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きくちよKG
2023年5月30日 23:39
「文学は懐が深い。テーマにならないものはない」 作家の小川洋子さんはそう言い切る。それでも自身、苦手な分野があるといいます。 それが「性・官能」をモチーフとする分野。 なるほど、上品なイメージがある彼女の作品。でもそれとは裏腹に、弟の肉体を密かに慕う姉だったり、妊娠した姉に殺意を抱く妹だったりと、書くテーマは禁断領域に軽々と踏み込んでいます。 透明感をまとった穏やかな言葉遣いに身を任せ
2023年12月3日 23:56
存在理由が欲しい人間 人はどうしたってそこに「理由」がないとどうにも居心地が悪い。 理由って因果や目的、つまりストーリーといってもいい。 でも、悲しいことに、神さまって、たぶん、宇宙の創造物たるものすべてに、なんの存在理由=ストーリーも与えていないのかもと思う。 自分も宇宙も、ただ「在る」だけ。 意味などない。 しかしこれって、考えるほどになんだか怖くなってくる。
2023年12月10日 16:43
人々の最後列で丹念に落とし物を拾っていく いつだったか作家の高橋源一郎さんが講演で、「文学は逃避だ」と、苦笑しつつあきらめ顔で叫んでいたのを聞いて、ぼくは哀しい気持ちが湧き起こりながらも、同時に「やっぱりな」という思いも抑えることができませんでした。 もちろん、高橋さんはそこに積極的な意義を込めてはいるわけです。 作家の小川洋子さんも、文学というのはかつて生きた人々の最後列にいて落としも
2023年8月14日 12:01
■「もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら」工藤美代子/角川文庫 工藤美代子さんは、吉田茂、笹川良一、昔のラフカディオ・ハーンなどを独特の視点で取り上げてきたノンフィクション作家。 この方の書く文章ってほんと、ほれぼれして憧れてしまう。 ストレートでリズミカル。 あがいた後をみじんも見せない意気のよさ。 読者に甘えるかのような行間のない整った調べは、数式のもつ美しさにも通じ
2023年7月26日 07:15
こちらの都合や欲望におかまいなしに、そこに「冷たく」ありながら、しかしこちらをじっと見つめている。 この得体の知れないもの。 それが「自然」という存在。 対して「人間」はたかが得体が知れています。 相手は、敵なのか味方なのか。 人は互いの得体についての関心は、どうしたってそこにしかないのですからね。■「家守綺譚」(いえもりきたん) 梨木香歩/新潮文庫 『家守綺譚』は、自
2023年7月19日 19:39
もうこの世にない人がいいのですなぜなら誰をも裏切らないから誰のものでもないから決して手にすることはないからずっと美しいままだからうつつのものでなければ手に入れようともがくこともないし成就のむなしさを予感することもないし裏切って苦しめることもないし知りたくないことを知って憎むこともありません『眠れる美女』 川端康成/新潮文庫うつつの切り裂き魔・カワバタが見せる地獄の所