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JW554 忌楯小野

【伊勢遷宮編】エピソード13 忌楯小野


第十一代天皇、垂仁天皇すいにんてんのう御世みよ

紀元前4年、皇紀こうき657年(垂仁天皇26)。

天照大神あまてらすおおみかみ(以下、アマ)の鎮座地ちんざちを求め、一行は、旅を進めていた。

人物一覧表(倭姫の一行)
人物一覧表(五人の大夫)

そして、大若子おおわくごこと『ワクワクさん』と合流したのであったが・・・。

地図(合流地点:川原神社)

ワクワク「大夫たいふ十千根とおちねこと『ちね』様に・・・。」 

ちね「ん? わてか? なんや?」 

ワクワク「大王おおきみが、国中くんなか(現在の奈良盆地)に戻って来いって!」 

ちね「はぁ? なんでや? そないなこと『倭姫命世記やまとひめのみこと・せいき』には書かれてへんで?!」 

ワクワク「いわゆる、作者の陰謀いんぼうってヤツだね。」 

ワッコ「ちちう・・・大王おおきみが、そうもうされているのなら、いたかたありませぬな。」 

ちね「ほんなら、国中くんなかに戻りますわ。」 

ワクワク「それから、大夫の武日たけひ様も・・・。」 

武日たけひ「えっ? 『おい』も!? なして(なぜ)?」 

ワクワク「なぜって言われても、僕には答えられないんだよね。とにかく、国中くんなかに戻ってね!」 

武日たけひ「そんげなコツ、言われても・・・。」 

ワッコ「とにかく、私たちが向かうべき地は、何処いずこなのじゃ?」 

ワクワク「佐古久志呂さこくしろ宇遅うぢ五十鈴川いすずがわ川上かわかみに、宮処みやどころが有ったよ!」 

ワッコ「ん? 佐古久志呂さこくしろとは、なんじゃ?」 

ワクワク「どういう意味って言われても・・・。宇遅うぢにかかる枕詞まくらことばだよ。裂釧さこくしろとも書くよ。それ以上の説明は無理だね。」 

くにお「では、拙者せっしゃが、わって解説かいせついたそうぞ。くしろという、装身具そうしんぐのことだと言われておる。」 

カーケ「腕輪うでわのことなんだぜ。」 

市主いちぬしくちれたすずを取り付けたモノが『裂釧さくしろ』と言われておりまするな。」 

ワッコ「口の割れた鈴? し・・・して、五十鈴川いすずがわが、その装身具そうしんぐておると?」 

ねな「わかりやすく言えば、ロマンってことね。」 

アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」 

ワッコ「と・・・ところで、そのくにの名はなんぞ?」 

ワクワク「御船みふね向田むくたくにだよ。」 

ワッコ「左様さようか・・・。では『ちね』様、武日たけひ様。私たちは、五十鈴川いすずがわ川上かわかみ目指めざしまする。お二人ふたりも、ことが終わったら、そちらまで・・・。」 

ちね「かったで。さっさとませて、向かわせてもらいますわ。」 

武日たけひ「『おい』もやじ。てげてげ(適当)にませて、戻ってくるっちゃが。」 

ワッコ「御願おねがいたしまする。」 

こうして「ちね」と武日たけひは、国中くんなかに向かっていった。

さて、残った一行は・・・。 

ワッコ「大夫たいふのうち、二人もけてしまうとは・・・。」 

おしん「そんで・・・。おらたちは、このまま向かうんけ?」 

ワッコ「うむ。その前に、雑々くさぐさ神財かむたからや、忌楯いむたて忌桙いむほこいていこうぞ。」 

乙若おとわか「なるほど・・・。動きがおそくなりますからなぁ。」 

ワッコ「そういうことじゃ。」 

オーカ「ちなみに、神財かむたから神宝しんぽうのことにあらしゃいます。忌楯いむたて忌桙いむほこは、旅の安全をいのるために使う道具にあらしゃいます。」 

カット「されど、このようながたきモノを置いていって、よろしいのですか?」 

ワッコ「私たちの進むべき地はさだまった。もう良いであろう。」 

おしん「こうして、忌楯いむたてなどをとどいたところが、忌楯いむたて小野おのと呼ばれるようになったんだ。」 

くにお「二千年後の地名で言うと、何処いずこになるのじゃ?」 

おしん「それが、よくかんねぇんだ。」 

ねな「馬鹿ばかね。前回紹介した、川原かわら神社じんじゃに決まってるでしょ。」 

地図(川原神社:三重県伊勢市佐八町)

おしん「えっ? ほんでもよぉ、川原かわら神社じんじゃは、沢道さわみち小野おのって言ってなかったか?」 

ねな「沢道さわみち小野おのでも有り、忌楯いむたて小野おのでも有るってことじゃないかしら。物語ものがたりながてきに、そうだと思うんだけど・・・。」 

アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」 

とにもかくにも、作者の陰謀で、二手ふたてかれることになったのであった。 

つづく

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