きくちよKG

編集ライター。コピー/コラム/インタビュー/取材/文芸評etc。自分にしか書けないこと…

きくちよKG

編集ライター。コピー/コラム/インタビュー/取材/文芸評etc。自分にしか書けないことを誰にもわかるように書く。ポップなPR調から、アイテムを生活ストーリーで語るコラム風、公式広報文体まで。分子栄養学。ソバキュリ。ちょいモード系。Xの何だかオラオラ路線はチキン❤️隠しの為。

マガジン

  • 【小説】こんなん書いてみました

    何気ない日常の裂け目を思い切り広げてみます。思い切り度と完成度に相関関係はありません…。

  • 【映画評】こんなん観ましたけど

  • 【書評】こんなんいかが?

    忘れた頃になんども読み返す愛すべき紙の束。カバーについた手指の脂、紙の匂いと手触り。それはともに過ごした時間の記憶。本はもはや生きもの。

  • 【エッセイ】こんなん思ったりも

    自分の中で上っては消えるよくわからないものって誰にもありますよね。取り出せば否応でもその姿形があらわになる。それが自分自身の足場になるやもです。

  • 【仕事】こんなんしてます

    喜ばれて喜ぶ、おめでたいヤツ。でもお仕事がそうなればこんなに幸せなことはありません。

最近の記事

  • 固定された記事

小川洋子の創作法「ストーリーより描写」。ストーリーは人間の欲望。描写は神の認識への道だから。世界のヨーコはどこまでも謙虚なのだ。

「私、ストーリーは重視しません」   世界のハルキとヨーコ。 村上春樹さんと小川洋子さん。三島や川端以来、現代の日本文学で今「世界の」と冠することのできるのはこの二人だけ。  その小川洋子さん。  小説を書く作業の上で最も重視しないのは「ストーリー」だといいます。     念のため繰り返すと、「ストーリーは重視しない」。   小説って物語のことなのに?  さすが世界のヨーコ。言うことが常人と違う、と思いながら、じゃ、何を大切にしているかと、彼女の発言を少し追って

    • 愛すべき懲りない神々を静かに描く。ルシア・ベルリンの優しくも気高い魂。

      隣にいてただ一緒に眺めてくれればいいい  「アメリカ文学の静かな巨人」リディア・デイヴィスが絶賛して知られるようになったのが、いわば市井の書き手のまま没した同じく短編作家のルシア・ベルリン。  その作品群。 暗黒の底にいながら、到底届いていないはずの光の束をひとり静かに見つめている。 彼女のそんな凛とした姿が浮かんでくるようです。    母の自死、三度の離婚、四人の子どものシングルマザーワーカー。親兄弟揃ってアルコール依存、それはベルリン自身までも。  そん

      • 無垢を武器に、閉じた世界を開く。ナイーブだが真っすぐなロッカー、デビッド・ボウイ。

        「他人のために働こうとするあまり、自分の中で始まっていたはずのものを忘れたら、君はかえって社会と共存できない」(デビッド・ボウイ)  生放送中も構わず、黒人アーティスト差別に正面切って怒り、「朝目が覚めたとき、そこが京都の禅寺だったら」と思いつめるほど京都を愛する。  そんなすこぶるナイーブで真っすぐなロッカー、デビッド・ボウイ。  若いアーチストに向けたボウイのこの短いインタビュー(0:56)。  その語り口はあたたかいが、他人に媚びず自分の鮮度を保つのだ、と自分に言

        • 小説・掌編 『妄想図書館の女』

           年末の図書館は平日でも混み合っていて、ブスブスとなにやら口から異音を立てて通りすぎるリュックの若い男や、歩くラインとスピードが定まらなくって、つまりあるのかないのかわからない妙なリズムに気づいた周囲に一呼吸分だけ間合いの距離を要請する御老公様とか、検索票のプリントアウトを盛大な音を立ててやたらと連発しまくっている小学高学年女子乱射犯とか、何の意味があるのか本日返却本コーナーで次々と手を伸ばしては抱え込んでいく真っ赤なダウンジャケットの御仁とか、レンアイなんて飽きたわやっぱり

        • 固定された記事

        小川洋子の創作法「ストーリーより描写」。ストーリーは人間の欲望。描写は神の認識への道だから。世界のヨーコはどこまでも謙虚なのだ。

        マガジン

        • 【小説】こんなん書いてみました
          1本
        • 【映画評】こんなん観ましたけど
          6本
        • 【書評】こんなんいかが?
          24本
        • 【エッセイ】こんなん思ったりも
          15本
        • 【仕事】こんなんしてます
          5本

        記事

          自然を描くということは、自然の在り様から物語を見つけ出すということ。

          「自然を描くということは、自然の在り様から物語を見つけ出すということ」  そう語る水彩風景画家・木沢平通さん。  展示会最終日、図らずも1時間ものインタビュー対話になるきっかけとなった言葉がこれだった。    自然や宇宙ってヤツは、人間の感情などつゆとも関知しない、恐ろしいほどに無目的な存在。  何もかもの一切が、理由や目的なしに存在している。  宇宙のチリ一つから、我が身に至るまで。    けれど、厳然としてヤツらと自分はここにいて、とかく目障りであったり、なぜか感動した

          自然を描くということは、自然の在り様から物語を見つけ出すということ。

          ブンガクって逃避? それを聞き捨てならない人、それが当たり前の人。

          人々の最後列で丹念に落とし物を拾っていく  いつだったか作家の高橋源一郎さんが講演で、「文学は逃避だ」と、苦笑しつつあきらめ顔で叫んでいたのを聞いて、ぼくは哀しい気持ちが湧き起こりながらも、同時に「やっぱりな」という思いも抑えることができませんでした。  もちろん、高橋さんはそこに積極的な意義を込めてはいるわけです。  作家の小川洋子さんも、文学というのはかつて生きた人々の最後列にいて落としものを拾っていくような、そんな影の存在でしかないといいます。  でも、本人も気づか

          ブンガクって逃避? それを聞き捨てならない人、それが当たり前の人。

          ピュアな出来損ない。偉大なるネーミング「ゆるキャラ」に宿る体温の正体。

          ダサくうっとおしい。でも捨ておけない。  物産展などで、所在投げに突っ立っている。  遠慮がちに手など振ったりしている。  小さな子どもが時おり興味を示す以外、遠くからチラと見るぐらいで、近づく人はいない。    なんかへんなものがいたな。  その程度の印象で、みな忘れてしまう。  それが地方の町おこしのために作られていた、かつての着ぐるみキャラクター。    いや、地方のお役所さんたちのやろうとしている気持ちはすっごくわかるのです。  ただ、田舎の母親が送ってきたダンボ

          ピュアな出来損ない。偉大なるネーミング「ゆるキャラ」に宿る体温の正体。

          「知る」はサミシイ。「驚く」はいつもワクワク。だから「不思議をただ驚いていたいんだ」 国木田独歩。

          存在理由が欲しい人間  人はどうしたってそこに「理由」がないとどうにも居心地が悪い。 理由って因果や目的、つまりストーリーといってもいい。 でも、悲しいことに、神さまって、たぶん、宇宙の創造物たるものすべてに、なんの存在理由=ストーリーも与えていないのかもと思う。 自分も宇宙も、ただ「在る」だけ。  意味などない。  しかしこれって、考えるほどになんだか怖くなってくる。  この恐怖に耐えきれないから、人間は絶えずストーリーを編もうとするのかな。  

          「知る」はサミシイ。「驚く」はいつもワクワク。だから「不思議をただ驚いていたいんだ」 国木田独歩。

          書くドーパミン、会うドーパミン。源泉は同じ。

           昨日は待ちに待ってた神戸#ライター交流会。  講師のひとり、西宮在住編集者・藤本智士さん。  「友達少ないねん、ぼく」って連発しながらも、  「現場が好き。意図せぬことが起こるのが現場だけど、それが求めてたことだったりするからドーパミンドバドバ!」  これってほんと御意御意!  ぼくも同じようなことをnoteプロフィールに書いたばかり。  脚本を練りに練り、撮影現場を完璧に作り上げることで知られた黒澤明監督も、実はそう言ってた。  参加したライターさんたちとの名

          書くドーパミン、会うドーパミン。源泉は同じ。

          ポップなPR調から、アイテムを生活ストーリーで語るシックなコラム風、公式広報文体まで。

          フリーの編集ライター きくちよK Gです。 ん? 「ライター」とだけ名乗らず、「編集ライター」だと? 書くだけじゃないってこと? 「編集」とは、書かれる前のアイデアをつくることや、つきまとう「人とのやりとり」のこと、つまりプロデュースやディレクションの仕事のことをいいます。 そうなんです。 ぼく、執筆だけでなく、企画から人の管理までも請け負うからなんです。 もちろん、カチコチ書くってことにドーパミンがドバドバ出るタチなので、  「こんなん書いてよ」  「へい、まいどー

          ポップなPR調から、アイテムを生活ストーリーで語るシックなコラム風、公式広報文体まで。

          ちゃぶ台返しの、その後は。

           ある日の夕飯時のこと。 いつもより大きなため息を伴った母の足音がお勉強終了の合図。  ぼくはちゃぶ台上に広げていた算数の宿題をバタバタと片付けて、代わりに平皿をさっと胸の前に引き寄せます。 そこにすかさず、母の手になる焼きあがったばかりのお好み焼きがフライパンから手荒く放り込まれました。  一瞬跳ねあがった皿からお好み焼きが飛び出しそうになったけれど、だいじょうぶ。皿にすっぽり収まるように、皿を持ち上げ、ゆさゆさ。これでよしと。  台所に戻る母の背中に向

          ちゃぶ台返しの、その後は。

          google検索1位になった僕のnote投稿記事は❤️スキが最も少ない記事だったという異変。

           誰の何の役に立とうとかいうつもりはこれっぽっちもない、文字通り note な僕の note 投稿。なが〜い独り言=ツイートみたいなもの。    しかしそんなものに、誰ともしれぬ方からいただく突然の「❤️スキ」リアクションやコメントというのは、書かれたそのものへのプレゼント。だからうれしさはトテツもありません。  全40記事のなかでPV数と❤️スキ数トップを続けてきたのが「小川洋子さん・ストーリーより描写」。  コメントもたくさんいただいて、これがnoteを続ける原動力に

          google検索1位になった僕のnote投稿記事は❤️スキが最も少ない記事だったという異変。

          川上未映子 「私は、ゴッホにゆうたりたい」をネイティブで朗ぜる幸せ。

             …これをネイティブで朗ぜることの幸せ。 川上未映子にめっちゃゆうたりたい。 川上未映子『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』 /私はゴッホにゆうたりたい (講談社文庫)

          川上未映子 「私は、ゴッホにゆうたりたい」をネイティブで朗ぜる幸せ。

          「Shall we ダンス?」 名もなきダッセーたちがカッケーたちになるとき。

          「Shall we ダンス?」周防正行監督 (1995年) 役所広司、草刈民代、原日出子、竹中直人、渡辺えり子  周防正行監督が一貫してこだわるものが「ダサい」もの。  そこで当時彼が嗅ぎつけたのが「社交ダンス」。  でも、ただ逆張りしてダサいものをとりあげたんじゃないんです。  もちろん誰もテーマにしたことがないものなのだけれど、周防監督にとっては、映画監督としてのノーマルな嗅覚が大いに刺激されたのが社交ダンスだったんですね。  映画って、「物語」と「絵」と「音楽」

          「Shall we ダンス?」 名もなきダッセーたちがカッケーたちになるとき。

          山田太一「シルバーシート」 世のスネ夫・スネ子へ。老兵たちの果てのないスネっぷりを見よ。

          ◆土曜ドラマ 山田太一シリーズ・男たちの旅路 第3部「シルバーシート」(1977年 芸術祭TVドラマ部門大賞)  養老院で暮らす老人4人が、車庫に停まっている無人の路面電車を占拠します。  何を要求するでもなくただ閉じこもるだけ。  説得を続ける警備主任の鶴田浩二。やがて彼らは少しずつ本音をもらし始める。  さすがの鶴田もさじを投げかける…。  笠智衆、藤原釜足、加藤嘉、殿山泰司という名だたる老兵たちのスネっぷりが味わい深い。  とにかくもスネ夫・スネ子の果てのないボ

          山田太一「シルバーシート」 世のスネ夫・スネ子へ。老兵たちの果てのないスネっぷりを見よ。

          異世界に行きつ戻りつして織り上げる。怪談ノンフィクション・ファンタジー。

          ■「もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら」工藤美代子/角川文庫  工藤美代子さんは、吉田茂、笹川良一、昔のラフカディオ・ハーンなどを独特の視点で取り上げてきたノンフィクション作家。  この方の書く文章ってほんと、ほれぼれして憧れてしまう。  ストレートでリズミカル。  あがいた後をみじんも見せない意気のよさ。  読者に甘えるかのような行間のない整った調べは、数式のもつ美しさにも通じる。  安心して身を任せて意中の旅ができる、最高に整備された心地のよい乗り物のよ

          異世界に行きつ戻りつして織り上げる。怪談ノンフィクション・ファンタジー。