小説・掌編 『妄想図書館の女』
年末の図書館は平日でも混み合っていて、ブスブスとなにやら口から異音を立てて通りすぎるリュックの若い男や、歩くラインとスピードが定まらなくって、つまりあるのかないのかわからない妙なリズムに気づいた周囲に一呼吸分だけ間合いの距離を要請する御老公様とか、検索票のプリントアウトを盛大な音を立ててやたらと連発しまくっている小学高学年女子乱射犯とか、何の意味があるのか本日返却本コーナーで次々と手を伸ばしては抱え込んでいく真っ赤なダウンジャケットの御仁とか、レンアイなんて飽きたわやっぱり