・・・大儀(たいぎ)である・・・プッ。」

イマス「ん? 如何(いかが)なされましたか?」

ケロロ「す・・・すまん。汝(いまし)らの乗った舟を思い出して・・・しまった・・・クッ。」

ミッチー「え? 港に着けた舟を御覧になられましたのか?」

ケロロ「う・・・うむ。あの・・・大きな鮑(あわび)が・・・。もう耐えられんっ。笑ってしまいそうだにっ・・・ククッ。」

大きな鮑

クール「と言うか、もう笑っとるわいや。」

ケロロ「や・・・夜麻登人(やまとびと)は、舟に、あげな飾りを付ける・・・のか?」

イマス「いえ、あれは舟に穴が開きもうして・・・。」

ケロロ「しゅ・・・修繕(しゅうぜん)にアワビを?」

ミッチー「神の力によりて、アワビが勝手に張り付いた次第にござりまする。」

ケロロ「な・・・なんと! わしを笑わすためではなく、神の力に寄るものであったか・・・。」

イマス「出雲君様のお気持ちも、よう分かりまする。面妖(めんよう)を通り越して、滑稽(こっけい)な恰好(かっこう)となっておりますゆえ・・・。されど、あれで、なかなか頑丈にござりまする。」

ケロロ「そげか・・・。して、此度(こたび)は戦勝を報せに参ったとか?」

イマス「左様にござりまする。此度の勝ち戦(いくさ)は、出雲の神々の助太刀あればこそ・・・。さすれば、神々を謝(しゃ)し奉(たてまつ)らばやと思い立ち、遥々、罷(まか)り越しましたる次第・・・。」

ケロロ「殊勝(しゅしょう)な心掛けぞ。神々も、汝(いまし)らの来訪を、お喜びであろう。アワビもまた、神々の想いの現れなのであろうな。」

イマス「かたじけなき言の葉・・・痛み入りまする。つきましては、出雲大社(いづもおおやしろ)と美保神社(みほじんじゃ)への参拝、お許しいただきとう御願い申し上げ奉りまする。」

ケロロ「げにも、げにも・・・。どうして憚(はばか)ることや有らん。存分に、謝し奉られよ。」

イマス・ミッチー・クール「ははぁぁ。」×3

こうして、一行は、神社を参拝する運びとなった。

先導(せんどう)は、飯入根である。

飯入根「さて、まずは、出雲大社にござりまするぞ。御祭神は、言うまでもありませぬが・・・。」

ミッチー「大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)にござりまするな?」

飯入根「左様! よく、出雲大社(いずもたいしゃ)と呼ばれまするが、正しい読みは『いづもおおやしろ』にござりまする。覚えておいてくだされ。」

クール「島根県出雲市(いずもし)の大社町杵築東(たいしゃちょう・きずきひがし)に鎮座(ちんざ)しとるんだっちゃ。」

地図(出雲大社)

飯入根「よく御存知ですな。」

クール「あらかじめ学んできたんだわいや。」

イマス「されど、大きな社(やしろ)にござりまするな。大社(おおやしろ)と呼ばれるわけが、分かりもうした。」

飯入根「はい・・・。大国主大神が、国を譲られた際、大きな社を建ててほしいと申された由(よし)・・・。その想いが、形となっているのでござる。」

古代の出雲大社(想像図)
古代の出雲大社の回廊(想像図)

イマス「では、出雲大社への参拝も済(す)みもうしたし、次は、美保神社にござりまするな?」

飯入根「左様。されど、少し旅をすることになりまする。」

ミッチー「旅? それは如何(いか)なる意で?」

飯入根「美保神社は、ここから宍道湖(しんじこ)を渡り、中海(なかうみ)を経たところに鎮座しているのでござる。」

地図(美保神社へ)

クール「出雲を横断することになるんかいや?」

飯入根「その通りにござる。」

こうして、一行は、アワビ付きの舟で、美保神社へと向かった。

ミッチー「来た道を戻る形になるのか・・・。」

飯入根「申し訳ありませぬ。我が君は、筋目(すじめ)に厳しい御方にござりまして・・・。」

イマス「御懸念(ごけねん)御無用に願いまする。出雲君の申されること、至極尤(しごく・もっと)もなこと・・・。」

飯入根「そう言っていただき、かたじけのうござる。」

クール「それにしても、宍道湖っちゅうのは、大きな湖だわいや。」

飯入根「太古の昔は、海とつながっていたのですぞ。されど、だんだんと砂が陸(おか)となり、海を塞(ふさ)いでしまいましてな・・・。ついには、湖となりもうした。」

ミッチー「す・・・砂が溜(た)まっていったと?」

飯入根「左様。それゆえ、大きな港が失われたのでござる。」

出雲の旅はつづく。

次回は、美保神社を紹介したい。

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